Amazon Prime で鑑賞。
2014年の松竹作品。
監督は、山田洋次。
日本が戦争へ向かう、昭和10年代の東京ダウンタウンの小さなおうちでの恋愛事件の物語。
山田監督自身の、少年期がちょうどこの映画の時代だったでしょうから、彼自身が体験したこの時代のリアルな空気感を、教科書でしかこの時代を知らない世代が大半になった今の日本人に、しっかりと伝えておきたいという思いがあったかもしれません。
山田監督といえば、やはり「男はつらいよ」シリーズ。
寅さん映画で、決して実ることのないプラトニックな恋愛を描き続けてきた監督が、この映画では一転、濃厚な男女の不倫愛を「事件」として描きます。
もちろん、山田監督ですから、直接的な表現は一切ありません。
しかし、淡々とした演出とセリフの妙で、のっぴきならない大人の情感を上手に醸し出していました。
女中のタキだけが知る恋愛事件の隠された真実。
その構成が、ほんのりミステリー仕立で、これもいままでの山田演出にはなかったパターン。
80歳を超えても、まだ新しいことにトライしようとする姿勢はなかなかお見事。
女中タキの、若き時代を演じたのが黒木華。
その老後を演じたのが倍賞千恵子。
こういった同じ人物を、二人の役者が演じるパターンは、大抵の場合、配役のご都合で、あまり似ていなくてしらけてしまうことが多いのですが、この二人はちょっと似てましたね。
黒木華は、いかにも昭和の初期にいそうな感じがよく出ていて、このキャスティングはあたり。
山田監督は、この映画で、実はファンタジーがやりたかったような気がしています。
寅さんに、もう少し長生きしてもらって、マドンナを演じる松たか子を見たかったなあ。
コメント