1957年という時代を考えると、なんとも恐ろしくハイテンポで、モダンな感覚に溢れた犯罪コメディが、市川崑監督の「穴」
脚本は、奥様の和田夏十さんとの共同執筆。
自作自演の失踪事件を企てる女性ルポライターの珍騒動が映画の本筋。
しかしながら、現東京都知事の、石原慎太郎氏に、シャンソンを歌わせたり、おばあちゃん女優として有名な北林谷栄に、実年齢のキャリアガールを演じさせたりと、「余興」もたっぷり。
軽妙かつスピーディーなセリフと、意表をついた省略によって、複雑な展開が、実にテンポよくすすんでいきます。
犯罪をモチーフにしながらも、どこかとぼけた味わいが秀逸。
市川演出の冴えといっていいでしょう。
そして、無責任で得体の知れない「大衆」へのさりげない風刺もチクリ。
少しおっちょこちょいでありますが、聡明で行動的なヒロインを演じたのが京マチ子。
彼女のコスプレ全開の、七変化ぶりがとても魅力的ですね。
このときの彼女は、押しも押されぬ大映の看板女優。
グラマラスの美女もそれなり。
機知にとんだルポライターも、それなり。
そして、なんとまあ垢抜けない不細工な田舎娘が出てるなあと思ったら、それも京マチ子。
芳紀漂う美女から、ブスまでを演じられたら女優としては一流でしょう。
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