図書館の「こどものほん」コーナーで、ふと手にした本です。
おもわず、ひきこまれてしまい、気がついたら、半分くらいよんでしまいました。
そうだ、図書館の本は、二週間かりられるのだと思いだして、カードを、うけつけのおねえさんに見せて、家にもちかえりました。
そして、ねるまえに続きを読みはじめて、あっという間によみおわりました。
よんでいて、思いだしてしまったのは、サン=テグ・ジュペリさんの「星の王子さま」です。
この童話のしゅじんこうのなまえはチト。
みどりのゆびをもった少年で、チトの親指がさわると、そこからは、いろいろな草花がさいてくるのです。
チトと「星の王子さま」は、きっと兄弟かもしれないと思って読んでいました。
この本をかいたモーリス・ドリュオンさんも、サン=テグ・ジュペリさんとおなじ、フランス人です。
フランスの童話の特徴は、おはなしの筋よりも、いろいろな場面でのふんいきやことばのひびきをたいせつにすること。
物語ぜんたいが、ひとつのポエムのように、うつくしい音楽をかなでているようでした。
そして、たくさんかかれているかわいいイラストは、お話をまるで映画のようにしてくれました。
チトは、とてもおかねもちの「ピカピカのいえ」にうまれました。
おとうさんはりっぱな紳士で、おかあさんも、映画のなかの女優さんのようにきれいなひとでした。
なにひとつ不自由せずに、チトはすくすくと育ちましたが、チトを愛しているおかあさんは、この子を学校にはいかせずに、じぶんでよみかきや算数をおしえたいとおもいました。
しかし、八っつになったころ、そろそろ学校にやらなければといけないと思い、チトは学校に通うようになりましたが、じゅぎょうがはじまると、なぜかすぐに眠ってしまうのです。
三日たっても、先生に注意されても、それがなおらないチトは、家にもどされてしまいます。
おとうさんとおかおさんはこまってしまいましたが、すぐに方針をかえます。
「よし、チトは私たちでそだてよう。」
ピカピカの家にはたくさんの人がはたらいていました。
チトは、まず最初に庭師のムスターシュおじいさんにあずけられました。
白いひげをたくわえたおじいさんは、むくちな人でしたが、草花とお話ができました。
そして、ムスターシュおじいさんといっしょにはたらきながら、チトは、ふしぎなみどりのゆびをもっているということを教えられます。
チトが親指でさわったところからは、いろいろな草花が咲くようになるのです。
つぎにチトは、おとうさんの工場でかんとくをしているかみなりおじさんにあずけられました。
工場でつくられているのは、戦争でつかう鉄砲や大砲でした。
チトのすむミルポワールの町は、おとうさんの工場でつくられている武器を、戦争をしている国がかってくれるおかげでうるおっていました。
かみなりおじさんは、チトに規律を教えようとしました。
規律をやぶった人が、どんなところに入れられるのかを見せたくて、かみなりじいさんは、チトを刑務所につれていきます。
そこにいる人は、みんな暗くて悲しそうでした。
チトは、名案をおもいつきます。
ぼくのみどりのゆびで、この刑務所を花でいっぱいにしたら、きっとあの人たちは、もっと幸せそうな顔になるにちがいない。
そう思いついたら、いてもたってもいられなくなったチトは、夜なかにそっとベッドからぬけだして、刑務所にむかい、いろいろなところに親指をおしつけてきました。
つぎの日の、ミルポワールの町はおおさわぎ。
いろいろな花がひと夜にして刑務所をうめつくしたのです。見張り小屋の番人もとじこめられ、鍵穴もこわれたのに、囚人たちはあっけにとられて、にげだそうとする人はひとりまいませんでした。
いつもはけんかばかりしている連中も、なぐりあうことなど忘れて、うっとりと花を見ています。
刑務所の囚人たちは、それからみんな園芸がすきになり、独房の格子や鉄条網がなくなっても、みんな刑務所から出ていこうとしません。
花でかこまれた刑務所は、いろいろな刑務所のお手本になリました。
チトは、自分がやったことがバレたら、大人たちにおこられるかなと心配になりましたが、ムスターシュじいさんだけは、にっこりと笑ってほめてくれました。
それから、チトはこのみどりのゆびをどう使えば、みんなが幸せになるかをいろいろと考えました。
