ピーター・オトウール主演の「ラ・マンチャの男」をDVDで鑑賞しました。
ご存知、セルバンテスの『ドン・キホーテ』をもとにした大ヒット・ミュージカル劇の映画化。
メガホンを取ったのが『ある愛の詩』のアーサー・ヒラー監督。
「懐かしい」映画を、久しぶりに再見と思って、見ていたのですが、見ているうちに気がつきました。
「あれ、この映画見てないぞ」
この映画の有名すぎる主題歌「見果てぬ夢」(THE IMPOSSIBLE DREAM)や、当時日比谷の映画館で配っていた、この映画のチラシは、ハッキリ覚えているんですね。
ソフィア・ローレンのドルネシア姫も、ところどころのカットは、記憶に引っかかるんですが、映画全体としては、やはり見ていない。
「あれ?」と思ってしまいました。
この映画の公開は昭和47年。
当時僕は、中学生。
まだ、「ぴあ」なんて情報誌もなかった頃、上映映画の情報は雑誌「ロードショー」や「スクリーン」の巻末にしかなかったんですね。
僕が、当時定期購読していたのは「ロードショー」。
なけなしの小遣いは、惜しまずに映画鑑賞に使っていた時代です。
この年の暮れ、「ラマンチャの男」は、有楽町の有楽座で上映していました。
「見果てぬ夢」に痛く感動していた僕は、まちがいなく赤ペンでこの映画にチェックを入れ、京浜東北線に乗り込んでいたはずなんですね。
そして、「ラ・マンチャの男」を上映中の有楽座の光景まで、うすらぼんやりと覚えているんです。
しかし、ここまで覚えていても、やはりこの映画はみていない。
これは再見してみるとハッキリわかります。
そこで、ネット検索。
当時、有楽町で上映していた映画を調べていて、思い当たりました。
この映画を公開していた頃、すぐハス向いの「みゆき座」で上映していたのが、フランソワ・トリュフォー監督の「恋のエチュード」。
この映画の中のワンシーンで、ジャン=ピエール・レオが、キカ・マーカムの胸元に手を入れるシーンのスチールがあるのですが、これでピーンときました。
色気盛りの中学生だった僕は、どんなにふくよかなバストのソフィア・ローレンが出演している映画だとしとても、際どいシーンがあるとはちょっと考えにくいミュージカル映画よりも、多少苦手な監督の映画でも、色っぽい露出シーンはそれなりに期待できるフランス映画に、あの日比谷の街角で切り替えたんですね。
見に行くつもりで出かけた記憶はあるが、実際に映画は見ていない。
原因は、「恋のエチュード」で、まず間違いありません。
「ラ・マンチャの男」は、セルバンテスとドン・キホーテの二役を熱演するP・オトールの演技が見所。
セルバンテスと牢獄の囚人たちの現実、彼らが演じる劇中劇における田舎郷士アロンソ・キハーナの「現実」、そしてキハーナの「妄想」としてのドン・キホーテという多重構造となっていて、文字にするとやや難解ですが、そこはミュージカル映画。
こむずかしいところは、名曲の数々や感動の大合唱でまるめこんでしまっています。
この年になって改めてみてみると、僕の中では、「恋のエチュード」よりも、「ラ・マンチャの男」に軍配が上がりますね。
理由はひとつ。
「恋のエチュード」の例の胸元に伸びた手の後の展開が、期待通りではなかったこと。
つまらないことで「浮気」をしてしまって、鑑賞するのが36年も遅れてしまいまして、この映画には失礼なことをいたしました。
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