十一月は、昔の言い方では霜月。
でも、今では地球温暖化で、十一月になってもちょっと霜のイメージはないですかね。
まあ、でもいつまでも夏のカッコで油断していると、くしゃみも出る季節になりました。
それでは、12年前の十一月はどうだったか。
拙い短歌で振り返ります。
平成12年
乾かない洗濯物に愚痴こぼしビデオでも見る秋の長雨
四十過ぎ中性脂肪値上がりだし野菜一品増える食卓
いにしえの着せ替え人形そのままの若い娘らが歩く街角
秋晴れの堤に陣取り釣り糸をたれてひねもす太公望
青空をキャンパスにして描きたる雲印象派の筆使いかな
ご自慢の装い楽しむ秋盛りコートを着込む季節はもうすぐ
朝顔の種を砕いて白粉(おしろい)をつけてはしゃいでる登下校かな
年賀状印刷案内貼り出され年末がもう始まっており
子供らと手繋ぎ歩く母たちをに何かが起きてるこの世紀
末
街路樹の落ち葉が車にあおられてアスファルトの道踊りころげる
渡り鳥群れから離れたつがい二羽我が河原にてしばしの歓談
カラオケに一人で来ている紳士風年末に備えひそかに仕込み
玄関を数歩出てから立ち止まりやっぱり戻ってジャンパー着込む
花壇からほのかに香るライラックなにかの記憶にふとリンクする
愚痴こぼしやる気がないのを棚に上げ休んでないのを自慢する人
冬隣りボジョレーヌーボ食卓にフランス料理一品追加
好きな曲集めてテープに詰め込めば今年の歌がないのに気づき
昔見た懐かしき映画エアチェック老後のためにしっかり保存
枕元小春日和の日が射してぼそぼそ起き出す土曜日の朝
雨上がり路上駐車の車にはフロントグラスに木の葉のカーテン
オンラインパソコン画面の向こう側言葉の端から見えてくるもの
一口のコーヒー体にしみわたり覚醒していく夜明け前五時
スタンドに積み上げられた灯油ポリ冬支度する街の片隅
北の町初雪届けるテレビからチャンネルひねればタモリが踊る
SFの舞台であった新世紀未気がつけばもう未来は今日に
秩父路の仕事帰りに露天風呂休みを一日得したような
山間の温泉入れば団体の老人たちのたるんだお尻
子供らがディズニーランドで跳ね回り勤労感謝に苦笑いかな
初霜がフロントガラスに降りたちて車と同じ息を吐く朝
木枯らしが山裾ぬって噴きろし峠の道は落ち葉のレビュー(山岳編)
木枯らしがビルの谷間をすり抜けて銀杏並木は落ち葉のレビュー〔都会編)
平成13年
朝三枚日中一枚夜三枚寒暖忙し秋のお召しかえ
木枯らしが澄み渡る空駆け抜けて遥か頂に雪模様見え
ホコテンに露店ビラまきコンサート人スクランブルに休日駅前
シャツを出し寝癖ヘアにズボン下げオヤジのそれはお洒落と呼ばれず
ゲーセンのマシンに並ぶ少年ら慣れた手つきで戦争バトル
若き日の来るや来ぬやの待ちぼうけ携帯文化が小鼻で笑う
立冬や十一月の声聞いて街で年末静かに始まる
宝くじ当たったつもりの皮算用これで買値の元はとったり
色づいた公園を行く老婦人腰をかがめて秋ひとつ拾い
解禁日海の向こうの果実酒がお酒の国の店先飾る
七五三おめかしさせて記念写真子がまだ親の天使の記念に
フローリング転寝をする昼下がり伸びた日差しが枕に届く
この夜空一面に降る流星群見れたつもりの夢の中かな
忘年会飲めや歌えの盛り上がり不景気のウサここではらさん
職探す友の電話に付き合って日本の政治にああだのこうだの
気がつけば「笑点」終わり「サザエさん」休日暮れてため息ひとつ
北風に踊る銀杏の並木道枯葉の絨毯さくさくと行く
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