肝臓がん破裂というすさまじい死因で、俳優の緒形拳死去。享年71。
亡くなられたのが、5日でした。
以来、ネット上でも、「緒形拳」というキーワード検索は、依然収拾する気配なし。
テレビでも、今後の「追悼番組」は、目白押しでしょう。
やはり、緒形拳といえば名優中の名優。
日本映画を代表する作品のあちらこちらに顔を出し、その存在感あふれる演技を披露し続けてきた人です。
彼のバイオグラフィを見ても、印象に残っている作品の実に多いことよ。
「善人」を演じても、「悪人」を演じても、とにかく、圧倒的なリアリティを醸し出せた俳優ですね。
一映画ファンとしては、彼の逝去に際して、なにかしら、彼の作品を見てからコメントを書こうと思いまして選んだ作品は、1978年の「鬼畜」。
監督は、野村芳太郎。原作は、もちろん松本清張。
親と子の切ってもきれない絆を描いた社会派ドラマです。
父を思い続ける息子と、生活苦から正気を失ってゆく弱い父親。
映画のあらすじをここで、申し上げるのは野暮ですので避けますが、ラストの緒形拳の演技は見ているものの胸をえぐる迫力がありました。
野村監督としても、緒形の演技には、絶対的な信頼をおいていたでしょう。
ですから、この作品の成功の鍵を握っていたのは、実は子役の演技だったと思っています。
特に、ラストの警察のシーンで、この父親を必死にかばおうとする9歳の長男。
かなり難しい役なので、あまり厳しい評価をするのも可哀想かもいれませんが、この子役の坊や、覚えたセリフをなんとかいっているという一生懸命さは伝わるのですが、子役の演技として一番重要な「自然さ」がいまいち。
それでも、婦警を演じる大竹しのぶの演技にも助けられて、ラストでは「どうしようもない父親」を守ろうとするけなげな少年をなんとか演じきって、緒形拳の演技にバトンをつなぎます。
さあ、この子役の演技をうけての緒形拳。
「よっしゃ、後は任しとけ」とばかりのラストの感動の演技。
息子の前に土下座をして、泣き崩れる彼の鼻下には、キラリと光る鼻水。
(と思ってよくよくチェックすると、汗のような・・)
かくして、「鬼畜」は、「砂の器」(こちらも緒形拳出演)と並び称される、松本清張映画の代表作となりました。
この名優の逝去に、心からご冥福をお祈りいたします。
合掌。
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