好きな番組の一つが、NHK Eテレの「100分de名著」。
ここで取り上げられたのが「万葉集」。
恥ずかしながら、僕はこの日本最古の歌集を全部読んだことはありませんが、
この番組を見て、いつもの通りに読んだ気にさせてもらいました。
今回イラストで取り上げたのは、この万葉集最後の一首。
この歌を詠んだのは、大伴家持。
大意は、今日のこの新しい年明け、初春の日に、大雪が積もったが、
これからも、この雪のように良いことが重なってくれるといいなあ。
まあ、そんなところでしょうか。
その説明の下りに、NHKが挟み込んだ映像がこのカット。
真夏の暑い盛りに見たこの映像と短歌のアンサンブルが、なんだか心地よく
涼しげでしたので、思わずモニターに向かって iPhone をパシャリ。
それを iPad に取り込んで、ちょっと日本画のテイストでイラストにしてみました。
さて、二月に入りました。
平成十三年の2月を自分の拙い短歌で振り返ってみます。
四十二歳だったスケベオヤジ目線には、当時の巷はこう写っていました。
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二月
おやじギャグ一度受ければそのネタを何度も使ってしまう悲しさ
視線までセクハラどうのといっているその子を案じてじっと顔見る
軽やかにガードレールを飛び越えたつもりが着地でこけて減点
休日もいつもの時間に目は覚めてそこから寝直し出来る幸せ
鬼は外福は内ならおとうさん外にいるべき内にいるべき
しもやけやひびあかぎれは今はなく子供たちの手きれいになりぬ
様子見に病院のぞけば顔崩す七十の父は我が子になりぬ
仕事前ドラム缶の火に手をかざし煙草幾筋雲が呑み込む
会社の子連れて歩けば信号で娘を見つけあわやニアミス
マイカーで会社へ急ぐお姉さん信号待ちでメイク整え
雪抱く山一面のキャンバスが夕陽の赤で静かに染まり
この地球百万年の蓄えを一年で使う現代社会
朝風呂や手が届くとこに服そろえ着替えて急ぎコタツに飛び込む
旅支度新しき靴玄関に思いめぐらせもうひと仕事
「えっ俺にいいのにそんな」といいながらあいつのもらうチョコも気になり
バレンタイン義理チョコ選ぶ女の子男のランク検討最中
叱られて母親の後ろ歩く子に小さな妹手招きをする
雪かぶりひっそり佇む観覧車週末までの静かな時間
まだ冬は峠を越えぬ如月にほんの一日春の訪れ
保母さんにワゴン押させてお散歩はそこのけそこのけ園児が通る
なにかやるときは不思議と重なってもうあきらめて早寝決め込む
早咲きの梅がこっそり花開き小さな春が目を覚ます頃
あれがないあれどこいったと探し物人生半分それに費やす
ツイート
今から10年ほど前にハマっていた短歌。時事川柳。
当然 iPhone は持っていませんが、この頃からボイスレコーダーは常時携帯して、
頭のなかで組み立てた五七五が、まとまるたびに録音していました。
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平成十四年一月
年明けて最初の夕暮れ遠き富士シルエットにして空染まりゆく
数の子や黒豆伊達巻栗きんとんそろそろ飽きてカップラーメン
双六もカルタも独楽も凧揚げもテレビの向こうに見かけるばかり
お正月気分もムードもそこそこに街は早々平常営業
友からの家族写真つき年賀状背の順去年と入れ替わりけり
つまらない成人式もちゃんと聞くそれが大人になるということ
ISO取るぞと社長が意気揚げてUSO!と社員が目を丸くする
縁側にペタンと座り幼子が物干しかすめる陽射しと遊ぶ
窓の下校庭走る球児たちじっと見下ろす介護病棟
指先に届くくらいに吸う煙草父穏やかに陽だまりの中
レインボーブリッジ走る冬の夜こぼれた星が地上で光る
やることが山積みのはずの日曜日テレビ消せずに半日消える
メールなら四十を過ぎたオジサンが照れるでもなく愛など語る
