定年退職をしたら、やりたいことの一つがこれでした。
すでに、シリーズ全50作品のうち、49作まではDVDで、取り揃え済み。
過去の衛星放送で、「男はつらいよ」が放送される度に、マメに録画しておりましたので、この企画はいつでも、スタートできるように準備は整っておりました。
シリーズ最終の50作目だけは、まだDVDでは持っていませんが、Amazon プライムの有料コンテンツとしては鑑賞できるようなので、もしもそれまでに録画できなければ、それを見ることにします。
実は、「男はつらいよ」シリーズは、すでに全作を鑑賞済みです。
一番最後に鑑賞したのは、シリーズ最終作の「男はつらいよ お帰り寅さん」。
これは、もちろん有楽町の映画館でロードショー公開時に見ています。
それでは、一番最初に見たのはシリーズの第何作目だったか。
これは、今でもはっきり覚えていますね。
「男はつらいよ あじさいの恋」。
シリーズの第29作目で、マドンナはいしだあゆみでした。
ウィキしてみると、1982年の公開となっていますから、ちょうど僕が、タウン情報誌「ぴあ」を片手に、関東一円の映画館を行脚していた大学4年生の頃です。
僕の名画座めぐり道楽は、実は大学生になると同時にスタートしていますので、寅さん映画デビューは、映画ファンとしては、だいぶ遅かったと言わざるを得ません。
これは、ちゃんと白状しておかなければいけないので申し上げますが、映画を見始めてから、しばらくは「男はつらいよ」は、確かに意識的に敬遠していました。
と言いますか、小津安二郎の時代から伝統的だった松竹映画の予定調和的なアットホームなカラーが苦手だったんですね。
とにかく、映画というエンターテイメントは、日常では到底体験できないような度肝を抜く映像体験や、美人でナイスバディな美人女優たちを堪能させてもらう娯楽と決めていましたので、そんな嗜好で鑑賞映画をチョイスしていると、庶民の生活を活写するような「男はつらいよ」的人情喜劇というジャンルは、お金を出して見る映画としては、完全に選外でした。
多分、「男はつらいよ あじさいの恋」を見た時も、この映画がお目当てで見にいったのではないはずです。
もう今ではちょっと思い出せませんが、当時の名画座は、二本立て、三本立てが当たり前でしたので、併映の作品の何かを見るついでに鑑賞したという記憶です。
しかし、この作品が意外なほどに、自然に心に沁みたんですね。
自分でも、ちょっと驚きでした。
寅さん映画といえば、主人公車寅次郎が、浅草柴又の「とら屋」に帰ってきては一悶着起こし、旅先ではマドンナたちにお熱を上げて、結局最後にはフラれるという鉄板のフォーマットで固定ファンの圧倒的支持を受け続けている山田洋次監督の大ヒットシリーズというくらいの基礎知識はありました。
しかし、「あじさいの恋」の寅さんは、天下の美女いしだあゆみに言い寄られてオロオロするという展開。
詳しいことは、この作品の鑑賞後の感想ブログで再考するつもりですので、ここでは割愛しますが、これがなんだかとても良かったんですね。
「おおっ、なんと自分は「男はつらいよ」を見て、当たり前に感動しているではないか。」
ここで、完全にカチャリとスイッチが入りました。
山田洋次マジックにかかったのが、まさにこのときでした。
僕は、恥ずかしながら、大学は5年も通いましたので、寅さん映画デビューを果たして、残り一年間は、名画座で「男はつらいよ」が上映されるという情報を得れば、関東一円どこの名画座までも出かけていきました。
従って、「男はつらいよ」の鑑賞順序は、僕の場合かなりバラバラです。
おいちゃん役も、森川信、松村達雄、下條正巳がごっちゃになって、かなり混乱した記憶です。
しかし、学生生活最後の一年間で、シリーズ全作を映画館で見ることは不可能。
社会人になってからは、映画館に映画を見に行くことはほとんどなくなってしまったので、しばらくは未見の寅さん映画の鑑賞更新がされない時代が続きましたが、しばらくすると巷に、レンタル・ビデオ・ショップがチラホラと登場します。
最初の頃はまだレンタル代もかなり高価で手が出ませんでしたが、次第にそれもこなれた値段になってくると、再び「男はつらいよ」鑑賞が再スタート。
そうこうしているうちに、衛星放送でノーカットの映画がオンエアされるようになり、この辺りから、またぼちぼちと映画鑑賞がマイブームとして復活し、同時にDVDコレクションもスタートするわけです。
「男はつらいよ」シリーズは、寅さん役の渥美清が1996年に亡くなりますので、その前年の「男はつらいよ 寅次郎紅の花」で、事実上終了するわけですが、その時点では、このシリーズは全作鑑賞済みでした。
その後、衛星放送での全作品録画が完了したあたりから、今度は一度全作を初めから製作順に鑑賞し直してみたいと思い始めていたわけです。
しかしこの「いつでも見れる」というのがクセモノで、その安心から、なかなか最初の一枚に手が出ません。不思議なものです。
寅さん映画に限りませんが、およそ30年にわたる衛星放送映画コレクションの蓄積で、今ではおよそ5000タイトルほどのDVD在庫が我が家にはあります。
これだけ揃えていれば、もう老後の楽しみは万全だということで、すでにWOWOWはやめて、今はNHKの衛星映画劇場をちびぢひと録画して増やしている状態ですが、実はここ最近見る映画といえば、Amazon プライムの会員特典鑑賞映画ばかりなんですね。
