007 ダイ・アナザー・デイ
さて、いよいよ007シリーズも21世紀に突入。
シリーズ20作目で、40周年記念作となるのが本作。
ピアーズ・ブロスナンのジェームズ・ボンドとしては、4作目にしてこれが最終。
節目の007シリーズということで、これまでの作品にオマージュを捧げた小ネタがふんだんにちりばめられていて、ここまですべての作品を見て来たファンとしては、なにかと楽しい作品でした。
朝鮮の非武装地帯から始まる物語は、この映画の公開と同じ頃、ジョージ・ブッシュ大統領に「悪の枢軸」と名指しでワルモノ扱いされた北朝鮮に、ボンドがサーフィンで乗り込むところから始まります。
いままでの展開ですと、ここでボンドがひと暴れしてから、かっこよくメインタイトルということになりますが、本作では、敵側の若き首領ムーン大佐を殺しはしたものの、ボンドも敵に捕らえられてしまいます。
そして、朝鮮側の拷問を受ける中でのメイン・タイトル。
珍しい流れです。
主題歌の「ダイ・アナザー・デイ」を歌うのはマドンナ。
ちょっと僕好みの曲ではありませんでしたが、彼女のPVも、映画に合わせて、彼女が拷問を受けながら歌うという内容でしたね。
DVDの特典についていました。
「ユア・アイズ・オンリー」で、主題歌を歌ったシーナ・イーストンが、歌手としては初めて、メイン・タイトルに登場しましたが、マドンナはメイン・タイトルではなくて、ワンシーンだけ本編の方に登場。
これで一応、マドンナもボンド・ガールに名を連ねることになりました。
彼女が、作詞作曲による主題歌ですが、残念ながら007テイストのかけらもないアレンジで、僕としてはガッカリ。
せっかく007の主題歌を担当するんなら、少しは、アレンジを007テイストにしてほしかったというのは、オジサンの個人的好みの感想。
さて、メイン・タイトルの後もちょっとビックリ。
朝鮮側に捕らえられ、拷問を受けるボンドの14カ月後。
なんと、007が、髪が伸び放題、髭面のロビンソン・クルーソーみたいな姿で、尚も拷問を受けています。
敵に捕らえられる007のピンチは、過去に何度も見てきましたが、こんな姿になり果てるジェームズ・ボンドは初めて見ました。
捕虜交換という形で救い出されるジェームズ・ボンド。
しかし、監禁されている間に、敵側に機密情報をもらした嫌疑をかけられ、00ナンバーを剥奪されてしまいます。
名誉挽回と、プライドにかけて、殺したムーン大佐の側近だったザオを追って、ボンドはキューバへ。
ここで、アメリカNSAが派遣した諜報員ジンクスが登場。
演じるのは、ハリ・ベリー。
アフリカ系の黒人女性としては、はじめてメインのボンド・ガールを演じることになります。
いやあ、彼女がなかなかカッコいい。
悪役ということなら、「美しき獲物たち」に登場したグレイス・ジョーンズが黒人でしたがが、かなり突き抜けたキャラでしたね。
しかし、ハル・ベリーは、かなりのの正統派。
彼女が、同じく黒人女性としては初めてアカデミー賞主演女優賞を獲得した「チョコレート」を見ていますが、こちらは本作のような派手さはなし。
社会の底辺で生きるシングル・マザーの役をしっかりと演じていました。
その彼女が、その翌年に出演したのがこの「ダイ・アナザー・デイ」。
「チョコレート」とは対極にあるような役ですね。
Wiki によれば、本様撮影中に、アカデミー賞の会場に出かけて行って、オスカーを受け取って、また現場に戻ってきたといいますから、こんなところもちょっとかっこいい。
前作の、ソフィ・マルソーもそうでしたが、いよいよこのシリーズも、世界のトップ女優をボンド・ガールに迎えるようになってきました。
そんなわけですから、本作のハル・ベイリーは、いままでのお飾り的存在のボンド・ガールではなく、しっかりと主役とタイマンを張った、セクシーで、たくましいボンド・ガールを演じていました。
そういえば、キューバの海岸での彼女の海からの登場シーンは、一作目のウルスラ・アンドレスが演じだハニー・ライダーの登場シーンを思い出させてニヤリ。
ザオは、このキューバで、DNAを操作することで、東洋人からドイツ人へと人種変換のオペレーションを受けていました。
ボンドとジンクスが、この治療センターを破壊したことで、オペレーションは未遂のままザオは逃走。
そして、ここから登場するのが、ダイヤモンドで財を築いたグスタフという青年富豪。
実はこの男が、朝鮮でボンドに殺されたムーン大佐だったというからややこしい。
ザオ以前に、すでにムーン大佐が人種変換のオペレーションを受けていたというわけです。
そして、グスタフの野望は、宇宙空間から、ダイヤモンドを利用した破壊レーザービームで地球を攻撃できる宇宙衛星イカルスで、世界を征服しようというもの。
設定も、段々と21世紀になってきてますね。
ん? ダイヤモンド? レーザー?
