平成十二年の9月に読んだ短歌ですね。
西暦でいえば、ちょうど2000年。
20世紀の最後の年でした。
九月
残暑でも茜に染まる夕焼けに次第にかかる秋のフィルター
夏休み明けて会社のオフィスには土産の菓子折り北から南
学校に子供らの声帰ってきてジャングルジムの深呼吸かな
ひと夏の遊び自慢で放課後は日焼けしてる子に軍配上がり
いまさらと思えど慣れぬ指先で次長のパソコン五十の手習い
半袖の二の腕摩る霧雨や車のエアコンオフにした朝
たっぷりと陽射しを浴びた街路樹が色づくまでの秋支度かな
灰の島4000人が後にして大地の機嫌伺うしかなし
大雨の後始末なお続く午後けろりと晴れてる憎らしさかな
山肌に雲沸き立ちて秩父峯はその懐に手届かんとす
街の灯がフロントガラスの雨模様君の寝顔にそっと映して
長月や一雨ごとに秋めいて夏の名残を思い出にして
変わりゆく秋の空など眺めつつ女心の行方を思う
今世紀最後のお祭りシドニーでさあさあみんな楽しんどいで
バス待ちでラジオ聞いてたオジサンがイヤホンはずして「メダル取ったぞ」
国背負いメダルに挑む若者に良くも悪くも悲壮感消え
最終回筋書き通りのドラマより筋書きなしのオリンピック
コスモスの花秋風にゆらゆらり日向ぼっこの子猫が欠伸
運動会知らせる空砲隣から厚焼き玉子の匂い漂い
彼岸過ぎ重い腰上げ夏服をしまう裾から珊瑚ひとつ
草むらに秋忍び寄り携帯に手がいきかけた虫達の声
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