007 ゴールデンアイ
さて、前作「消されたライセンス」から、6年のインターバルを置いて製作された007シリーズ第17作目。
1995年の作品です。
この間は、権利の問題など、色々とスッタモンダがあって、映画が作れなかったようです。
世の中も色々と様変わりした時期ですね。
何が変わったか。
なんといっても、一番大きな変化は、ソビエト連邦の崩壊。
これは、スパイ映画にとっては、一大事です。
これまでのスパイ映画は、基本として東西冷戦がベースにあって物語が構築されていました。
いわゆる西側であるイギリス諜報局が、最もマークしなければいけなかった相手がソビエト連邦で、その相手が、時代の荒波に揉まれて、突然いなくなってしまったわけです。
原作者のイアン・フレミングも、これは予期していなかったでしょう。
これによって、イギリス諜報局MI6の立ち位置も微妙に変化せざるを得ません。
この後のスパイ達は、どこを相手に、何をするべきなのか。
007シリーズを筆頭とするスパイ映画も、新たなるフェーズに突入というわけです。
ジェームズ・ボンド役に5代目のピアーズ・ブロスナンを迎えて、007シリーズもこのタイミングで心機一転。
34年も続いてきたシリーズですので、今後の展開を踏まえて、ここで大幅なリブートを敢行しましたね。
さあ、スタッフもキャストも大幅に入れ替わって、「ニュー・ボンド」の始動です。
まず、本作よりボンドの上司Mを演じるのが、女性のジュディ・デンチ。
あのマーガレット・サッチャー首相を生んだ国イギリスですから、これはいかにもありそう。
ミス・マニーペニーも、サマンサ・ボンドに。
前作と前々作で、ミス・マニーペニーを演じたキャロライン・ブリスは、個人的には結構お気に入りだったのですが、残念ながらここで降板です。
007シリーズの代名詞でもあった、メインタイトルのデザイナー、モーリス・ビンダーも1991年に死去したため、本作より担当したのがダニエル・クラインマン。
音楽担当も、ジョン・バリーからエリック・サテに。
新顔が目白押しの本作にあって、唯一気を吐いたオリジナル・キャストが、Qを演じたデズモンド・リューエン。
この時すでに、79歳の彼が登場したときには、テレビの前で、思わず拍手を送ってしまいました。
6年前に製作された前作から続けて見ると、鉄板のお約束は踏襲しつつ、細かいテイストは、かなり変わったことはわかりますね。
監督も、5作連続務めた、ジョン・グレンから、マーティン・キャンベルへ。
個人的なことで言いますと、主題歌ですね。
多感な頃に見ていた第8作目までの主題歌は、今でも全て歌えます。
(ちょくちょく、カラオケ・アプリでも歌ってます)
第9作からは、歌うのはちと怪しくなって来ますが、第16作の「Lisence to kill」までは、とりあえず聞き覚えはあるというところ。
しかし、本作の主題歌は、大御所ティナ・ターナーが歌っているにもかかわらず、恥ずかしながら、まるで聞き覚えのない曲でした。
思えば、この時期はサラリーマン生活の中でも、一番忙しかった頃です。
映画や音楽を楽しむゆとりがなかった時期で、それも当然かもしれません。
さて、この時期のもう一つの世界的変化としては、Windows 95 の登場によって、パソコン文化が、一気に世界中に浸透したこと。
僕が、パソコンセットを始めて購入したのが、この前年でしたのでこれはよく覚えています。
これは、本作にもきちんと反映されておりました。
前作までは、Qの事務所にも、敵の基地にも、パソコンの姿はまだ見られませんでしたが、本作にはこれがズラリ。
当時、僕がボーナスをはたいて揃えたIBMのディスクトップと同じ形のパソコンが登場してくると、やはりニヤリとしてしまいます。
最近の映画に登場するパソコンは、圧倒的にApple のロゴマーク入りが多いのですが、この頃はまだ主流はIBMでしたね。
本作のボンド・ガールも、ロシア(ソ連ではなく)の秘密宇宙基地の2級ブログラマーという説定。
演じているのは、イザベラ・スコルプコというポーランド系の美人女優。
ちゃんと、ブラインドタッチは習得していました。