もちろん、自分の在庫にはない最新映画を見るようにはしていますが、時には、在庫がある作品でも、こちらにラインナップされていれば、こちらを見てしまうというところが、自分でも笑ってしまうところ。
毎年の会員フィーを支払っている以上、こちらを優先的にみないと損をするという貧乏人根性があることは明白です。
チョイスする映画は、サムネから判断する以外は、なんの情報もない未見の準新作が中心ですから、時には、このブログに感想をアップするのも憚られるような駄作にも遭遇します。
そんな時は、少々自己嫌悪。
待て待て。
こんなことでは、なんのために、これまでセッセと映画のDVDコレクションをしてきたのかわからなくなる。
そう思い直したのがここ最近のことです。
気がつけば、退年退職をしてからすでに3年が経過。考えれば、もうすでに人生の残り時間もカウントダウンに入っています。
ぼやぼやしていると、映画マニアにとっては、せっかくの宝の山をコレクションしていても、持ち腐れにしてしまいかねません。
コレクションの中には、もちろん未見の映画もまだたくさんありますが、過去に観た映画で記憶に残っている名作も数多くあります。
どうも自分の性分として、なぜか一度見た映画を、再見するよりは、当たり外れも覚悟の上で、未見の映画をチョイスしてしまう傾向があるのは自覚しているところ。
若い頃に見て感動した映画を、人生の年輪を刻んだ今再チェックするという映画鑑賞もそろそろ始めたいところです。
さあ、そうなってくると、寅さんシリーズ以外でも、みたい映画は山のようにあるわけで、考えてみれば、映画鑑賞のために残された時間はそう残されていないと改めて気がつかされます。
そんな現実を考えると、定年退職している身とはいえ、そういつまでも、のんびりしていられないというと改めて思うわけです。
そうそう、これは最近気がついたことなのですが、何か一本映画見ようという気になってから、一本を選択するまでに、なんだか偉く時間をかけていたりするんですね。
あれがいい、これがいいとやっているうちに、小一時間が平気で経っているなんてことはザラ。
昔々は、ビデオもDVDもありませんでしたが、そもそも選択ソースがわずか。
「ぴあ」の情報か、TVガイドの映画情報くらいのものです。
見る映画を選ぶのに悩むなんてことが、そもそもなかったわけです。
たかだか自分の持っている5000タイトル程度の作品群の中から、見る映画の選択だけに時間をかけるなんてことは、時間の浪費以外のナニモノでもありません。
そこで最近考えたのが、映画のシリーズものを、製作順に追いかけようという試み。
これならば、一度「最初」を決めてしまえば、少なくとも次に見る作品を迷うことはなくなります。
何せコレクション・マニアですので、鑑賞済みか未見かを問わず、すでにシリーズ全作が揃っているものは、映画、テレビ・ドラマなどを含めいくつかあります。
テレビ・シリーズでは「刑事コロンボ」新旧「ツインピークス」「猿の惑星」「北の国から」「人間の条件」「ガメラ」「ゴジラ」「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などなど。
実は、「007」シリーズと、「スターウォーズ」シリーズは、「最初から見直し」計画を既に実施済み。
感想文は本ブログにもアップ済みですので、興味のある方は是非ご覧になって見てください。
そんなわけで、今自前コレクションにある最大のシリーズものがこの「男はつらいよ」というわけです。
全50作品といえば、およそ上映時間100時間。寝ずにぶっ続けでみても丸々4日間かかるわけです。
さすが、ギネスブックにも記録される、日本の誇る映画シリーズです。
これを製作順に鑑賞していくのに、どれくらいの期間を要するかはちょっとわかりません。
もちろん、一作ごとに拙文とイラストは、本ブログにアップしていくつもりですので、相当な長丁場になることは予想されます。
途中では、あちらこちらと、寄り道もしていくつもりですが、完走がいつになるのかはまるで見当がつきません。
でもとりあえず、完走宣言だけはしちゃっておこうと思った次第。
何せ、ムラっ気があって、飽きっぽいのは自分でも承知しているので、まずは偉そうなこと宣言しておいて、途中でやめられない状況にしておこうというわけです
これが無事完了すれば、次にはヒッチコック作品、黒沢作品、キューブリック作品と、トライしてみたい企画はいくらでもあります。
映画というものは、その時の自分の感性で捉えるもの。
鑑賞する年齢が違えば、映画の捉え方も、違ってきて当然です。
こちらの映画鑑賞マインドが、もうろくして劣化してしまわないうちに、見直しておくべきコンテンツは、しっかりと再チェックしておこうと、最近になってやっと思い始めたところです。
定年退職してから始めた野菜作りは、色々と大変で時間もそれなりにとられますが、せっかく時間だけは自由になる身分になりましたので、ぼちぼちと、映画マニア人生の総括も始めていくことにいたします。
見る映画を迷うなんてことで、あまりモタモタしていると、マドンナと連れ添って上機嫌の寅さんに、いい調子で言われてしまうそうです。
「おっ、伊勢屋。相変わらずバカか。」
そんなこんなも、まずは、「寅さん」からということで。
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