1963年といいますから、昭和38年公開の東映映画。
主演は、鶴田浩二。
「次郎長」といえば、言わず゜と知れた時代劇では欠かすことのできないビッグアイコン。
有名なところで言えば、この東映版の前には、小堀明男主演の東宝版。
この東映版の後には、中井貴一主演の角川版がある。
清水の次郎長といえば、海道一の大親分。
次郎長親分が従える子分もまた、「森の石松」を筆頭に、皆粒ぞろいの映画素材。
大政小政、桶屋の鬼吉、法院大五郎などなど。
名だたる監督たちが、こぞって映画化している。
この映画の監督は、マキノ雅弘。
一族こぞって映画人という、日本映画黎明期からの生粋の活動屋。
この人、東宝版の次郎長シリーズも撮り、この東映シリーズでも監督を務めた人。
よほど、この素材が好きなんでしょう。
そういえば、マキノ監督の甥である津川雅彦が、マキノ雅彦名義で、「次郎長三国志」を監督したのが2008年。
津川雅彦は、この1963年度版「次郎長三国志」にも、増川仙右衛門役で出演していました。
兄である、長門裕之も、映画のラストにちらりと、森の石松役で登場しているが、彼が活躍するのは2作目以降。
奥様の南田洋子も出演している。
目を引いたのが藤純子。
後に東映の金看板となる「緋牡丹シリーズ」で、キリッとした女侠客を演じた彼女だが、この映画ではなんとも初々しい町娘役。
昔の映画を見る楽しみは、なんといっても、その後に活躍するスターたちの若かりし頃をチェックすること。
関東綱五郎を演じた松方弘樹などは、この後の東映実録やくざ路線で眉毛を釣り上げた強面のキャラになってゆくが、この作品では笑顔も可愛い21歳のイケメン。
この人のお父さんといえば、僕らの世代では、なんといっても「素浪人月影兵庫」。
このテレビドラマで主役を演じた近衛 十四郎も、この映画に出演しており親子共演ということになる。
東映は、時代劇の制作を次第に、テレビへとシフトしてゆき、テレビでは制作が難しい任侠映画に路線を変えてゆく。
この「次郎長三国志」は、東映時代劇の一番「旬」の頃の作品で、映画全体からそんな空気が漂っていますな。
清水の次郎長親分というと、「丹下左膳」や「鞍馬天狗」同様、映画の中のオリジナルキャラクターというイメージが強いが、この人は実在した人。
人望が厚く、たくさんの個性的な子分衆を束ねる魅力的なキャラで、血を流す抗争を嫌った人。
彼の身上は、「揉め事を預かり、話をつけ、手打ちにする」その手腕。
侍の時代が終わった後は、彼は潔く刀を捨て、その人脈を駆使して、事業活動に精を出し、この地域の発展に努めた。
そんな、清水次郎長を、主役の鶴田浩二は、サラリと明るく、時にはコミカルに、クセがなく演じてみせた。
けして上手な俳優とは思わないが、博奕で身ぐるみはがれた子分たちと、サラシ一枚と編み笠でニッコリ笑って旅立つシーンなどは、ちょっとこの人でないと絵にならないかもしれない。
映画素材としての「次郎長三国志」は、その映画化にあたっては、二代目広沢虎造の浪曲の影響が大きい。
そのパフォーマンスの中で、彼がこの物語に加えたフィクションが、虚実入り混じった清水次郎長のブランドイメージを高めたようだ。
一度Youtubeで探してみるかな。
「旅行けば駿河の国に茶の香り~」のあれである。
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