撮りためた録画デッキの中に、こんな番組がありました。
「ポール・マッカートニー ライブ・イン・ニューヨーク・シティ」
ポールがニューヨークにオープンしたスタジアムのこけら落としとして、2009年7月に行なった記念ライブですね。
会場となったのは、シティ・フィールド・スタジアム。
このスタジアムは、1965年にビートルズが史上初のスタジアム・コンサートを行なったニューヨークのシェア・スタジアムの替わりとなる新球場としてオープンしたんですね。
まあ、ポールには縁の場所ということになります。
12万人以上を動員したしいいますから、いまだビートルズパワーは衰えを知らずというところでしょうか。
さて、そのコンサートの中で、ポールがピアノの弾き語りで歌ったのが、ビートルズでは最後のシングルとなったバラードの名曲「THE LONG AM\ND WINDING ROAD」
さて、この曲ですが、ご存知のとおりビートルズのラスト・アルバム「LET IT BE」に収録されています。
で、この「LET IT BE」
実は、ビートルズの面々は、あの当時、「ABBEY ROAD」を完成させたところで、ビートルズとしての活動に見切りをつけ、このアルバムを仕上げるのを放棄しちゃってるんですね。
当時の彼らの人間関係は、それくらい冷え込んでいたうわけで、それは、あの映画「LET IT BE」を見ても伝わってきます。
それで、プロデューサーのジョージ・マーティンは、このアルバムの仕上げを、フィル・スペクターに依頼したんですね。
そして、完成して、リリースされたのが、僕たちがよく知るビートルズのラスト・アルバム「LET IT BE」というわけです。
ところが、自分たちで放棄したにもかかわらず、ビートルズの面々は、このフィル・スペクター版の「LET IT BE」がお気に召さなかったんですね。
特にポールは、ご機嫌斜めだったようです。
そしてその中でも、特に、そのアレンジに異議を申し立てたのが、「THE LONG AND WINDING ROAD」。
フィル・スペクターは、このバラードにフルオーケストラのアレンジをかぶせたのですが、これがポールとしては、気に入らなかったんですね。
でもまあ、自分たちが完成を放棄してしまったんだから、しのごのいっても後の祭り。
そして、時は流れて2003年。
その辺の鬱憤をはらすかのように、ポールは、「LET IT BE...NAKED」という、セルフリメイクのアルバムの発表にゴーサインを出します。
NAKED というくらいですから、余計な音はそぎ落とした、これこそが、ビートルズのオリジナルの音ということでしょう。
「俺たちがやりたかったのはこれだ」というわけですね。
もちろん、、「THE LONG AND WINDING ROAD」からは、オーケストレーションは取り去られていたのは、いうまでもありません。
さて、そんな経緯をたどった、このバラードの名曲ですが、このニューヨークシティのコンサートでは、どんなアレンジで演奏されたか。
答えからいってしまいますと、このライブで演奏された、「THE LONG AND WINDING ROAD」は、明らかに、フィル・スペクターのバージョン。
まあ、いまどきは、オーケストラを揃えなくても、それなりの音は、作れてしまいますので、その場にオーケストラが用意されていたわけではなさそうでしたが、完全に、ポールがこだわっていた、「LET IT BE...NAKED」のバンドアレンジンではありませんでした。
僕としては、このあたりがニヤリです。
サービス精神旺盛なポールのことですから、そんな自分のこだわりよりも、あえて、観客が喜ぶアレンジで演奏したということはあるかもしれません。
さて、「THE LONG AND WINDING ROAD」に関して、僕の好みはどうか。
実は、ポールには、申し訳ないけれど、やはりこの曲は、僕個人としては、中学生の頃から慣れ親しんでしまっている、フィル・スペクターのバージョンに軍配が上がります。
このバラードにまつわる、そういう経緯を知識として知ってしまっても、やはり、耳にしみこんでしまっている「音」というのは、そう簡単に、理屈ではひっくりかえらないようです。
これは、今聞いてもやはり同じ。やはり違和感があるのは、NAKED のバージョンの方です。
まあ、ポールも僕も、年を食ったということでしょうかね。
しかし、いずれにしても、この曲は、どちらのバージョンで聞いたとしても、名曲であることには、変わりありませんけどね。
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