2022年あけましておめでとうございます。
今年最初に見る映画(?)は、絶対にこれにするということは、去年のうちから決めていました。
「ザ・ビートルズ:Get Back」。
1970年のビートルズ最後の映画「LET IT BE」のために撮影された膨大なアウトテイクを再編集したファンにとっては感涙物のドキュメントです。
定年退職後は、撮りためたDVDや、Amazon プラスを見て過ごせれば、それで十分で、映画鑑賞にお金はかけないぞと決めていましたが、やはりこれだけは別ですね。
このプロジェクト発足当時は、通常の劇場公開用の作品にするべく、「ロード・オブ・ザ・リング」などでアカデミー賞も受賞している、コテコテの現役大物監督ピーター・ジャクソンに、その再編集が任されました。
このニュースを、ネット上で拾っているうちに、こちらの期待はいやが上でも盛り上がっていきました。
映像版「ザ・ビートルズ:アンソロジー」が、1990年代に公式版として発売された時には、ファンとして、もうこれ以上貴重なビートルズ映像は今後見れないぞと思ったものですが、そうです、まだこれが残っていました。
なんと言っても、50年間アップルの倉庫に保存されたまま、公式には、ビデオにもDVDにもならずに封印されてきた映像です。
ピーター・ジャクソン監督は、この編集作業を行なっているうちに、この貴重な映像をどういう形で世に出すのがベストなのかを真剣に考えたようです。
撮影されてあった映像はおよそ57時間分。
映画「LET IT BE」は、監督マイケル・リンゼイ=ホッグによって、これが89分に編集されて公開されました。
公開時点では、すでにビートルズは、正式に解散していましたので、そのリアルなドキュメントとして、彼の編集は、確信犯的に「崩壊に向かう」ビートルズの「陰」の側面を強調したものになっていました。
それまでのビートルズ主演映画が、底抜けに明るい「陽」の側面を前面に押し出したものばかりだったので、この作品のリアルさは、逆に妙に新鮮だったのを覚えています。
その頃の事情はどうあれ、世界一のロックバンドの、楽曲製作過程がドキュメンタリーとして観れるというだけで興味津々、興奮で胸がバクバクしたものです。
そして、なによりも、演技者としてではなく、生のミュージシャン、クリエイターとして、そこにいる彼らの姿はめちゃくちゃカッコよかった。
僕にとっては、それはもう「ビートルズやってくるヤア!ヤア!ヤア!」「ヘルプ!4人はアイドル」の比ではありませんでした。
映画「LET IT BE」は、その後リバイバルされるたびに見ていっていましたし、海賊版DVDを入手してからも、ことあるごとに見ているので、個人的鑑賞回数最多映画になっていることは申し上げておきましょう。
申し訳ありませんが、映画「LET IT BE」を監督したマイケル・リンゼイ=ホッグよりは、はるかに名声も実力もあるのがピーター・ジャクソン監督です。
もちろん、彼の手にかかれば、「LET IT BE」よりも、もっとグレードの高い劇場公開用ドキュメント映画も出来る期待は持てました。
しかし、最終的に彼が選択した公開方法は、劇場公開ではなく、有料ネット配信でした。
なぜこの方法が採用されたのか。
それは、当然本ドキュメンタリーの合計映像時間によるところが大きいでしょう。
第一部から第三部までを合わせれば、7時間50分にも及ぶ長尺になった本作。
映像を編集しながら、これを2時間の公開映画の尺に収めるのは、これを待ち望んでいたファンたちに対しては決してベストの選択ではないという意識が、彼には次第に芽生えていったのだと思われます。
そしてそこに、この世界中を巻き込む今回のコロナ・パンデミックです。
これも彼の背中を押しました。
ファンたちにリスクを背負わせて映画館に行ってもらうよりも、それぞれの自宅で、リモコン片手に思う存分、心ゆくまで何度でも繰り返し見てほしい。
この作品を待ち望んでいたファンには、このスタイルで公開するのがベスト。
これが彼の結論でした。
そしてこれならば、映画の尺の問題は考えなくてもいい。
この再編集を任されたものとしては、使える素材は、最大限出し惜しみすることなく、すべて駆使した、ファンが望む完全なドキュメンタリーを作るべきだ。
ピーター・ジャクソン監督のこの方針は受け入れられ、今回の「ディズニープラス」による独占ネット配信が決まったわけです。
映画鑑賞は、映画館に行けば、2000円近くかかりますが、ネット配信であれば、一ヶ月990円の登録料さえ支払えば、他の作品も含めて見放題。
もちろん、この作品一本見るための値段としても、このくらいはファンにとっては安いものです。
劇場公開もせず、パッケージ作品にすることもなく、有料動画配信のみの提供でも、最終的な興行的勝算があるのかどうか。
この辺りは、金銭感覚に疎い百姓にはちょっと判断できないところですが、ファンとしては、ありがたい限りです。
正直に言って、マーベルやピクシー作品も含めて、ディズニー映画はあまり趣味ではありませんので、ディズニープラスは、今回は本作を心ゆくまで鑑賞したら、一月末日をもって解約するつもりです。