敵側の手引きをするパソコンオタク系プログラマーは、のちの映画に登場する同じタイプの役のテンプレイトになりますね。
さて、物語はソ連崩壊後の、ロシアからスタート。
ロシアの犯罪組織ヤヌスのメンバーとなっている、元ソ連の将軍ウルモフは、部下のゼニアと一緒に、ボリスの手引きで宇宙秘密基地に侵入し、職員を皆殺しにして、ゴールデンアイという秘密兵器を奪取。
そして、このゴールデン・アイで、この基地自身を破壊します。
この惨事から奇跡的に脱出した女性職員がナターリャ・シミョノバ。
本作のボンド・ガールです。
この異変を察知したMI6は、事件の背後にヤヌスがいると睨んで、ジェームズ・ボンドをロシアに向かわせます。
ナターリャの生存も確認していたボンドは、彼女を発見して、接近しますが、事件の発覚を恐れたウルモフによって連れ去られてしまいます。
彼女を追うボンドは、ロシアの戦車を奪取して、サンクトペテルブルグ市内を、カーチェイスならぬタンクチェイス。
よくもよその国の戦車を奪って、いきなり操縦できるもんだとは思いますが、まあこれはお約束なので、野暮なことはいいっこなし。
市内の建物を派手に破壊していきますが、これは当然セットであると分かっていても、マジかという感じでした。
決戦の舞台は、ヤヌスの軍用列車に移り、守備よくウルモフを仕留め、ナターリャを奪回したボンド。
しかし、ヤヌスの首領が、MI6の同僚で、任務中に自分の目の前で殺されたはずの006と知って動揺するボンド。
ゴールデンアイを起動するために必要なものが巨大なパラボラ・アンテナ。
ナターリャのハッキングで、ヤヌスのパラボラ・アンテナが、キューバにあることを掴んだボンドは、ナターリャと共にキューバへ。
さて、このキューバで二人を案内するCIAのジョン・ウェイドが、前作「消されたライセンス」で、敵側の武器商人を演じたジョー・ドン・ベイカーでニヤリ。
以前にも、殺し屋ジョーズを演じたリチャード・キールや、ペッパー保安官を演じたクリフトン・ジェームズの連続出演はありましたが、今回は悪役から味方へと、違う人物としての連続出演。
(個人的には、70年代に見た「突破口」や「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」で知っている顔でした)
さて、かつての同僚が犯罪組織のボスになっていることがショックなボンド。
キューバの海岸で、海を見ながら、黄昏てしまいます。
もちろん、そんなボンドを慰め、二人は体を寄せ合い・・
まあ、そういったお決まりの展開なのですが、この「一人海を見つめ黄昏れるジェームズ・ボンド」というシーンがちょっと意外でした。
クールで、敵を殺して洒落た捨て台詞を吐くというドライなボンドは、散々見てきましたが、多分こんなセンチメンタルなボンドを見たのは、これが初めてだったかもしれません。
そして、池の中に潜むパラボラ・アンテナを発見した二人は、ヤヌスのゴールデンアイによるロンドン攻撃を防ぐべく、決戦の敵基地へ乗り込みます。
さあ、ピアーズ・ブロスナン演じるジェームズ・ボンドですが、個人的にはかなり高得点です。
ハードなティモシー・ダルトンと、お茶目なロジャー・ムーアを足して二で割ったようなキャラのバランスが、僕のイメージするジェームズ・ボンドにかなり寄っています。
初代のショーン・コネリーに近い、安定感とフィット感がありましたね。
そして、この後に登場する、ダニエル・クレイグも含めて、歴代のボンドの中では、文句なしのベスト・イケメン。
身のこなしも、非常にスタイリッシュで、絵になるカッコよさ。
前作で少々落ち込んだ興行収入も、本作ではバッチリと挽回したようですので、この後の3作がちょっと楽しみです。
そうそう、本作で久しぶりに見たのが、ジェームズ・ボンドの胸毛。
いやあ、お懐かしい。
お次は、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」!
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