白状してしまいますが、昔からジジババフェチです。
特に素朴で自然体の老人たちが好き。
時間が許されれば、何時間でも話して入られますね。
決め手は笑顔。
しわくちゃでもいい、歯がなくてもいい、ろれつが回らなくてもいい。
長い人生経験から滲み出る味わいのある笑顔には、やられてしまいます。
実は、こういう老人たちは、農業をやっている人に実に多い。
定年退職後は、僕も農業希望ですので、休みになれば、あちこちの田舎に出かけています。
畑や田んぼで、話を聞けるのは、たいていご老人たち。
腰は曲がっても、ちゃんと農作業をして暮らしていらっしゃいます。
みんな立派なもの。
都会の老人たちが可愛くないとは言いませんが、総じて、田舎に住むじいちゃん、ばあちゃんの方がはるかに魅力的ですね。
仕事で、病院や老人ホームを回っていますが、やはり介護されている老人たちは基本は病人。
どこかで、気持ちも病んでいくように思われます。
この本は、自宅の庭にキッチンガーデンを作って、土を耕し、木を植え、種を蒔き、苗を育てて、収穫した野菜で、日々の暮らしを賄っている老夫婦の生活に密着して、丹念にその話を聞き、その「ききかたり」を本にまとめたもの。
この本の取材当時、しゅういちさんは87歳。英子さんは84歳。
超高齢夫婦です。
都会の暮らしで我々があたりまえに享受している便利さに、毅然と背中を向けた暮らし。
日々の暮らしのあらゆることに、あえて自分たち流の手間ひまをかけて、楽しむ暮らし。
それがお二人が言うところの、「ときをためる暮らし」。
自分たちの出来る範囲で、出来ることを楽しんでいく清貧でも、美しい生き方。
肩書きや財産などなくても、人は幸せに生きられる言うことが、この本からはひしひしと伝わってきました。
都会の便利さの中で暮らす生活は、いわばサービスと言う名の「ときを買う暮らし」。
つまりは、幸せをお金で買う暮らしです。
人は、都会という自分たちが作った城の中で、快適に暮らしているつもりで、実は知らず知らず自分たちを窮屈な籠の鳥に押し込めていることに気がついていないようです。
それよりは、その自然に寄添い、共存していくこと。
自らも自然の一部だと自覚して、その恩恵に感謝し、驕らず謙虚に慎ましく暮らすこと。
日々の暮らしを、時間をかけて楽しむライフスタイル。
これ、悪くなさそうです。
還暦間近になって、「ときを買う暮らし」にも、そろそろ疲れました。
どうやら、今の暮らしの先には、「いい笑顔」の老人になっている自分の姿はなさそうです。
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