赤紙が来た。
送り主は、全国保険協会。通称「けんぽ」。
会社で受けた健康診断の結果を受けての通知である模様。
「あなたは、II度高血圧の可能性あり。要治療、要精密検査と判定。
一ヶ月以内に医療機関で受診されたし。」
赤紙は、さらにたたみかけてくる。
「高血圧を放置すると、動脈硬化を進行させます。
さらに進行させると、命に関わる重大な病気に進行します。」
ここまでいわれると、さすがにビビる。
なにせ、我が両親は、二人とも高血圧症で、最終的な死因は、二人ともその合併症だった。
父は、脳梗塞で倒れて、人生の最晩年を介護老人として過ごした。
言われれば、思い当たる節は大有り。
なにせ同じDNAを引き継いでいる。
その息子も全く同じ道を歩んでいるということらしい。
ついにきたか。
同じ通知書は、同じ健康診断を受けた同僚のところにも来たらしい。
彼は、母親に言われ、医者に通うと、定期的な平日の休みを申請してきた。
僕も彼も、そろそろそういう年齢。
若い頃は、心配もしていなかった悪魔が、もうじき還暦を迎える老齢の体に、いつのまにか忍び寄っていたというわけだ。
しかし、こちらは何事にも素直になれないひねくれた性格。
どうも、この手の通知をもらうと、裏に何かあるのではないかとすぐに勘ぐってしまう。
おもわず頭に浮かぶのは、この「けんぽ」のスポンサーになっている医師会や製薬会社のたくらみ。
いまや定期診断は企業のコンプライアンス。
該当受診者のすべてに、この通知を送るとなるとそれなりの費用はかかるだろう。
「協会けんぽ」は、もともと社会保険庁という政府管轄の役所が運営してきた組織。
平成20年からは、民間の運営組織になった。
民間になった以上は、どういう形にせよ、そこに多少なりとも、ビジネスの論理は働くだろう。
ならば、この通知はいわば販売促進の営業行為。
ちゃんとした受診結果をもとに通知されているとしても、DMの一形態ともとれなくもない。
そうなると、またここで老人性の天邪鬼が働く。
「悪いが、その手には乗らないよ。」
しかし、同年代の同僚に聞いても、やはり50代から、60代になるってくると、高血圧の人は多い。
そういう知り合いの多くは、僕のようにひねくれてはいないようで、素直に病院に行って、診察後に、処方された薬をもらってきて服用している。
当然のことだが、その薬を飲むと、血圧は面白いように下がるようだ。
血圧が上がれば、薬を飲んで下げる。
また上がったら、また飲んで下げる。
高血圧の問題はそれで一応の解決。
いまや、それがこの高度医療社会の常識、もしくはトレンドと言ってよいらしい。
しかし、天邪鬼はそこでまた首をひねる。
「待て待て。それでいいのか。
人間の体は自然。上手にできている。
自然のすることに無駄はない。
それを無理やり薬の力でさげていいのか。」
元解剖学者で、「バカの壁」で有名な養老孟司がいっていた。
「高血圧を薬で下げていると、寿命が縮まる。」
つまりこういうこと。
「高血圧には、高血圧の理由がある。
歳をとってくると、だんだんと血管は劣化してくる。
その毛細血管の先まで血液を循環させるために、より高い圧力が必要なのはむしろ自然なこと。
その血圧を薬で下げてしまって、血液が循環しなくなったらどうする。
いったい体にどんな問題が起きるか。」
ほらね。
大いに納得である。
これは、自然農法で野菜づくりをはじめた素人百姓には、ピンとくる。
自然栽培は「耕さない、肥料をやらない、除草しない」農法。
自然のやることには一切の無駄はない。
だから、人間は余計なことはしない。
すべては、自然に任せて、人間はそのサポートに徹する。
人の体だって、立派に自然だ。
これを人間の浅知恵で、コントロールしようなんてことがすでにおこがましい。
薬を飲んでいる友人の多くは、それで血圧が下がることに安心して、食生活自体は変えていない人が多い。
これは、僕にいわせれば、農薬で雑草を駆除し、化学肥料で異常に成長を増幅させる一般栽培と一緒。
目先の効果だけに飛びついているだけ。
お金を払って、安くない薬を買って服用することで、刹那的な効果に安心し、常時服用することで結果寿命を縮めているだけ。
どうにもそう思えて仕方がない。
ならば、赤紙の通知は無視するか。
いやいや、それも怖い。
我が父に脳梗塞の発作が襲い、右半身麻痺。
わずか1日で、人相が変わってしまったあの日のことをどうしても思い出す。
あの父のDNAは、紛れもなく自分の体内にも受け継がれているのは事実だ。
ではどうするか。
通知に従って、同僚と同じように、素直に病院に行って、薬を処方してもらうか。
これだけのことを言われても自覚症状はいまだ何もない。
ならば、このまま放置して成り行きに任せるか。
いやいや、それもしたくない。
こう見えて、けっこうビビリである。
どうする?
