子供の頃になりたかった職業の一つが、映画館の看板描きでしたね。
映画館の息子というのが友達にいて、よく遊びに行っていました。
なにが楽しかったかといえば、公開予定作品のポスターを眺める事。
もちろん、怪獣映画のポスターは、ワクワクしましたが、一般映画のポスターもちゃんとチェック。
こちらは、ワクワクと言うよりも、ドキドキしてみてました。
昔は、映画館に観客を連れてくる役目を一手に担っていたのはポスターです。
とにかく、あの頃の映画のポスターは、気合が入ってました。
キャッチコピーも扇情的だし、使われるスチールも、明らかに本編より刺激的。
何気なくポスターを見た人の妄想を膨らませて、また映画館に足を運ばせようという色気がありあり。
「美女と液体人間」も、東宝映画としては、かなり扇情的なタイトルです。
いかにもB級テイストなタイトルですが、大いに当時の映画ファンの、スケベ心をくすぐったのではないでしょうか。
実は、この映画のポスターが、我が家には、なぜか貼ってあるんですね。
「あっ! 人間が溶ける。流れよる放射能液体の旋律!」
そして、ポスターの中心に、あられもない姿のダンサー。
たぶん、このポスターが脳裏のどこかに引っかかっていたのでしょう。
Amazon プライムの追加ラインナップの中に、この映画を見つけて、思わず見てしまいました。
映画は、1958年製作と言いますから、昭和33年の作品。
僕の生まれる1年前に作られた映画です。
東宝の特撮映画は、初めから子供向けだった訳ではありません。
僕が小学生になって、怪獣映画に夢中になった頃は、かなり子供向きのエンターテイメントになっていましたが、この頃の作品はまだかなり一般向け。
特に、本作を含む「東宝変身人間シリーズ」は、特撮映画ではありますが、かなりアダルトな趣き。
僕の生まれる前に作られた「ゴジラ」や「空の大怪獣ラドン」「大怪獣バラン」などのリアルタイムでなかった怪獣映画は、後に遡ってチェックしました。
けれど、この映画のような、怪獣の出ない特撮ものは、案外見逃していたものが多いですね。
もちろん、この映画も、今回が初見。
今からもう60年も前の映画ですから、今の特撮映画と比べて、その特撮技術をあーだこーだというつもりはありません。
それは、野暮というもの。
やはり、昔の映画を楽しむには、それなりの楽しみ方があります。
例えば、これ。
このカットは、セットではなくて、もちろんロケ撮影。
新富町と、電信柱に書いてありますから、これは60年前の東京都中央区新富町界隈のカラー映像ですね。
おそらく、入船橋の交差点の近くです。
郵便局員らしき人が載っているのがラビットスクーターですよ。
これは、懐かしい。
僕は、ダウンタウン東京都大田区大森育ちですが、子供の頃はよく見かけました。
映画は、ちゃんと時代も切り取ってくれています。
それからこれ。
警察の取調室のデスク。
刑事の吸っているタバコが「いこい」。
これも懐かしい。
これ、うちに父親が吸っていたタバコでした。
我が家系は、みんなヘビースモーカー。
母親が、「ひびき」。途中から「エコー」。
祖父が「神聖」。祖母が「わかば」
子供だった僕は、これを覚えさせられて、よくお使いに行かされました。
そのお釣りが、オダ賃でしたね。
さて、この映画のヒロインは、白川由美。
いやあ、綺麗でした。
今見直しても惚れ惚れ。
あの頃の女優としては、スタイルも抜群。
彼女が、後に結婚したのは、日活の二谷英明。
一人娘が、二谷友里恵。郷ひろみの元奥様です。
あれ?
待てよ。
あの頃の日活は、スター同士のカップルが、たくさんいました。
石原裕次郎と北原三枝。
長門裕之と南田洋子。
藤竜也と芦川いずみ。
でも、白川由美は、東宝の専属俳優でしたね。
たぶん、二人の映画での共演はなかったはず。
果て、どこでお知り合いに?
まあ、そんなことを思い巡らすのも、またクラシック映画の楽しみ方ということで。
この頃の映画ですから、映画はコンパクトに87分。
僕ら世代のビッグアイコンである「ウルトラQ」をカラーにして、大人向けに脚色したスペシャル版と言った趣きです。
相手役も、佐原健二ですから、なおさら。
ラストのクライマックスは、液体人間が逃げ込んだ地下水道。
この辺りは、「第三の男」を意識したでしょうか。
液体人間が、原水爆実験による放射能の影響による突然変異という設定は、この頃の特撮映画の定番でした。
懐かしのガイガーカウンターも登場します。
このシリーズ3作。
どれも未見ですが、やはり特撮映画マニアとしては、やはりすべて見ておく必要がありそう。
アメリカのゾンビ・ドラマ「ウォーキング・デッド」も見ましたが、なぜかオジサンには、このノスタルジー溢れる昭和のクラシック・ホラー映画の方が楽しめるんだよなあ。
というわけで、白川由美が、お気に入り女優のランクを急上昇です。
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