1997年の日本映画。
監督は黒沢清。
極上のサイコスリラーですね。
主演は役所広司。
ひところ、「マインド・コントロール」という言葉盛んに使われました。
記憶では一番最初に使われたのが、1993年の「統一教会」事件の時。
それから、かの有名な「オウム事件」で、この言葉は一気にポピュラーになりました。
あれが1995年。
この映画は、その2年後の作品。
「マインドコントロール」なんていう言葉がなかった僇は、「洗脳」なんていう言葉がありました。
これで思い出すのは、50年代のアメリカ映画「影なき狙撃者」。
主演はフランク・シナトラ。
ソ連に捕らえられ洗脳された男が、洗脳され、アメリカの要人を狙うというお話。
監督は、ジョー・フランケンハイマー。
これは国家ぐるみのマインド・コントロールの話でしたが、この映画はもっと身近。
自分のもっとも身近な人が、何者かにマインド・コントロールされて、いつもと同じ顔で、命を狙ってくるという恐怖。
お化けでも、UFOでも、怪獣でもない。
身近にいる人間の「殺意」ほどこわいものはない。
この映画の、怖さはそれですね。
そして、その怖さを表現するのに、カメラはどっしりと腰を落ち着けて動かない。
ありがちな安っぽいカット割りもない。
これがうまかった。
でんでん演じる警察官が、同僚を射殺するシーン。
このシーンなどせは、ほとんどワンカットでした。
この淡々としたカメラワークこそが、日常の恐怖を的確にとらえます。
そしてあのラストシーン。
あのラストシーンは、恥ずかしながら、最初意味が分かりませんでした。
レストランで、主人公と軽い会話を交わしただけのウエイトレスをなんでカメラが追うのか。
それとも客の中に誰かいるのか。
すぐに戻して確認しました。
おお、そうか。なるほど。
それは、うっかりしていると見落としてしまうくらいさりげなく描かれていました。
おっと、それをここで語ってしまうのは反則ですね。
それは、映画をご覧になってご確認あれ。
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