実は答えはもうすでに出してある
今を去ること10年前。
当時、体重が79キロあった僕はメタボ全開。
中性脂肪、血糖値、血圧。
すべてが平均値をはるかに超えていた。
原因ははっきりしていた。
生活習慣とストレス。
あの頃は、とにかくよく食べた。
しかも、野菜などには目もくれず、肉、糖類、塩類、脂肪分のある食べ物ばかり。
それに加え、当時は事務職。
事務所内だけを、ウロウロしながら、ランチは台湾系中華食堂で、チャーハンと唐揚げのセット。
食べて動かなければデブにもなる。
当たり前でしょうという話だ。
この時は、そこから一念発起して、食生活をガラリと変えた。
そして、会社に掛け合って、事務所を飛び出し、現場に出た。
医者にもいかず、薬も飲まず。
運動をする代わりに、現場に出て、体を動かした。
そして、食べるものだけ制限。
面倒臭いので、なんでも食べる代わりに、量は半分にして、1日2食。
夜は食べない。
カロリーで言えば、1日1560カロリー。
これを一年半続けた結果、体重は見事に16キロ減って、63キロ。
血糖値も境界型にまで落ち、このときは、一時血圧も落ちた。
ダイエットは見事に成功。
この体重だけは、いまだに維持できている。
やはり成功体験というものは、人の意思決定に大きな影響を与えるもの。
では今回はどうするか。
今回の、II型高血圧に対しても、基本これと同じことをすれば良い。
要するに、高血圧は、医者に行かなくとも、薬を飲まなくとも、生活習慣の改善でなんとかなる。
自然農法の論理である。
人間の体も自然ということである。
思い当たることが一つだけあった。
「つまみ食い」である
なにせ、本職はトラックの運転。
トラックの運転にとって一番の大敵は、睡眠不足。
時間に追われる中、運転していて、死にたくなるのは睡魔。
眠くなったら、途中休憩してから走るという理想は理解していても、実際はなかなかそうもいかない。
そこで、現在やむなく実行中なのが「つまみ食い」。
運転中に、眠くなると、コンビニで購入したスナック菓子をボリボリと食べはじめる。
すると、その間は、眠気がどこかに飛んでいるのだ
口角が動いていると、眠気が緩和できるという実験結果もあるらしい。
そうか、まずはこれをやめればい。
そして、ポイントは、その結果を「見える化」する。
これが肝である。
10年前も同じ。
あの時は、デジタルの体重計を購入して、毎朝毎晩、体重を測定してグラフにした。
人間はやったことの結果がすぐに数値に現れると、グッとモチベーションがあがるらしい。
そこで、医者に受診する代わりに、今回購入したのが血圧計。
安い血圧計は持っていたが、ここは一念発起の勢いで、今までのよりも少々高額の血圧計を、Amazone で購入。
血圧計といえば、「オムロン」。
自動デジタル血圧計 HEM1020。
腕にまくタイプではなく、腕を差し入れて上腕で計測するタイプ。
会社には、これの大型が設置され、いつも乗務員の血圧が、計測可能になっている。
この血圧計は、一般家庭としては、かなり立派なもの。
だけど購入。
こういうものに金をかけることは昔から厭わない。
今回は、僕の血圧降下作戦の証人として、彼に大いに活躍してもらう。
早速計測。
146/99
140/94
そして、3回目で出たのが、赤紙とほぼ同じ値。
154/108
承知いたしました。
確かに、II度高血圧の値。
上等。
さあ、ここから血圧改善作戦スタート。
宣言しておきます。
医者にはいきません。薬も飲みません。
運動もしません。
但し、仕事では現場に出て、歩く歩数は毎日ほぼ12000〜14000。
キロに換算すれば、10〜12㎞。
そして、現在は幸いにも、冷蔵庫と冷凍庫は、畑で採れた野菜で作った料理がいっぱい。
収穫がほとんど終わった今でも、およそ一ヶ月分はある状態。
ベジタリアン状態は、約半年間続いており、まだ継続可能。
後は、眠気防止の運転中のスナック菓子購入をやめるだけ。
とにかくやることは、10年前と同じ、生活習慣と食習慣の改善。
これだけ。
今は、必要あって、体の都合で高血圧になっているものを、毎日体に入れるもので、その必要のない体に自然に戻すのみ。
人間の体は、分子レベルでは、ほぼ一年経てば、すべてが入れ替わる仕組みになっています。
そう考えれば、単純に考えて、1年間体に入れるものをコントロールすれば、高脂肪も、高血糖も、高血圧も直せないわけがない。
素人の浅はかかもしれないが、物事は何事もオプティミスティックに考えたほうがよろしい。
まずはこれで、とりあえず血圧がどこまで下げることができるか。
それではまず結果報告から。
朝食と昼食は、野菜ランチを通常の量。
夕食はなし。
運転中の間食は禁止。
1日の飲料は、砂糖なしのコーヒーと紅茶。
もしくは、畑で採れたハーブティ。
一般購入するのは牛乳もしくは豆乳のみ。
これを本日まで、とりあえず3日続けたところで、測定結果。
135/90
130/87
118/80
よっしゃ。
とりあえず、この値なら「正常高値」から「正常血圧」。
スタートは合格でしょう。
あとはこれをモチベーションにして、自分の状態を維持管理していくだけ。
定年退職後は、農業を志している身。
百姓をやるには、なによりも、健康であることが大前提。
幸いかな、いまのところ、会社の畑で採れる野菜が豊富にあり、これを美味しく食べるために調理の腕はスキルアップ中。
あとは健康に働いて、ストレスを溜めず、食べる量をコントロールしていけば、医者に行って、薬を処方してもらうよりは、はるかに健康的なのではないかと思う次第。
10年後に、自分の書いたこのブログを読むのを、楽しみにすることにしましょう。