誰もが認める「大女優」なのに、こんなに「大女優」という言葉が似合わない大女優もいないと思います。
「ブックオフ」で見つけた本です。110円でした。
ご存知「男はつらいよ」シリーズのさくらさんでお馴染みの倍賞千恵子。
彼女が書いた自叙伝です。
昨日、都内に出かけた、その往復と、ランチタイム。
そして、帰ってきてから立ち寄った喫茶店で一気に読めてしまいました。
とにかく、こちらとしては、つい先日「男はつらいよ お帰り寅さん」も劇場で見たばかり。
「男はつらいよ」全50作。
および、「家族」「同胞」「幸福の黄色いハンカチ」「遥かなる山の呼び声」「駅 STATION」などなど。
彼女が、大女優としての足跡を刻んできた節目の作品は、ほぼリアルタイムで見ています。
それだけに、演じていた女優目線で語られる撮影現場のメイキング・エピソード、人物エピソードは、どれもこれも興味津々。
あの名作での役作り。
渥美清との思い出。
高倉健という俳優の魅力。
山田洋次監督の映画に対するこだわり。
みんな、リアルに伝わってきました。
また、「幸福の黄色いハンカチ」の原作となった、洋楽ナンバー「幸せの黄色いリボン」を、山田監督に紹介したのは、彼女だった話とか。
女優の自叙伝というと、昭和の大スター高峰秀子の「わたしの渡世日記」を読んで以来。
彼女よりも、出演作品が身近な分、この本は楽しめました。
山田洋次監督は、俳優としての彼女を評価してこういっています。
「役者にとって一番難しい役は、実は普通の人。彼女はそれを演じられる稀有な女優。」
「下町の太陽」のヒット以来、一般的には、庶民派代表女優と言われている彼女。
でも、「駅 station」で見せた情念の女民子。
または、音楽家の夫と二人三脚のコンサート活動。
時には、志村けんとの、「男はつらいよ」コントなどなど。
その対極の活動とも、うまくバランスをとりながら、上手にキャリアを積み上げているという印象です。
その最新作は、冒頭にも述べた「男はつらいよ お帰り寅さん」ですが、1941年生まれの彼女はいまや78歳。後期高齢者です。
おいちゃんとおばちゃんは、すでに亡くなっています。
しかし、その彼女が、この映画では、なんの違和感もなく、さくらさんを、いつものように「普通」に演じてくれていました。
彼女自身が、倍賞千恵子としても同時に、いい歳の取り方をされていた証拠だと思います。
その、さくらさんの銅像が柴又の駅前の、寅さんの銅像の隣に建てられているそうです。
本書の「あとがき」によれば、その銅像の建設中、そのサンダル部分に、彼女自身がお願いして、「さくら」という文字を小さく書かせてもらったそうです。
そして、反対のサンダルには、これも小さく「ち」と。
もちろん、倍賞千恵子の「ち」でしょうが、この奥ゆかしさがなんともこの人らしい。
今度、柴又に行って、それを確かめてみようと思っています。
定年退職したらやりたいことのリストの中に、「男はつらいよ」の全作品を、製作順に全て見直すというのがあります。
そろそろ半年経ちますが、これはまだ手をつけていません。
今ちょっとその気になってきました。
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