007 リビング・デイライツ
さて、再び007シリーズに戻って来ました。
ロジャー・ムーア主演の7作を製作年順に見てきましたが、本作はいよいよシリーズ4人目のジェームズ・ボンドとして登場するティモシー・ダルトンの初主演作。
シリーズとしても、25周年記念作品で、第15作目。
こういう長く続くシリーズになると、マンネリで弛まないように、製作陣としても気合の入れどころの作品というのがいくつかあります。
ロジャー・ムーアの7本の中では、「私を愛したスパイ」などが明らかに気合が入っていましたが、本作もそんな位置付けかもしれません。
気合を入れるということは、製作費をかけるということ。
前任ボンドから若返ること20歳のヤング・ボンドのティモシー・ダルトンは、ロジャー・ムーアのソフト路線を一転して、コメディなしのハードボイルド路線。
本作は、ロジャー・ムーアの15年に渡る長期勤務で、ほぼ定着していたボンドのイメージをガラリと変えてきましたので、これに対する保険の意味で、製作費は、存分にかけたということでしょう。
ダルトンのキャリアを追ってみると映画デビュー作「冬のライオン」と「アガサ愛の失踪事件」は見ていたはずですが、残念ながら彼の記憶はなし。
事実上、本作のジェームズ・ボンド役で、初めてお目にかかります。
舞台は、オープニングの演習シーンがジブラルタル。
そして、ソ連の将軍コスコフを亡命させるというミッションを展開する舞台がベルリンの壁崩壊以前で揺れている東側のチェコスロバキア。
そのコスコフ恋人で、チェリストであるカーラに接近したボンドが、彼女連れて逃走劇を展開するのが冬のアルプス。
そして、舞台は西側のウィーンから、その背後にいるKGBの黒幕プーシキンを追ってモロッコのタンジールへ。
そして、決戦の舞台は、ソ連に蹂躙されて紛争真っ盛りのアフガニスタン。
脱出した先がパキスタン。
当時のアフガンは、非常に危ないところなので、本当に現地ロケかなと思ってWiki を調べましたが、特にこれに関する記述はなかったので、多分現地ロケだったのでしょう。
いずれにしても、映画の舞台も当時の国際情勢を反映した地球規模で、タイムリーな場所ばかり。
ニュー・ボンドのキャラクターに合わせて、かなりハードな選出になっており、気合は十分感じられました。
さて、本作のボンド・ガールは、マリアム・ダボ。
スレンダーな美人で、従来のボンド・ガールのイメージとはかなり違うキャラを演じていました。
従来のボンド・ガールであれば、過剰な肉体露出ファッションで、お色気ムンムンを楽しませてくれるところなのですが、本作の彼女はちょっと違いました。
本編中にセミヌードもなければ、水着シーンすらなし。
肌の露出は皆無でした。
こんなボンド・ガールは、彼女が初めてではないでしょうか。
チェリストという役柄に合わせて、ボンド・ガールとしてはかなり奥ゆかしい、繊細なキャラ設定になっていました。
少なくとも、今まで見てきたボンド・ガールで、「まだ会って二日だからダメよ」と言って、ボンドのキスを拒んだのは彼女が初めて。
(まだ、この後のボンドガールは見ていませんので、あくまで本作時点で)
ついでに言うと、ボンドの前で涙を流したボンド・ガールも、彼女が初めてだったかも。
だから、その彼女が、ボンドを愛することで、一気に情熱的に弾けるアフガニスタンのシークエンスは、ちょっと引き込まれました。
危機的状況を共有した男女は、熱烈な恋愛感情も共有するという、「吊橋効果」論は、007映画での、ボンド・ガール達とのラブシーンの根底に流れる肝ですが、それ以上の恋愛感情を表現できたボンド・ガールとしては、この人は特筆されていい気がします。
色々な意味で、プロフェッショナルで、エキセントリックな女性が多いボンドガール達の中にあって、極めて普通の女性に近いボンド・ガールを演じたのが、マリアム・ダボでした。
ちなみに、今回のメイン・ボンド・ガールのキャラの穴埋めをするかように、超マッチョなワンポイント・ボンドガールも登場。
ボンドの脱出をアシストするために、監視係に色仕掛けで迫るのですが、その迫り方が圧巻。
こんなシーンも、初めて見ました。
まあこれは、見てのお楽しみということで。
(オジサンはこういう方が好きです)
スケベオヤジですから、もう一言申しあげておきますと、プーシキン将軍の妻(愛人?)を演じた女優の横姿ヌードがチラリとありましたが、ここまでの露出もシリーズでは初めてだったかも。
初めてといえば、ミス・マニーペニー。
これまでの14作は、全てロイス・マクスウェルが演じてきた役ですが、この役も年齢で言えば、34歳若返り。
演じたのは、キャロライン・ブリス。
さすがに、ファーストシーンは、前任者のイメージが強すぎて、違和感ありまくりでしたが、ボンドに対する淡い恋心も巧みに演じた2回目以降の登場シーンでは、こちらの受け入れ体制も整って、すぐに合格印をポン。
オリジナル・メンバーとしては、ただ一人残っていたQ役のデズモンド・リューエンは、本作撮影当時73歳で、まだ頑張ってくれておりました。
老齢の前任ボンドに対抗するには、やはり、スタントマンを極力使わない体を張ったアクションを強調したいところ。
この辺りは、ティモシー・ダルトンも、覚悟を持って撮影に臨んだことは伺えます。
特に貨物輸送機内で繰り広げられる空中格闘シーン。
ワイヤーでガッチリ安全を確保して、撮影後にCGで、ワイヤーを消すなんていう技術は、まだこの当時にはなかったはずですから、これはやっている方も命懸け。
迫力あるシーンでした。
出演作が、本作と次回作の二本だけとあって、歴代のジェームズ・ボンドの中では、一作出演のみのジョージ・レーゼンビーに次いで、認知度の低いボンドに甘んじているティモシー・ダルトンですが、なかなかどうして、本作を見る限りは健闘しています。
次回作は、「007 消されたライセンス」
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