ヴェノム
映画は、出来る限り事前情報を頭に入れないで見るようにしています。
なるべく先入観なしで見たいわけなのですが、それでも、タイトルや宣材画像からでも、映画の中身は想像してしまうもの。
本作を鑑賞するにあたっては、はなっから「エイリアン」や「プレデター」「遊星からの物体X」のような本格SFホラーかなと勝手に思いこんでいましたね。
しかし、冒頭いきなり「マーベル」のロゴが出てきて、なんだかちょっとやな予感が頭をかすめます。
冒頭、ライフ財団が打ち上げたロケットが、シンビオートという宇宙生命体を数体連れて地球に墜落します。
そして、そのうちの一体が、人間に寄生して、次々と宿主を変えていく展開。
はい、これはいいでしょう。
この手のSFホラーの王道です。
異星人に人間の体が乗っ取られる作品としては、ジャック・ショルダー監督の「ヒドゥン」や、マチルダ・メイが艶っぽかった「スペース・バンパイヤ」、「スピーシーズ」シリーズなど、この路線の作品は多いわけです。
ライフ財団のリーダーは、地球がいずれ自滅をする前に、宇宙に脱出する計画を画策している若き大金持ち。
シンビオートと人間の合体を研究するために、次々とホームレスを実験台に使うマッド・サイエンティストです。
この辺りのキャラクターは、007シリーズで、嫌と言うほど見ていますので、まあそれでもまだなんとか本格SFの線は崩さずにみていられました。
しかし、いよいよ、主人公の記者エディの体に、一体のシンビオートが入り込み、ヴェノムとして、その姿を表す段になると、本格SFとして楽しめるのはもはやここまで。
とにかく、この怪物がどことなく、可愛いのですから、もういけません。
とにかく、このヴェノムの造形が完全にマーベル・コミックのノリなんですね。
宇宙生命体としての恐ろしい造形としては、ハンス・R・ギーガーがデザインした、エイリアンのクリーチャーには遠く及ばず。
その漫画的につり上がった両目は、まさにマーベル・コミック・キャラクター。
そして、体を乗っ取ったヴェノムと、乗っ取られたエディのやりとりは、まるであの「寄生獣」ときては、もはや本作を本格SF作品として楽しむのはもはや不可能。
ここで潔く、これはマーベル作品なんだと、頭の中でスイッチを切り替えることにしました。
Wiki によれば、この「ヴェノム」は、マーベル・コミックの雄「スパイダーマン」に登場したヴィランで、本作は、ヒット・シリーズ「スパイダーマン」のスピンオフ企画として製作された作品とのこと。
つまり、本作は、スーパーヒーローは登場しないものの、「バットマン」シリーズからのスピンオフ作品として、大成功を収めたスーパーヴィラン「ジョーカー」よろしく、初めから、悪のヒーローにスポットを当てた、アンチヒーローのマーベル映画として楽しむのが正解だったというわけです。
さあ、そうとなれば、それはそれで楽しむことにしないと、見る意味がありません。
中盤これでもかと繰り広げられるカーチェイスは、SF映画というよりは、むしろアクション映画のノリ。
リアルには、全く感情移入ができない自己チュー男のエディも、コミックの主人公としてなら、まあなんとかギリギリ許せるキャラに思えてきます。
ヒロインとの絡みもいかにも、スパイダーマン的展開。
そして、いつしかエディとヴェノムとの間に、友情が芽生え・・・
とまあ、そんなわけで、見終わってみれば、希望した本格SFではなかったにせよ、最終的には、ちゃんと楽しめる映画にはなっていたのがさすがハリウッド作品。
僕のようなとんだ勘違いオジサンも、最後には見事に丸め込んでしまう圧倒的な映画力。
これぞ、アメリカ映画のエンターテイメント能力の懐の深さと言えましょう。
あっぱれマーベル!
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