パソコンが逆立ちしても出来ぬこと手抜きすること忘れ去ること
高速で眠気覚ましのミスチルが一月の空に躍り出てゆく
初富士や新しき世紀その初日なにはともあれ晴れではじまり
不景気や正月気分もそこそこに営業中の文字街のそこここ
服に落ちきれいに拭いてもまた浮かぶ歯磨きチューブの憎らしさかな
三が日明けて成金小学生銀行の前で通帳ながめ
北国の土産を屋根に十トン車山の向こうの雪模様知り
めでたさが中ぐらいなら上等でこのご時世はそれでよしとす
平成十三年一月
初雪やシャベルの音で目を覚まし休日の朝でほっと一息
デイパックつま先歩きでバス停へいざ雪積もる露天風呂へと
チェーン巻く山行きのバスに小学生「お願いします」と運転手に言い
終点に降り立つ客は我一人尻焼温泉本日貸し切り
せき止めた川一面の露天風呂凍てる空へと湯気上りけり
口笛を吹きつつ慣れた足取りで湯に入る人見て我も服脱ぎ
カモシカや猿や狸を観客に我山の湯の風景となる
山降りるバスが来るまで土産屋の老婆とこたつ挟んで過ごす
訳もなく心踊った雪景色少年の日を懐かしみつつ
~群馬県尻焼温泉にて
面倒くさい後でやろうと思ってもまず後でなど出来た試しなし
成人は大人になるというよりもそれより前に人と成ること
冬の午後子猫一匹膝の上鏡開きの雑煮一杯
女子高生コートの下が生足で寒くはないかと聞くのは野暮かな
陽射浴び憐れ都会の雪だるま溶けて汚れて余命幾ばく
霜模様車のボディをキャンパスに冬の天使の絵心みたり
西の空森を焦がして雲を焼き富士紅く染め燃える日没
鰤鮪河豚牡蠣海鼠鱈鮟鱇湯豆腐寄鍋冬の食卓
(ぶりまぐろふぐかきなまこたらあんこうゆどうふよせなべふゆのしょくたく)
縁側でねんねこ羽織り幼子をおぶった老婆が日向ぼっこし
荒涼と寒風抜ける霜枯野凛と一輪咲く冬薔薇
氷点下水道破裂交通マヒ救急車がゆき寒波襲来
国境の長いトンネル越えずとも本日関東一円雪国
雪野原いつもの餌場が豹変し鴉が一羽あたりを見回す
しくしくがずきずきになる夜明け前歯医者嫌いの自業自得よ
上司から今日の仕事は中止という夢で起きれば寝過ごしており
知人から癌と戦う意志聞いて「頑張れ」としかないもどかしさ
気がつけばどこもかしこも電子音何が鳴ったかあたりを見回す
また降れば三度休みに救われて今年の雪は相性がよし
週末の雪でいつもの娘らが高底あきらめズックでおでかけ
今から12年ほど前、この頃の僕のマイブームは、短歌川柳でしたね。
まだ、twitter もなければ、Facebook もなく、拙い作品は、
しこしことホームページでご披露させてもらっておりました。
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平成十二年十二月
首都高の渋滞表示がいつもより三キロ伸びて師走に入り
街角にイルミネーション瞬いてクリスマスはもう始まっており
朝焼けに湖面の水鳥悠々と枯木は霜の薄化粧かな
工事中交通整理のおやじさん北風の中軽やかに舞う
冬将軍完全武装の子供たち半ズボンの子とんと見かけず
歩いても運転してても食べてても携帯離さぬ十二月かな
パソコンは何がいいかと聞かれれば高いのがいいと答えており
真夜中に姿形も名前さえ知らぬあなたと心通わす
冬晴れの朝国道の正面に県ひとつほど越えた富士山
公園の広き花壇に冬菫一人舞台に月明かりかな
なにもかもうまくゆかないそんな日は見上げた夕焼け染みわたりゆく
煌煌と冬の星座を照らしつつ今日今世紀最後の満月
お歳暮をなんだかんだと贈り終えサンタの苦労も少々わかり
忘年会演歌もラップも馴染めずにビートルズなど小声で唄う
「ああいえばこういう」とよくいわれるがああいわなければこういわない
連日の暴飲暴食年の瀬に胃腸こわれて宴会自粛
パソコンで年賀ハガキに挑戦し手で書くよりも苦労しており
渋滞で前の車の子供らとニラメッコする駅前通
サテライト深夜映画のエンドマーク眠らずにいる冬至の夜長
