2008年にWOWOWで製作され公開された映画。
原作は宮部みゆき。
この人の作品で常にキーポイントになるのは、「視点」。
それでいうと、この作品の語り部の「視点」はかなりユニーク。
なんといっても「財布」なのですから。
「犯人の財布」「刑事の財布」「目撃者の財布」。
彼女の「理由」という作品も、一つの事件を、いろいろな人たちの証言で構成して、真実を浮き彫りにしていくという手法でしたが、この辺りが彼女流ミステリーの真骨頂。
とにかく、この人の描く作品の根底にあるのは、常に「普通の人」目線。
普通でない人よりも、普通の人の、普通の感覚のミステリーの方が、実ははるかに怖い。
極上のミステリーとは、実は日常にこそ潜んでいるもの。
彼女はこのことを、熟知しているといえましょう。
普通の人の日常から、普通でないサスペンスを、いかに上手にすくい揚げるか。
そのあたりが、この人のミステリー作家としての面目躍如かな。
一つの事件を、いろいろな視点から描くという手法の原点は、やはり黒澤明の「羅生門」。
真実は神のみぞ知る。
実際はそうなのかもしれないけれど、映画としてそう突っ放してしまってはエンターテイメントにならない。
かといって、一直線に真実にゴールしてもつまらない。
人間は、もともと人それぞれ。
その多様性を上手に拾って、組み上げていけば、リアルな日常ミステリーが出来上がるという寸法。
こういうスタイルの映画が、どうやら僕は嫌いではないようだ。
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