「どうしたのよ。さっきから頭抱えて。頭痛いの?」
「いや、頭は痛くないんだけど。」
「なに?」
「ちょっと、頭痛。」
「変な、ウィルスじゃないでしょうね?」
「ああ、コロナなんとか。」
「ちゃんと手を洗ってよ。流行してるんだから。」
「いや、流行じゃなくて。」
「ちゃんとニュースで言ってるじゃない。」
「はやってるだけ。」
「ところで、あなたさっきの電話誰?」
「さっきの電話?」
「女の声が聞こえたわよ。」
「ああ、会社からでしょ。」
「会社に若い女の子いた?」
「いや、いない。安倍だよ。後輩の。」
「安倍さん、あんな声してたっけ?」
「してたしてた。」
「怪しいわね。ちょっとケータイの通話履歴見せて。」
「ない。」
「ない? なにが? そんなわけないでしょ。」
「いや、ない。廃棄した。」
「廃棄した? なにを。」
「通話履歴。」
「なにいってんの。そんなの消せるわけないでしょ。」
「いや、今年から、一ヶ月ごとに履歴は廃棄することにした。」
「なんで。」
「セキュリティの問題から。」
「なんのセキュリティ?」
「いや、それは個人情報のため、お答えできません。」
「じゃあ、携帯見せて。」
「ない。」
「ないわけないでしょ。携帯が。さあ、出しなさい。」
「いや、出せません。」
「なんで?」
「さっき、シュレッターにかけた。」
妻は、黙ってお勝手に行き、お皿を手に持って戻ってくる。
そして、大声で叫びながら、亭主にそれを・・
「すいません。奥様ご静粛に。ショッキを止めてください。」
コメント