SF映画的演出の大嫌いなトリュフォーらしい、SF映画ですね。
原作は、レイ・ブラッドベリのSF小説。
ナチスが「非ドイツ的」書物を次々と焼却した「焚書儀式」あたりがネタモトになっているようです。
確かに、映画の中の「ファイアーマン」のコスチュームはナチスの兵服を意識しているかんじ。
トリュフォー監督流の、思想弾圧や全体主義に対する痛烈な批判メッセージといっていいでしょう。
「読書」好きなトリュフォー監督らしい「本」への愛情に満ちた作品です。
筋金入りのヒッチコキアンであるフランソワ・トリュフォー監督は、この映画の音楽に「めまい」のバーナード・ハーマンを起用。
ジュリー・クリスティーの一人二役も、たぶんに「めまい」へのオマージュをかんじますね。
そういえば、ズームアウトしながらカメラを前方へ動かすことで、被写体のサイズを変えずに広角にするという、あの有名な「めまいショット」も効果的に使われていました。
トリュフォーは徹底的に文字の無い世界の「恐怖」と「異常さ」を描きたかったのでしょう。
映画冒頭のタイトル文字はすべて省略。そのかわり、ナレーションでそれを処理するというアイデアは秀逸。
この映画のテーマと、異様な雰囲気を、これで伝えてしまいました。
彼の作品としては、はじめての英語作品。
英語の出来ないトリュフォー監督としては、かなりの苦労があったようですが、そのあたりは、彼の名著『ある映画の物語』に詳しく書いてあります。
ところで、映画の中で、学校に訪れた主人公が、廊下で会う小学生の二人目。
あれはたぶん、「小さな恋のメロディ」の、マーク・レスターと見たぞ。(確認しようにも、クレジット・ロールはなし)
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