さて、2017年もいよいよ大詰。
今年一年の出来事をニュースで振り返ってみると、確かにいろいろなことはありましたが、国内外の政治経済のニュースよりも、けっこう僕にとって、興味津々のニュースがこれでした。
今年の2月に、NASAが発表したニュースです。
その研究チームが発表したというニュース、それがこれ。
「地球から、40光年という近距離に、7つの地球サイズの惑星を持つトラピスト1惑星系を発見。」
理科系の知識は、不得手な僕でも、これはなんだかゾクゾクするニュースでした。
つまり、今まで、僕ら世代が、漫画や映画などで膨らませてきた、地球外生命体の可能性が、この発見で一気に現実味を帯びてきたということです。
あの「E.T.」や「未知との遭遇」で、体験した世界が、もしかしたら、現実のものとなるかもしれない。
これはちょっと、僕のような理科系門外漢でもかなりワクワクさせられました。
トラピスト1というのは、水瓶座の一角にある赤色矮星。
その周りを周回している惑星が全部で7つ。
人呼んで「セブン・シスターズ」。
これが、トラピスト1惑星系というわけです。
トラピスト1は、太陽に比べれば規模の小さな恒星。
サイズは、およそ十分の一。明るさで言えば、およそ千分の一です。
この惑星系は、太陽系と比較してみると、太陽から一番近い水星くらいまでの近距離に、7つの惑星が密集しています。
そして、この7つの惑星は、すべて岩石惑星ということが確認されています。
なぜ岩石とわかるかというと、それはそのサイズ。
どれも、みんな地球のサイズに近いというわけです。
この岩石惑星は地球型惑星ともいいます。
これよりサイズが大きくなると、これは分類上は木星型惑星。
主成分がガスとなるため、密度は小さく、生命が存在できる環境ではないとされています。
つまり、岩石惑星であるということは、地球同様、生命の存在には欠かせない条件。
そして、この惑星系の7つの岩石惑星のうち、ハビタブルゾーンの範囲に入る惑星が3つもあるということ。
ハビタブルゾーンというのは、宇宙空間において、水が液体として存在できる範囲。つまり「宇宙の中で、生命が存在するのに適した範囲」ということです。
それは、中心の恒星からの距離が、近過ぎもせず、遠過ぎもせずという領域。
近過ぎれば恒星の熱による灼熱の世界、遠ければ反対に酷寒の氷の世界となり、生命は生存できないエリアになるとされるからです。
太陽系で言えば、このハビタブルゾーンに入るのは地球のみ。
火星がギリギリ入るか入らないかというくらいの距離。
ですから、そのハビタブルゾーンに、3つの惑星がひしめく、トラピスト1惑星系に、生命の可能性があることは、俄然現実味を帯びてくるというわけです。
もしかしたら、3つの星それぞれに生命体が存在して、その近さゆえに、お互いコンタクトを取りながら進化している可能性だってある。
実は、このトラピスト1よりも、さらにもっと近い距離のハビタブルゾーンにある系外惑星が2016年に発見されていました。
それは、プロキシマbというプロキシマ・ケンタウリにある惑星で、その地球からの距離はわずか4光年。
しかし、このプロキシマbよりも、このトラピスト1惑星系が俄然注目されているわけとは、地球からの観測が格段にしやすいということ。
惑星というのは、自ら光を発しないため、直接の観測はできません。
そのため、その観測には、間接的に調べる手法がとられます。
プロキシマbの場合は、恒星のわずかな振動を計測する手法がとられましたが、この手法でわかるのは、そのおおまかな質量と公転周期くらいまで。
しかし、トラピスト1惑星系は、地球から見て、その惑星すべてが、中心の恒星であるトラピスト1を横切る軌道をとっているということ。
これが画期的でした。
つまり、惑星の一つ一つが、恒星を横切っている間は、その惑星は、恒星の光を遮る形で影のようになります。
惑星自体の姿はみえなくとも、この影を明暗の変化を観測することによって、プロキシマbと比較すると、圧倒的に膨大な観測データが得られるということ。
これが、トラピスト1惑星系に対する期待を、大きく膨らませる理由です。
今後の観測で注目されることは、なんといっても、この惑星に大気が存在するかどうか。
これは、光の波長を駆使した現在の観測方法でも充分にゲットできます。
さあ、トラピスト1の惑星群に、はたして大気は存在するか、「水」は存在するか、そしてもうひとつ「酸素」は存在するか。
これが発見されれば、地球外生命体の存在の可能性は、飛躍的に大きく膨らみます。
はたして、トラピスト1惑星系に、生命は存在するのか。
ちょっと、具体的に想像してみましょう。
まず、トラピスト1惑星系では、恒星と惑星との距離が近いため、惑星の同じ面が常に恒星を向いているという現象が起きます。
これは、恒星の重力によって、惑星の自転と公転の周期が同期するという現象。
ちょうど地球と月と同じ関係で、「潮汐ロック」といわれているもの。
これは、恒星を向いた半面はいつでも昼。
反対に、その裏側の半面は、いつでも夜。
つまり、トラピスト1惑星系においては、まず昼夜が逆転しません。
地球の環境と、大きく違うのはこの点。
しかし、それだからといって、生命が存在しないということにはなりません。
地球の進化の歴史がそうであるように、一度誕生した生命は、その置かれた環境の中で独自の進化を重ねていくはずです。