貧乏な人がたくさん住んでいるところをアサガオとゼラニウムでいっぱいにすると、そこは町でいちばんきれいなところになり、たくさんの見物人があつまってきたので、入場料をとったり、写真屋ができたり、絵ハガキを売る人がでてきて、たくさんの人が働くようになりました。
病院では、おもい病気で動けない女の子の部屋を、スイセンやバラでいっぱいにしました。
すると、うっとりとたくさんの花を見つめる少女の足がうごくようになったのです。
チトは、動物園も植物でいっぱいにしました。
動物たちを愛していない番人がいる動物園には、バオバブの木が生え、池にはスイレンがひろがり、ベニヅルがアシのあいだをはいまわり、ジャスミンの木には小鳥たちがさえずるようになりました。
悲しい顔をしていた動物たちの前に、ふるさとの草原が広がったのです。
ミルポワールの動物園は、世界でいちばんうつくしい動物園になり、猛獣たちはもう番人にかみつかなくなりました。
チトは、戦争でたくさんのものをなくした人たちの話をききました。
かみなりおじさんに、バジー国とバタン国の戦争のことをきいても、チトには理解ができません。
しかも、おとうさんの工場からは、この両方の国にたくさんの武器がおくられていたのです。
チトは武器の輸送日の前日、こっそりと工場にいって、ならべられているすべての商品に、親指をおしつづけました。
この武器がとどけられた戦場はたいへんなことになってしまいました。
いろいろな植物が、たくさんの兵器に根をはっていたのです。ツタやネナシカズラが機関銃にからみつき、戦車の砲塔には、バラやシダがしげってつかいものになりません。
大砲からうちだされたたまは、ヒナギクやスミレでできた花のたまでした。
争いあう両方の国の武器ともこんなことになってしまえば、もう戦争はつづけられません。
バジー国とバタン国は、ただちに戦争をやめ、平和条約をむすぶことになりました。
チトは、それで満足でしたが、大人たちはたいへんなことになっていました。
こんな武器を送ってしまったおとうさんの工場は、もうつぶれるしかありません。
チトは、勇気をもって、兵器を花だらけにしたのは自分だと告白しました。
そして、刑務所、貧しい人たちの町、病院、動物園のことも、全て自分がやったことだと正直にいいました。
おとうさんは、それをきいてはじめはびっくりしてしまいましたが、息子のことを心から愛していたので、さいごは決心します。
「よし、この工場で武器をつくるのはやめて、花をつくることにしよう。」
それから、ミルポワールの街は、花の町にうまれかわりました。
おかあさんも、満足そうでした。
かみなりおじさんのつくった看板にはこうかかれていました。
「戦争はんたいを花で」
そんなある日、ちとの大好きだった庭師のムスターシュじいさんが亡くなります。
どうしても、ムスターシュじいさんとあいたいチトは、まきばのちょうどまんなかくらいに、親指をおしあて・・
そあ、いったいチトは、だれだったのか。
どうか、それはこの本を手にとってたしかめてみてください。
みどりのゆびは、とてもすてきです。
自分にもあったらいいなと、つくづく思います。
まだまだ修行がたりない百姓ですので、いっしょうけんめい育てている野菜を枯らしてしまったり、病気にさせてしまうこともたびたび。
そんなときに、元気のなくなったかれらを、みどりのゆびでふれることで、復活させることができたらいいなと思います。
まだまだ、野菜にたいする愛情がたりていないのかもしれませんね。
遠い海のむこうでは、ロシアという大きな国が、となりウクライナというの国に戦争をしかけています。
そして、たくさんの人が悲しい目にあっています。
もしも、あの戦場がたくさんの緑でおおわれ、戦車や大砲に花が咲きだしたらどうなるのか想像してみてください。
バジー国とバタン国は、戦争をやめましたが、この二つの国ならどうするでしょう。
みどりのゆびをもった少年はたった一人で戦争をやめさせましたが、たとえみどりのゆびはもっていなくても、世界中の人たちが平和を願って、自分たちの親指を大地におしつけたら、もしかして、そんな奇跡がおこるかもしれません。
チトむりかな。
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