申し訳ない。
でも、そういう人も案外多いかもしれません。
そんなわけで、元旦を待って即入会登録後、早速この三部作をダウンロードして、今ちょうどPart 1を見終わったというころです。
あまり説明も読まないで、とりいそぎ鑑賞してしまいましたので、本作はなんと「字幕なし」で見ておりました。
すでに手に入れてあるアメリカ製の海賊版「LET IT BE」が、字幕なしのDVDでしたので、これも「そうゆうものなのかも」と思って、特にプレイヤー・アプリの機能もろくにチェックせずに見ておりました。
もちろん英語はわからないのですが、それでも作品の背景にある諸事情や現場の状況は、長年のファンとしては、わかりすぎるくらいにわかっていたので、そこで展開されている会話の内容はなんとなく察しはつきましたね。
もちろん、また後で、「日本語字幕」で再チェックは致しますが、字幕なしで鑑賞しても、この2時間36分は十分に楽しませてもらいました。
まだ、全体としては三分の一の鑑賞ですが、本作は、相当に優れたドキュメンタリー作品であることは間違いなし。
まずは、世界中のビートルズ・オタクを最優先ターゲットにした今回のピーター・ジャクソン監督の選択に、心から敬意を送ると共に、感謝する次第。
あんたは偉い!
さあこれが、伝説のルーフトップ・コンサートに至るまで、まだまだ鑑賞できるわけですから、それだけでも、2022年の正月は悪くありません。
前置きが長くなりましたが、まずはPart 1 です。
このセッションは、映画としても記録されることになっていたので、そのクルーが撮影しやすいように、最初はロンドン郊外にあるトゥイッケナム映画撮影所にて、撮影が開始されました。
しかし、ジョージの衝撃のグループ脱退宣言により撮影は中断。
Part 1は、ここまで一週間の模様が、カレンダーに沿って映像化されています。
映画「LET IT BE」でも、”I’VE GOT A FEELING”のギター・フレーズに関するやりとりで、ポールとジョージが口論するシーンはありましたが、実際にジョージが「やめる」と言ってスタジオを出ていくシーンまではありませんでした。(後でもう一度見直してみますが)
しかし、Part 1 には、そのシーンもはっきり収録されています。
「僕はやめるよ」
「いつ?」
「今」
ジョージは、スタッフの説得にもかかわらず、スタジオを出て行ってしまいます。
そして、圧巻なのは、ジョージがいなくなった後での、彼らのスタジオでの演奏です。
まるで、”HELTER SKELTER” のあの悪魔的なアウトロが延々と続くような、狂気的セッション。
最後は、ヨーコの金切り声ボーカルまでも加わって、ボルテージは上がっていきます。
さあ、あと二週間後に迫ったライブは、一体どうなるのか?
その結論は既にこちらは知っているわけですが、この後の展開をわかってはいても、こちらはドキドキさせられてしまいます。
この合計三週間にわたるセッションを、連続ドラマとして捉え、その起承転結もしっかりと踏まえて、長丁場の8時間を、クライマックスに向けて再構成してくる辺りは、さすがは劇映画監督であるピーター・ジャクソン監督の面目躍如です。
YouTube でも散々見れる、断片だけの予告動画とは、違いました。
それに加え、”GET BACK” “LET IT BE” “THE LONG AND WINDING ROAD” といったおなじみのナンバーワンソングが出来上がっていく様子が、リアルに描かれているのが、なんと言っても大変興味深かったですね。
ポールが、ベースギターを、普通のギターのようにストロークでかき鳴らしながら始まった”GET BACK”が、メンバーから歌詞のアイデアを取り入れながらも、次第に形になっていく過程などはちょっと鳥肌モノ。
ビートルズのバンドとしての凄さを改めて、確認できました。
セッション冒頭から、ジョンの横にいつでも寄り添って、まるでメンバーの一員のようにグループの輪の中にいたヨーコの存在感はジワジワと伝わってきて、同じ日本人としては、胸がザワザワさせられましたが、後半になってリンダも登場し、ポールの写真を、ニコンのカメラでパチパチと写し出したり、リンゴのワイフのモリーン登場するようになると、なぜかホッといたしました。
演奏を聴いている限りは、セッション内容としてはあまり成果がなかったようなこのPart 1の一週間。
突然のジョージの脱退というピンチに、ビートルズとしてどう対応するかという会議が、リンゴの自宅に集合した三人によって開かれたことをアナウンスしたところで、Part 1 は終わります。
さあ、ビートルズの運命やいかに。
10代の頃から、散々楽しませてもらっているビートルス・ヒストリーが、50年の時間を経た今でも十分に堪能できるということはやはり驚異ですね。
Part 2は今夜見ます!
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