アニー・ホール
1977年度のアカデミー作品賞に輝いたのが本作。
その他、主要4部門も獲得していますので、押しも押されぬ名作ですが、これを今まで見ていませんでした。
主演のダイアン・キートンは、もちろん「ゴッドファザー」で知り、かなりキワドイ女教師を演じた「ミスター・グッドバーを探して」は見ていましたが、本作は未見。
彼女は、本作の演技で、アカデミー主演女優賞を獲得しています。
ウッディ・アレンも、本作でアカデミー監督賞を獲得していますが、「そんなもん。いらないよ」とばかりに、授賞式には出席せず、仲間とジャムっていたという有名な話。
彼が脚本主演をした「ボギー!俺も男だ」は、「カサブランカ」ファンとしては、外せない映画でしたので、覚えていますが、その他の彼の作品としては、「マンハッタン」と「カイロの紫のバラ」くらいしか見ていません。
まだまだ、彼の名作には、未見のものも多いので、ボチボチと見て参りましょう。
本作は、ウッディ・アレンの代表作と言ってもいい作品。
彼のコメディアンとしてのセンスがとにかく光ります。
ニューヨークを愛するアレンの都会的なセンスと、ラルフ・ローレンを思い切り自己流に着こなすダイアン・キートンのファッション・センスが、この都会に生きる大人の男女の恋模様の機微を、とても、知的でお洒落にしています。
「映画」という媒体で、「悪ふざけ」にならないギリギリのところで、とことん遊びまくるウッディ・アレン・タッチも、なんとも愉快で楽しい。
「第四の壁」を突如取っ払って、カメラに向かってウッディ・アレン演じるアルビー・シンガーが突然喋り出すシーン。
これ「古畑任三郎」でもやってましたね。
子供の頃の、アルビーの家へ、大人のアルビーと、アニーとロブが、普通の顔をして訪ねていくシーン。
イングマル・ベルイマン監督の「野いちご」に、こんなシーンがあったかも。
別れ話で混乱したアルビーが、道ゆく人に次々と語りかけて行くシーン。
テラスで会話をするアニーとアルビーの会話に、その会話とは裏腹なアルビーの本音が字幕で入るシーンにはニヤリ。
映画館で二人が並んでいるシーンでは、後ろで唾を飛ばして映画の蘊蓄を語る男に文句をつけたアルビーが、その男の話の中に出てきた人物を、突如その場に登場させて、男にダメ出しをさせるシーン。
そんなのありかと思いながらも、ニンマリでした。
映画という虚構そのものを「笑い」にしていくウッディ・アレンのギャグが冴え渡ります。
「遊び感覚」とはちょっと違いますが、今では誰もが知っている俳優が、チョイ役で出ているのも楽しめました。
ポール・サイモンは、レコード・プロデューサー役。
クリストファー・ウォーケンは、自殺に取り憑かれているアニーの兄役。
パーティのシーンでは、ワンカットだけ、ジェフ・ゴールドブラムが出演していました。
あの顔はすぐにわかります。
「シャイニング」のシェリー・デュバルもわかりました。
分からなかったのが、映画館で並ぶシーンのエキストラの中にいたというシガニー・ウィーバー。
「エイリアン」で、ブレイクする2年前の彼女です。
「ハゲ」「チビ」「オタク」「神経質」という、情けなくもモテないキャラを、徹底的に笑い飛ばすウッディ・アレンの、自虐的ギャグ。
それでも、ダイアン・キートンのようなチャーミングな女性と「いい関係」になれるのは、(実際に二人は付き合っていました)、単に彼の知性の賜物。
「いい女」は、極上の知性に弱い。
同じように、モテ要素の少ない身としては、せめて読書でもして、知性を磨くことにいたしましょう。
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