さて、和製キングコング映画を見たので、本家本元を見たくなりました。
映画史を語る上でも欠かせない元祖特撮怪獣映画です。
「キングコング」は、1933年の作品ですから、この頃はまだ「怪獣」という言葉はありませんでした。「モンスター映画」かな。
とにかく特撮映画史上では、エポック・メイキングな作品。
あまりに有名な映画ですので、本作は過去に見ているとばかり思っていましたが、どうやらそれは大きな勘違い。
今までに読んだ映画参考文献で、およそのストーリーは把握していましたし、アニメや、類似作品などもたくさん見ているので、頭の中で勝手に映画が合成され、すっかり見た気になっていたのでしょう。
映画の本はよく読みますので、知識ばかり先行しているらしく、まだまだ、未見の名作はたくさんありそうです。
日本の特撮映画は、人間が着ぐるみを着て怪獣を演じるミニュア撮影が主流ですが、アメリカでは、ストップモーション撮影が伝統です。
コングの動きを、一コマ一コマ撮影していく、気が遠くになるような撮影方法ですが、今回改めて見てみますと、コングの表情がかなり巧みに表現されていて驚きます。
髑髏島におけるコングと恐竜たちの決闘も、思ったよりふんだんに描かれていました。
ステゴザウルス、ティラノザウルス、大ウミヘビ、翼竜などなど。
先日見た東宝版「キングコングの逆襲」でも、ティラノザウルス、大ウミヘビの決闘シーンはオマージュされていました。
1世紀近く前の作品であることを踏まえても、特撮を担当したウィリス・オブライエンの気合と「グッド・ジョブ」が光ります。
結構ショックだったのは、怒り狂ったコングが、人間を鷲掴みにしては、口に咥えて咬み殺すシーンがかなり多かったこと。
当時の観客にとっては、あのシーンは結構トラウマだったかもしれません。
東宝特撮シリーズでは、モンスターが人間を食べるというのは案外ありそうでなかったシーン。
唯一記憶に残っているのは、「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」の中で、海の怪獣ガイラが、人間を噛み殺して、その衣服をペッと履くシーンがあったことぐらいでしょうか。
かと思えば、手の中で悲鳴をあげるヒロインを、指でいじりながら洋服を剥ぎ、その匂いを嗅ぐなんていう際どいシーンもあり、あちらのオリジナル・コングは、日本のキングコングのように、完全に子供向けというわけではなかったようです。
ラストでコングは、当時の最新鋭兵器であった複葉機からの機銃操作で、エンパイアステイト・ビルから落下して絶命しますが、コングを髑髏島から連れて来た興行師カール・デナムがつぶやく一言がこの名台詞。
”Beauty killed the beast !!”(美女が野獣を殺したのだ!)
自分が連れてきたモンスターで、ニューヨークを破壊しておいて、呑気なことを言っている場合かという気もしますが、この続編では、その損害賠償をするための一攫千金にかけて、また「キングコングの息子」を探しにいくというストーリーになっています。
残念ながら、こちらは完全にコケたようですが。
映画の冒頭でも、「美女と野獣」に関するナレーションがありますが、「美女」と「野獣」という、映画に観客を呼べる二大要素のハイブリットで、本作のヒットを狙ったのは伺えます。
しかし、それならもう少し、ヒロインのアン・ダロウを演じたフェイ・レイに、キングコングに対する「情」みたいなものを演じさせて欲しかったなあというのが、公開から90年後に初見した怪獣オタクオヤジの正直な感想。
せっかく世紀の大傑作に主演しているのに、彼女はやたらと悲鳴をあげている印象しかなかったのが残念でした。
そんな演出にしたのは、アン(タ)・ダロウ。
失礼。
川越市立中央図書館から、借りてきたこの本に、キングコング封切り当時のポスターが載っていましたので紹介しておきます。
この頃のポスターは、アナログな手書き感が魅力的。作り手の気合が入っていて好きです。
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