7つの惑星はいずれも「昼」と「夜」がはっきりと分かれていることから、四季のある地球と比べると、変化に乏しく、生き物が生まれにくい環境にあることは想像できます。
でも、その境界線にある帯状のエリアは、反対に比較的ちょうどいい気温を保っている可能性もありそうです。
もし、そこに生命が発生して、知的生命体に進化したとしたら、そのタテのリング状に文明が発展していく可能性がありそうです。
そうすると、昼夜は逆転しなくとも、活動するときは昼側、休息するときは夜側に移動するというサイクルを生み出して進化しているかもしれません。
生命はひとたび生まれれば、なかなかしぶとい。環境には適応していくものです。
また、強烈な太陽フレアから身を守るため、厚い皮膚をもっている可能性もあります。
昆虫のようなイメージでしょうか。
ちょうど、戦国時代の兵士のように、見た目は“鎧”を被っている感じになるかもしれません。
重力は同程度なので、身長は人間と同じサイズである可能性が高い。
僕らが、ウルトラシリーズで見てきた怪獣たちのようなサイズでも、反対にミクロのサイズの生命体であることもなさそうです。
過酷な地上環境から、身を守るために、彼らはもしかしたら地底に潜って、文明を発達させるかもしれません。
子供の頃に見た「ガメラ対大悪獣ギロン」の惑星テラのシーンや、東宝特撮「怪獣大戦争」で、キングギドラの破壊から逃れるために地下に文明を築いたX星のシーンを勝手にイメージしてしまいます。
赤色矮星トラピスト1にある惑星系の星から見た世界は、赤が基調。
その天空には、地球で見上げる月よりももっと大きく見えるはずの惑星と恒星が7つも浮かんでいるわけです。
今後、このトラピスト1の観測が進んでその実態が明らかになっていけば、SF映画のビジュアルも、宇宙を舞台にしたSF小説のあり方も、だんだんと変わってくるかもしれません。
このトラピスト1惑星系のある水瓶座は夏の星座。
ですから、今は見えません。
しかし、水瓶座がみえるようになる来年の8月になれば、世界中の天体望遠鏡が、一斉に競うように観測を始めます。
その観測の結果が、今はなんといっても待ち遠しい限り。
僕は、もうすぐ還暦ですが、是非とも生きているうちに、「地球外生命体発見」もしくは「生命がいた痕跡発見」の朗報くらいは聞きたいところ。
それが知的生命体であればいうことはありませんが、たとえアメーバのような単細胞生物であっても、それはおなじこと。
だって発見されれば、少なくとも何十億年先には人類を凌駕するような文明をもった生命体に進化していることは想像できるわけです。
このトラピスト1のような赤色矮星の数は、実に全宇宙の四分の三を占めます。
つまり、生命の存在し得るハビタブルゾーンにある惑星は、全宇宙には、発見されていないだけで、それこそ無数にあるということ。
したがって、宇宙には、生命の宿る惑星があって、むしろあたりまえということになりそうです。
残念ながら、地球から見て、それが観測できるのは今の天体観測技術からすれば、せいぜい50光年までの距離ですが、それが、今回は40光年という近距離に、発見されたわけですから、トラピスト1惑星系の発見は衝撃的。
地球外生命体の研究の歴史の中では、まちがいなくターニングポイントになる発見ということになります。
ウルトラセブンのおかげで、子供の頃には、むしろあたりまえに刷り込まれていた「宇宙人はいる」という常識。
それが、大人になるにつれて、「そんなものはいない」という常識に覆されて、今また「やっぱり宇宙人はいるよ」ということが新しい常識になるかもしれない。
今更ながら、宇宙への興味の本質の部分は、子供の頃からなにも変わっていないということに気づかされます。
車椅子の物理学者ホーキング博士は、「地球にコンタクトしようとする、地球外生命体に接触することには慎重になるべき」と警告しています。
その理由はというと、「侵略目的である可能性が高いから」とのこと。
地球防衛軍が聞いたら、みんな敬礼しそうなご意見。
しかし、SF映画好きの一般市民としては、連中だってこちら同様、悪意はなく知的好奇心のみでコンタクトしてくることだって充分にあるんじゃないのと思いたいところ。
彼らはきっとこういうかもしれません。
「一年に365回もクルクル回りながら、昼になったり夜になったり、暑くなったり寒くなさったりするような不安定な環境の中で、あんたたちよく生きてられるね。興味あるわあ。」
つまり、この世紀の大発見からわかることは、トラピスト1のような赤色矮星のほうが、宇宙全体ではむしろ圧倒的多数派だということ。
全宇宙の生命体のいる環境としては、地球のようなタイプの方がマイナーということです。
昔から、地球は「奇跡の惑星」などと呼ばれてきましたが、今回のこの発見によってわかることは、どうやら、特に、地球だけが奇跡でも、超レアということでもなさそうだぞということ。
どうやら、宇宙には、あたりまえに生命は存在し、知的生命体はいる。
今やそう考える方が自然だということが、このトラピスト1惑星系の発見からわかるわけです。
もし、僕の寿命が間に合えば、そんな「彼ら」とコンタクトをして、是非ともその模様をビデオカメラで撮影し、YouTube に投稿してみたいものです。
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