12月12日は、小津安二郎の命日だそうです。
彼がなくなったのは、満60歳の誕生日。
1963年のことです。
僕が来年60歳ですから、ほとんど彼の人生分は生きてきたことになります。
彼の映画は、学生時代は敬遠がちでした。
映画館で見たのは、「東京物語」くらいかな。
やはり、若かった頃の感性には、彼の映画はあまりに刺激が足りなかった。
なにせ、ドンパチエロエロ大好物のB級映画マニアでしたから。
しかし後年、おそまきながら笠智衆のファンになってからは、一気に彼の映画にはまりました。
あの独特のローアングルも、俳優たちがみんなカメラに向かってセリフを言う独特のスタイルも、様式美として味わえるようになりました。
ハリウッドの大迫力映画を見た反動で、今度は小津作品に淡々とした枯れた世界に戻る。
何か、そんな風にバランスをとりながら映画を見ていた気がします。
映画のどの場面を切り取っても、一幅の名画になる構図の安定感と美しさ。
意味よりも、リズムに重きをおくセリフのまわしの心地よさ。
何気ない人々の日常を、鑑賞に耐えうる立派なエータテイメントにする松竹映画の伝統の基礎を構築したのはやはりこの人でした。
そうそう、彼の生前の写真は、いろいろなメディアで見かけますが、考えてみると、そのほとんどが、今の僕よりも年齢が下なんですね。
これには愕然とします。
どうにも、こちらは無駄に年を取ってきたなと痛み入る次第。
小津作品は、デジタル4Kで修復されたリマスターが出来ているそうなので、またぼちぼちと見直すことにいたしましょう。
老齢になれば、彼の作品は、また違った輝きを放ってくれるかもしれません。
間違いなく、小津安二郎という人は、日本の品格を底上げしてくれた方だと思っています。
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