「午前十時の映画祭」で「大脱走」を見てきました。
この後のラインアップは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」3部作だけだと言うことですから、僕が見る予定の名作はこれが最後。
定年退職後からのお付き合いでしたが、楽しませてもらいました。
もちろん、この「大脱走」は、DVDも持っています。
しかし、それはそれです。
田舎へ引っ込んだらDVDで見ることもあるでしょうが、今回は大スクリーンのシネコンで鑑賞。
「ららぽーと富士見」にて、シニア料金1100円なり。
いつものように、ポップコーンとオレンジジュースのワンドリンクセット680円を抱えて、6番スクリーンへ。
さて、映画「大脱走」を始めて見た時の記憶をたどりましょう。
僕の世代の多くがそうであったと思われますが、高島忠夫解説による「ゴールデン洋画劇場」だったはずです。
この頃の長尺の大作映画は、ほぼ前後編に分けて二週連続放送というのが定番。
テレビですから、もちろん、吹き替え版。
でも、学生時代には、どこかの名画座でも見ているはずです。
「荒野の七人」と「大脱走」の二本立てなんていうプログラムが、確かあったんじゃなかろうか。
あれば、絶対に観に行ってますね。
監督は、どちらも巨匠ジョン・スタージェス。
彼が監督したこの二本は、後の大スターを多く輩出した作品としてもメモリアル。
キラ星のような大勢のスターたちを上手に捌く手腕だけでも、この監督は特筆されていいと思います。
とにかく、ラインナップされた俳優たちのキャラが見事に立っている。
この手の映画の面白さは、まずこれが基本です。
いろいろなタレント(才能)が集まって、協力し合いながら、ひとつの目標に向かっていく。
いろいろなジャンルで成立するスタイルだと思いますが、こういう種類の群像劇が、昔から、かなり大好物であったことに、改めて気がつかされました。
思えば、先週観た「七人の侍」もそのスタイルでした。
当然、この映画化権を買い取って作られた「荒野の七人」もそう。
同じ戦争映画では、「ナバロンの要塞」なんてのもありました。
僕が映画を見始めた頃に大感動した「ポセイドン・アドベンチャー」もおなじスタイル。
やっぱり好きなんだなあ。
スーパーヒーローが一人で活躍する映画も、もちろんいいですが、僕の好みはやはりヒーロー複合群像型。
それぞれのキャラがぶつかり合って、その相乗効果でドラマが盛り上がっていく。
こういう映画は、シナリオでとっ散らかっていると、ただの「顔見せ映画」になって映画の魅力は半減。
かといって、「グランドホテル」形式のオムニバスになってしまうと、それはそれで、またちょっと味わい方が違ってきます。
でも、キャラクターの交通整理がきちんと出来ていれば、やはり起承転結の明確な、よく出来たオールスター映画はシビれます。
コミックで大人気の「ONE PIECE」
僕の世代なら「サイボーグ009」
時代劇なら定番の「忠臣蔵」
テレビドラマなら「太陽にほえろ!」
みんなこのスタイルですね。
どれも、キャラクターの設定がしっかりとベースにあります。
日本人は、もともとこういう集団群像活劇が好きなんじゃなかろうか。
戦争映画でありながら、この映画には、戦闘シーンがほとんど出てきません。
連合軍捕虜たちの収容所からの集団脱走という実話を、オール男性キャストで映画化。
女っ気がまったくなくても、これをまるでスポーツを観ているかのようにカラリと爽快に描いていることで大成功しています。
この映画のファンだという女性もいるでしょうが、あえて言わせて貰えば、やはりこの映画は男性必修科目映画ですね。
しかし、そうはいっても、やはりこの映画でのスティーブ・マックイーンのカッコ良さは際立っています。
この長い映画で、脱走するまでのすべてのシーンは、ほぼ収容所内とトンネル内のクローズされた空間でしたから、閉塞感がある展開。
それが解き放たれるように、アルプスの山を背景にした大草原でのマックイーンによるオートバイの疾走シーンの躍動感は、やっぱり何度見ても見応えがあります。
この人のカッコ良さは、セリフや演技ではなく、その身のこなしだと僕は思っています。
演技派の役者はよくその役になりきるといいますが、この人の場合はちょっと違う。
役ではなく、その職業のプロフェッショナルになってしまう。
ギャンブラー、レーサー、刑事、消防士などなど。
この映画の後も、彼はいろいろな職業の役を演じますが、どの役も彼が演じると本物のプロフェッショナルに見えてしまうから不思議。
これがスティーブ・マックイーンのカッコよさの原点だと踏んでいます。
50歳で亡くなるまで、彼はけっきょくアカデミー賞は取れませんでしたが、男が痺れるそのカッコ良さで、世界一高いギャラの俳優という地位は獲得しました。
やはり僕らの世代の映画ファンにとっては、マックイーンは、永遠にカッコいい男の代名詞ですね。
映画の冒頭、タイトルが出る前にクレジットされていた俳優は三人。
スティーブ・マックイーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー。
映画のポスターも、これを反映して、この三人が先頭で走っているイラストでした。
でも、後にリバイバル上映された時のポスターというのをネット上で発見。
このポスターでは、公開当時のそのイラストは小さくなって、その代わりにチャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、デビット・マッカラムといった面々の写真が大きめにフューチャーされています。
いずれも、この映画の後で、ブレイクしたスターです。
チャールズ・ブロンソンは、日本では男性化粧品マンダムのイメージ・キャラクター。
ジェームズ・コバーンは、タバコのLARKのCM。
デビット・マッカラムは、この映画の撮影当時は無名でしたが、翌年の「0011ナポレオン・ソロ」のイリヤ・クリアキン役でブレイク。
ちなみに、ナポレオン・ソロを演じたのは、同じジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」に出ていたロバート・ヴォーン。
出演者たちの人気の盛衰が、ポスターに現れていて、面白いなと思いました。
でも、リチャード・アッテンボローは、後に監督として「遠すぎた橋」や「ガンジー」といった超大作を監督。
「ジュラシック・パーク」の博士役でも出ていましたね。
ちょっと前に読んだ映画のトリビア本に書いてあったのですが、チャールズ・ブロンソンの愛妻で、彼の映画にもよく出ていたジル・アイアランド。
彼女はもともと、デビット・マッカラム夫人だったと知ってビックリ。
実はこの「大脱走」の撮影現場で、夫に紹介されてはじめてブロンソンと会っています。゜
その後、二人に何があったかは知りませんが、結局二人はそれぞれのパートナーと別れて結婚。
デビット・マッカラムは、映画の中では、ドイツ軍に射殺されてしまいます。
でもブロンソンは、相棒と一緒にボートで川を下り、港に停泊している船に逃げ込み、無事に国境を越えます。
そして、マッカラム夫人と一緒になって、幸せになりましたとさ。
今夜は、エルマー・バーンスタインの「大脱走マーチ」を聴きながら、ビールを一杯!
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