そうくると、やはり7作目の「ダイヤモンドは永遠に」にあった設定が、頭に浮かびます。
あれは自分の小遣いで初めてみた洋画でしたから、はっきり覚えています。
ついでに憶えているうちに過去作品へのオマージュを言っておくと、キューバに来る前の中国のホテルで、中国の諜報員がしかけたハニー・トラップで、ボンドとのベッドシーンを鏡の後ろから撮影しようとしていたシーンは、2作目の「ロシアより愛をこめて」から。
レーザー光線の中での、処刑するというシーンは、「ゴールド・フィンガー」からでしょうか。
新しい顔になったQの工房にあった秘密兵器の中に、「サンダーボール作戦」の冒頭で、ボンドの脱出シーンに出てきた一人乗りジェットパックがあってニヤリ。
「ロシアより愛をこめて」で、メイドに扮した、女スパイが使っていた、ナイフが飛び出る靴もありました。
懐かしい。
音楽も懐かしいのがありました。
北朝鮮の風景が映るシーンでBGM使われていたのは、日本を舞台にした「007は二度死ぬ」のサウンド・トラックにあった「山々の日没」。
これを録音したカセットを、しょっちゅう聞いていたので、ジョン・バリーのこのメロディはよく覚えていました。
こんな小ネタは、僕が見逃しているものも含めて、本作にはまだまだありそう。
映画ファンとしては、ニヤリとさせてくれる演出はたまりません。
さて、決戦の舞台は、グスタフの基地のあるアイスランド。
007シリーズのカメラが、初めて入ったところです。
氷に囲まれたグスタフの秘密基地で活躍するボンドの実密兵器の極めつけは、やはりなんといっても透明ボンドカー。
光学迷彩装置により、周囲の景色と同化して透明になるという仕掛けのアストン・マーティン。
ええ! SFではないのに、こんなことできるの!
遠隔操作機能や自動追尾散弾砲などの、おなじみのしかけも満載。
ちょうど、ロジャー・ムーア時代の「ムーンレイカー」が、007が宇宙にまで飛び出してしまって、スパイ映画としては行き過ぎだろうと思ったものですが、本作もややその感じが・・
007映画は、あくまでスパイ映画です。
未来志向が行き過ぎるとSFになってしまいますので、その辺りの加減が難しいところ。
まあ、映画ですから、面白ければ文句はありませんが。
未来志向といえば、ミス・マニーペニーやQなどのMI6のメンバーが殺されている現場で、ボンドが侵入者を追う・・えっ!と思いきや、これが00ナンバーを剥奪されていたボンドの復帰テストで、3DのVRヘッドセットの映像だったというシーンがありましたが、いかにもイギリスらしくてニヤリ。
ラストでは、ミス・マニーペニーがこれをかぶって・・
というわけで、ション・コネリーしか知らなかった、かつての007ファンが、ロジャー・ムーアのボンドから、製作年順に鑑賞を始めて、ピアーズ・ブロスナン4部作まで、追っかけてきました。
やはり、このシリーズは、男のエンターテイメントの王道だと思っています。
もちろん、女性ファンも多くいるでしょうが、基本的には、男の妄想を派手に実現してくれる映画。
申し訳ないですが、女性と一緒に観るのなら、違う映画を選ぶことにします。
さて、次作からは、いよいよダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドです。
いままでの、007シリーズの法則として、仕掛けや設定でいくところまでいったら、その次の作品は、原点回帰の肉体アクションに戻ることが多いのですが、さてどうでしょうか。
007 will return 「カジノ・ロワイヤル」!
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