「東宝変身人間シリーズ」第3作目。
2作目の「電送人間」も、プライム・ビデオのラインアップにはありましたが、先にこちらを見てしまいました。
個人的には、ハリウッド映画のクリーチャーものを踏襲した「美女と液体人間」の方が好みなのですが、本場ハリウッドでは、こちらの第3作目の方がヒットしたそうです。
となれば、おそらくは、日本舞踊のシーンをふんだんに盛り込んだジャパン・テイストが、アメリカで受けたという事でしょう。
本作がヒットしたので、ハリウッドからは、続編の企画が打診されたそうです。
そのタイトルが「フランケンシュタイン対ガス人間」。
これは、実現しませんでしたが、その企画が後に、「フランケンシュタイン対地底怪獣パラゴン」につながったとのこと。
この映画は、「サンダ対ガイラ」と共に、東宝特撮シリーズの中では僕のお気に入りです。
さて本作。
人体実験を受けた結果、自らの肉体をガス化させる能力を得てしまったガス人間。
演じるのは、土屋嘉男。
東宝特撮シリーズには欠かせない常連ですが、この映画では堂々の準主役。
その特殊能力に、次第に全能感を抱いていくガス人間。
その彼が、美しい日本舞踊の家元に恋心を抱きます。
彼女に貢ぐために、その能力を駆使して、凶行を重ねるガス人間の屈折した愛情。
それを知った家元は・・
この美しい家元を演じたのが、八千草薫。
当時29歳。
後のテレビ・ドラマでの良妻賢母の役の印象が強いのですが、若かりし頃の彼女はやはり美しい。
「宮本武蔵」では、可憐なイメージでしたが、この映画では、加えて清楚な色気があります。
特撮映画のヒロインといえば、恐怖に慄き絶叫するシーンがつきものですが、この映画での彼女は一切叫びません。
その意味でも、八千草薫は、東宝特撮映画の中にあっては、かなり異色のヒロイン。
特撮映画ではありますが、かなりメロドラマのウエイトが多い作品です。
後の「ウルトラQ」に通じるテイストは、本作にもかなり濃厚。
「ウルトラQ」を見たのは、僕が小学一年生の頃。
いまから思えば、たった1話30分の番組でしたが、その中にも、しっかりとドラマは、描かれていました。
今の変身モノと、明らかに一線を画すのは、明らかにそのドラマ性。
ちゃんと、大人の鑑賞にも耐えうるように作られていました。
当時の作り手は、子供たちを舐めていませんでしたね。
「ウルトラQ」の全26作品を、いまだに脳裏に焼き付けている世代としては、出演者たちが数多くダブっているという意味でも、いろいろと楽しめました。
この映画の音楽は、かなり「ウルトラQ」にも、流用されたそうです。
監督は、東宝特撮シリーズのエース本多猪四郎。
「ゴジラ」のような、スペクタクル映画から、こういうドラマ性のある映画まで、なんでもこなす職人監督。
特技監督は、もちろん円谷英二。
昭和時代の怪獣映画なら、おそらく漏らさず見ていますが、こういう渋い特撮ものとなると、かなり見逃しているものもありそうです。
中には、見たか見ていないか、定かでないものも。
いろいろな発見があって、古い映画を見るのもなかなか楽しいものです。
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