007 ワールド・イズ・ノット・イナフ
1999年製作の、シリーズ第19作。
ピアーズ・ブロスナンとしては、3作目となる007シリーズ。
なんといっても本作の目玉は、この頃にはすでに大女優の風格も漂っていたソフィ・マルソーがキャスティングされていること。
ここまでのボンド映画の中で、ボンド・ガールに、ここまでのビッグ・ネームを起用したのは初め手ではないでしょうか。
今までのボンド・ガールの多くは、007シリーズ出演が、たいていキャリアの頂点であることが多かったですが、彼女の場合はちょっと違います。
彼女の出演作では、デビュー作の「ラ・ブーム」も見ていますが、その後は、アイドル女優扱いを潔しとせず、かなり際どい映画で、バンバンとヌードも辞さない活躍をしてくれているので、スケベ映画を追いかけてきた映画ファンとしても、この人への思い入れはひとしお。代表作も目白押し。
1966年生まれの彼女は、この時女優として脂の乗り切った33歳。
彼女が演じるのは、石油王ロバート・キングの娘エレクトラ。
テロリストのレナードに誘拐れた過去を持ち、父親が爆殺されたことから、MI6に警護の依頼をしてきます。
しかし、そのテロリストと共謀して、石油の利権を手中に収めようとするのが彼女の狙い。
実は、誘拐された時には、彼女は処女で、自分を女にした敵のテロリスト・レナードと愛し合うようになり、母の遺産である石油資源を奪い、自分を見捨てた父親の暗殺にも加担するというなかなかの難役。
メインのボンド・ガールが、完全にヒールという設定は、シリーズでは初めてではないでしょうか。
しかも、最後にはボンドの手によって殺されてしまうというのもビックリ。
ソフィ・マルソーを迎えるにあたり、キャラクターはかなり練り込んであります。。
今まで、ボンド・ガールなら、あまり演技力を求められることはありませんでしたが、本作には、彼女の演技力は必要だったかもしれません。
そういうわけですから、本作で案外儲け役だったのは、もう一人のボンド・ガールを演じたのは、デニス・リチャーズ。
若くて、ピチピチで、グラマーな科学者クリスマス(いつもながら凄い役名)という、いかにも絵に描いたボンド・ガールというのが彼女の役どころ。
なんといっても、本作では、本格的悪役のエレクトラが、ボンドに殺されてしまうという展開なので、クリスマスとのロマンスも盛り上げておかないと、ラストのお決まりのラブシーンの相手がいないことになってしまいます。
ボンド・ガールとしてソフィ・マルソーを起用する上での保険として、デニス・リチャーズには、いつも通りのボンド・ガールを演じてもらったということでしょう。
しかしついに、僕よりもひと周りも年下のボンド・ガールが登場してきましたね。
初代のボンド・ガールのウルスラ・アンドレスは、すでに84歳。
歴代のボンド・ガールは、僕にとっては年上の大人の女性のイメージでしたが、いよいよこの後は、自分の娘みたいなボンド・ガールが登場してくることになるのでしょう。
それは覚悟しておきましょう。
そういえば、初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーも、つい先日亡くなったばかり。
本作までに、37年の歴史を積み上げてきた007シリーズです。
やはり、時の流れは嫌でも感じてしまいます。
時の流れといえば、007シリーズで、初めてノート・パソコンが登場してきました。
エレクトラが、MI6本部との、通信で使用していました。
外付けのWEBカメラは見えなかったから、おそらくカメラ内蔵タイプ。
あの頃に、そんなノートパソコンありましたっけ?
Mac ではありませんでした。どこのメーカーだろう。
ソ連の崩壊後は、アメリカ一人勝ちの世界情勢で、なかなかスパイ映画のストーリー構成も難しくなってくるところ。
このシリーズも、色々と目新しい展開を工夫してきましたが、今回は、エレクトラの御指名で、いつもはMI6の本部で指揮を取るMが、現場へ出向くという展開がありました。
やはり、ジュデイ・デンチというアカデミー賞俳優をキャスティングしてるわけですから、彼女の出番は、増やさないと勿体無い。
反対に、007シリーズの顔だったQ役のデズモンド・リューエリンの登場シーンは、明らかに本作が最後という演出でしたね。
Wiki してみたら、一応は彼からの申し出で、本作での降板が決まったらしいのですが、撮影後に、自動車事故で亡くなっているので、実際に本作が彼の遺作になってしまったそうです。
映画の中では、代わりに、R(ボンド云く)という秘密兵器担当者が、紹介されていました。
ラストで、MI6の本部モニターに、ボンドとクリスマスの、ラブシーンが映りかけると、パチッとパソコンのキイを叩いて画面をオフに。
「2000年問題かな?」
なんて、とぼけていました。
て、タイトルですが、ボンドとエレクトラで、こんなセリフのやりとりがありました。
エレクトラ「あなたに、この世界をあげようと思ったのに。」
ボンド「いや、世界だけでは不十分だよ。」
見終わってから、Wiki していたら、出演者に森田美穂という名前を見つけました。
えーっと思って、確認したら、カジノのシーンでチラリと写っていました。
そういえば、「007は二度死ぬ」で、空を見上げる海女の役でワンカットだけ映っていた松岡きっこが、「11PM」で、自分もボンド・ガールだと言っていたのを思い出しました。
あれで、どれくらいのギャラをもらえるのだろうか。ちょっと興味あり。
さて、次のジェームズ・ボンドのミッションは、「007 ダイ・アナザー・デイ」です!
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