おばあちゃんの家
2004年に作られた韓国映画です。
Amazon プライムの中で、見つけました。
個人的には、笠智衆の大ファンで、昔から「いい味」出している老人には目がない映画マニアでした。
北林谷栄、左卜全、高堂国典、原ひさ子などなど。
お気に入りは、素朴で、自然で、芝居っ気のない天然老人ですね。
反対に、大女優だった人がそのままお年を召してから演じるような役者老人はいけません。
演技をしているというよりも、人柄がそのまま出ているような「わかりやすい」老人が好みです。
本作出演のキム・ウルブンは、その意味では、文句なし。
それは、映画のサムネの写真を一眼見てわかりました。
撮映当時、彼女は77歳で、これが映画初出演。
演技経験全くなしの、完全な素人だったようです。
顔の皺から、手の荒れ具合、立ち振る舞いから、爪の先の土にいたるまでの、一切全てが「映画的に作られた演出」ではなく、実際の彼女そのままだったことが、この映画の成功につながっていましたね。
台本はありながら、まるでドキュメンタリーを見ているように、この映画が作られたことが、まずは本作が彼女ありきで作られたことを物語ります。
そういう意味では、この老婆を、字も読めず、口も聞けないという設定にしたことは大正解でした。
これにより、彼女に不要な演技を強いることなく、この映画に不可欠な、彼女のリアリズムを存分に引き出すことに成功していました。
寅さんシリーズなどを見ていても、そんな老人がたまに出てきて、こちらをニンマリとさせてくれますが、大抵は、山田監督が、地元の素人さんを上手にワンポイント使うというのがほとんど。
それが、本作では堂々主役として、89分の全編ほぼ出ずっぱりなのですから、「老人フェチ」としてはたまりませんでした。
撮映当時7歳の子役ユ・スンホも、CMに何本か出ていた程度のようでしたから、ほぼ素人同然。
この二人を使って、これだけ心に染み入る映画を作り上げたイ・ジャンヒョン監督の手腕は見事でした。(彼は脚本も担当)
しかも、どこをどう見ても、お金がかかっているようには見えません。
映画は、心ならずも田舎のおばあちゃんに預けられてしまった都会っ子の少年と、老人の交流を、ひたすら淡々と描くだけです。
その一つ一つの積み重ねが、じわりじわりとこちらの心に浸透してきて、最後には目頭がジーン。
映画は、実はこんなにシンプルでいいんだと、改めて思い知った映画でした。
主演のキム・ウルブンは、本年の四月に、95歳の天寿を全うされたとのこと。
1926年生まれの彼女は、生きていれば、わが母親と同じ年齢でした。
遅ればせながら、心よりご冥福をお祈りいたします。
감사합니다 (ありがとう!)
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