この映画は見ていません。
座頭市シリーズは、テレビドラマにもなりましたが、あまり見た記憶がありません。
しかし、この強烈なキャラクターの印象はさすが鮮明ですね。
何本か見た作品も、タイトルは完全に失念しておりますが、あの名セリフ
「おまえさんがた、なにかい?」
といって、居合一刀、悪人をバッサバッサと叩き斬る傑出した盲目のアンチヒーローの
立ち回りは、少年当時に真似をして遊んだ記憶は鮮明です。
盲目のヒーローですから、もちろんあの白目をむいたものまねをするわけですが、
それをすると、大人たちがなぜか顔をしかめて、
「こら、そんな真似するんじゃありません」と怒られるのが、
子供心に理解できませんでしたね。
「忍者舞台月光」や「仮面の忍者赤影」のものまねならよくて、
なぜ座頭市がダメなのか。
あの当時は不思議でなりませんでした。
「めくら」「いざり」「おし」「つんぼ」「かたわ」「びっこ」「ちんば」
あの頃はなにも考えずに、日常レベルで使っていた言葉が、
いつのまにか、差別用語となり、放送禁止用語になっていった過程は、
子供心にうっすらとはわかっていましたが、では、あの当時と今の差別意識が
それほど変わったのかというと、大人になった今考えてみても、
それほど大差はないという気がします。
差別意識は、おそらく言葉の問題ではないと思いますね。
むしろ、言葉がお行儀よくなってきた分、差別意識自体は陰にこもってきたような気がします。
そういえば、この座頭市シリーズのヒットにあやかった、「めくらのお市」シリーズとか「めくら狼」なんて
作品も生まれましたが、この差別用語をもろにタイトルにしてしまったせいで、
このDVDの時代になっても、日の目を見ることはなくなってしまいました。
座頭市シリーズは、なんとか今でも見ることはできますが、当然のことながら、
「好ましくない表現が」云々というテロップが冒頭につきます。
ふと、思うのですが、この映画の脚本を今作るとして、
「めくら」という言葉を使ってはいけないということになると、どんなセリフ回しになるのか。
少なくとも、リアリティは犠牲になるのでしょう。
そんなお行儀のいい映画が、果たして面白いかどうかは疑問です。
「お前さんがた。いいかい。目ん玉ひんむいてたって、見えないものはあるんだよ」
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