2013年製作のWOWOWドラマ。
木嶋佳苗という名前を憶えているでしょうか。
当時は、かなり騒がれ、メディアでも報道されましたね。
結婚詐欺の常習犯で、その挙句の果てに、婚活サイトで知り合った三人の男たちを殺害したという毒婦。
裁判の結果、死刑を宣告されました。
その彼女による首都圏連続不審死事件から着想を得たフィクション作品がこれ。
とにかく、この小太りで不細工なアラフォー女が、男たちにもてたというわけです。
定職も持たないのに、男たちに貢がせたお金で、都内のかなり高級なマンションに住んでいたというのだから女というのはわからない。
貢いだ男たちは、やはり彼女になんらかの魅力を感じていたのでしょう
いろいろと考えさせられる事件でした。
さて、ではこれをいかにドラマにするのか。
複雑な人間を描くのがドラマなのですが、実はドラマには、実に明快で簡単な法則が一つ。
それは、ビジュアルに魅力のある美男美女が主演でなければ、視聴率は取れないということ。
いかに木嶋佳苗が話題性にあふれた素材であるとはいっても、やはり彼女のビジュアルでは、当然ながらドラマの視聴率は取れません。
でも、そんな彼女を、視聴率を取れる美人女優に演じさせたら、内容が内容なだけに、それこそあまりに嘘くさい。
見ている方がシラけます。
ではどうするか。
なるほど、考えましたね。
そこでこのドラマでは、ヒロインを二人登場させます。
一人は、かつてみんなから美人と言われた女の子。
それが交通事故で、顔面に傷を受け、人生が一変してしまう。
父親との近親相姦などの末、自分の過去の痕跡を消して、東京ら出て行く際に、整形手術を受けます。
彼女が医者に言うセリフ。
「ブスにしてください。」
もう一人の女性は、美人の母親に生まれたのに、ちっとも美人ではなく育った女の子。
そのことで辛酸を舐めた彼女もまた整形手術を受けます。
母親の写真を出して、彼女が医者に言うセリフ。
「この人をもっと綺麗にした顔にしてください。」
このまったく対極的な女性二人を、木嶋佳苗の事件に絡めて、女性たちにとっての大きな問題である「美しい」「醜い」というテーマにドラマは切り込みます。
これって、意外に、今までありそうでなかったテーマでした。
そもそもすへてのドラマに共通して言える嘘が、ひとつ。
それは、登場人物がみな不自然にビジュアルが魅力的なこと。
もちろん実際には、そんなことはあり得ないわけです。
視聴率を取るにはやむを得ないのですが、やはりこれが、明らかにドラマからリアリティを奪っていると僕は思っています。こちらからすれば、そんな美男美女が、そう何人も揃うわけがないだろうとう話です。
しかしそうはいっても、ブスが主演のドラマが視聴率を取るとも思えません。
では、このドラマの場合はどうするか。
なんといっても、その「美」と「醜」がテーマとなるドラマです。
キャスティングがキーポイントになるのは必至。
そこで、オファーされたのが寺島しのぶ。。
彼女のキャスティングが絶妙でした。
不細工で小太りのアラフォーという設定を壊さずに、その上で視聴者の関心も損なわないビジュアル。
それがこの役には求められるのですが、彼女は見事にクリアしました。
とにかく、ブスというオファーを断らないのですから、彼女もまた役者としての肝が座っています。
彼女の母親は、言わずと知れた藤純子。現在は、また女優業にもカムバックして、名前改め富司純子。
往年の東映大人気任侠映画「緋牡丹シリーズ」のお竜さんです。
女だてらに片肌脱いで、ヤクザな男たちを向こうに回し、大立ち回りを演じる、小股の切れ上がった姉御。
僕よりもう少し上の世代のおじいちゃんたちが夢中になった東映の看板美人女優でした。
そんな母親をもつ彼女もまた、「美しい」「醜い」ということに関しては、敏感な少女だったかもしれません。
「私は、母親のように華はない。」
彼女がそう思っているかどうかはわかりません。
でも、そんな母親を持ったばかりに、普通の家庭に生まれていれば、もつことのなかったコンプレックスに、彼女が苛まれていても決して不思議ではないでしょう。
彼女が女優になってからは、大胆なラブシーンのある映画にも多く出演。
母親は大反対したようですが、それはつまり母親が女優であれば絶対に受けなかった仕事ということ。
それを受けたというところに、やはり彼女なりの覚悟があったのだという気はします。
自分は母親と同じ舞台の上では戦えない。
そんな思いが彼女にはあったかもしれません。
ましてや、ブスの役なんて、絶対に普通の美人女優なら大スターならやりはしない。もちろん若い頃の母親が受けないことも当然。
ならば、私はやりましょう。
なにかしら、そんなモチベーションが、彼女が演じたこのドラマの主人公にも、心情的にリンクしていたような気がします。
彼女の他に、この役を引き受けるような女優っているかなと考えましたが、ちょっと見当たりませんね。
そして、その対極の、かつてブスだった女の子の方を演じたのは、普通に美人女優の木村文乃。
もちろん、綺麗な女優さんです。
しかし、役柄とは不思議なもので、やはりこの美しさは、整形後の顔というのがわかっていると、これもまた感情移入できないもの。
その意味では、彼女はこのドラマでは、その美しさが逆に仇になって、少々損をしている感じが否めません。
面白いドラマというよりは、興味深いドラマです。
昔から、よくある男に対する質問。
「性格の悪い美人と、性格のいいブス。どっちが好き?」
これに対しては、僕はいつでも躊躇なしにこう答えています。
「もちろん、性格の悪い美人。」
こちらのビジュアルは棚に上げて言わせてもらってますが、これはこの歳になってもまだ揺るがしがたい本音なので、おそらくもう一生変わることはないでしょう。
この先、自分の隣に美人ではない女性が寄り添っていることがあったとしても、それはあくまで妥協の結果ということです。
しょうがない。
世の中には、身分相応というものがあります。
その場合は、自分の器量を恨んで、ひたすら我慢するのみ。
美人妻に恵まれない、世の中の男の大半はそうなのではないでしょうか。
ですから、男の浮気は未来永劫なくならないことも確信しています。
これをコントロールできるのは、やはり理性だけでしょうね。
結婚というセレモニーは、そんな危うい男たちに、覚悟を決めさせる儀式であるとさえ思っています。
まあ、そんなことを言っているから、未だに独り身なのでしょう。
「美人は三日で飽きるが、ブスは三日で慣れる」
こんなこともよく言われますが、僕はこれにも眉唾。
なんだか、もてない男たちの負け惜しみに聞こえてしまいます。
ちなみに、現在の木嶋佳苗被告。
決定的な証拠がない中、検察側の地道な状況証拠の積み重ねと、本人のまるで反省していない言動などから、第一審からの死刑判決が覆されていません。
しかし、彼女はその死刑を回避しようとするどころか、反対に早期執行を願い出ているとのこと。
わかりません。どこか超然としています。
彼女は、収監されている東京拘置所を自身のブログで「小菅ヒルズ」と呼んでいます。
そして、彼女には支援者グループもあり、その差し入れが、また半端ではないとのこと。
そして、極め付けは、こともあろうに、獄中にいながら結婚・離婚・再婚までやってのけてしまったこと。
彼女がその容姿で、いまだにモテ続ける理由は確かに存在するのでしょう。
しかし、僕としては、その理由を理解したいとは思いませんが。