麻原もノストラダムスも蹴散らしてさあ新世紀へカウントダウン
シャツを出しズボンずり下げ歩く子らさすがに理解不可能となり
イブ早朝鶏ひときわ高く鳴き本日彼らの受難の日かな
プレゼントなにやら希望がややこしくサンタ手引かれるソフトの売り場
庭先にイルミネーション飾る家今日クリスチャンほぼ五割増
聖夜明けうかれた街の飾り取れ年始に向かいラストスパート
大掃除あきらめかけてたなくし物出てくる度に喚声を上げ
数の子や伊達巻黒豆栗きんとん紅白かまぼこおせちの仕込み
初詣準備に巫女らがすす払い時給いくらか少々気になり
2000年技術は進んだ世の中で振り回されていく心たち
高速をボードを積んだワゴン車で若者たちが年越えに行く
世紀越えテレビの向こうとこちら側お祭り騒ぎも多少の温度差
大晦日この際今年の宿題はリセットできぬものかとため息
四十一そろそろ人生折り返し地に足つけて夢の見直し
平成十三年十二月
寝てる人抱き合っている人叫ぶ人師走新宿終電近く
夜明け前薄紫の地平線スイングしながら国道を行く
ファミレスでサラダ挟んで娘が母に携帯メールの指導しており
ジョンが逝きジョージが逝ってビートルズこの世とあの世で「ハード・デイズ・ナイト」
街路樹も葉落とし終わり秋逝きて北風一陣初冬の装い
不景気といえども年末車らがあわただしく行く駅前あたり
テレビからアフガニスタン難民の貧しき姿我が家の食卓
忘年会ザザン氷川と用意して使い分けてるカラオケタイム
自らの重みで転がり始めれば制御不能となりぬ「報復」
年の瀬の人で賑わうデパートに時給なんぼのサンタクロースら
着信の履歴に削除した番号真夜中になるツーコール半
雨やがてみぞれになりてやがて止み初雪までは一歩とどかず
凍る朝車を暖気する間ウインドウ下げて我が目も覚ます
いつもよりシャワータイムを多く取りさあ大晦日いざ大掃除
ゴム伸びたパンツもそうでないやつもこの際在庫一掃処分
散らかっているのかそうして置いたのか本手にとってまた置き戻す
さてどこから手つけていいかわからねばまずは自分の机の上から
家具どかし何年分の埃拭き只今収入七百五円
投稿情報: 午後 08時21分 カテゴリー: 短歌 / 川柳 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
十一月は、昔の言い方では霜月。
でも、今では地球温暖化で、十一月になってもちょっと霜のイメージはないですかね。
まあ、でもいつまでも夏のカッコで油断していると、くしゃみも出る季節になりました。
それでは、12年前の十一月はどうだったか。
拙い短歌で振り返ります。
平成12年
乾かない洗濯物に愚痴こぼしビデオでも見る秋の長雨
四十過ぎ中性脂肪値上がりだし野菜一品増える食卓
いにしえの着せ替え人形そのままの若い娘らが歩く街角
秋晴れの堤に陣取り釣り糸をたれてひねもす太公望
青空をキャンパスにして描きたる雲印象派の筆使いかな
ご自慢の装い楽しむ秋盛りコートを着込む季節はもうすぐ
朝顔の種を砕いて白粉(おしろい)をつけてはしゃいでる登下校かな
年賀状印刷案内貼り出され年末がもう始まっており
子供らと手繋ぎ歩く母たちをに何かが起きてるこの世紀
末
街路樹の落ち葉が車にあおられてアスファルトの道踊りころげる
渡り鳥群れから離れたつがい二羽我が河原にてしばしの歓談
カラオケに一人で来ている紳士風年末に備えひそかに仕込み
玄関を数歩出てから立ち止まりやっぱり戻ってジャンパー着込む
花壇からほのかに香るライラックなにかの記憶にふとリンクする
愚痴こぼしやる気がないのを棚に上げ休んでないのを自慢する人
冬隣りボジョレーヌーボ食卓にフランス料理一品追加
好きな曲集めてテープに詰め込めば今年の歌がないのに気づき
昔見た懐かしき映画エアチェック老後のためにしっかり保存
枕元小春日和の日が射してぼそぼそ起き出す土曜日の朝
雨上がり路上駐車の車にはフロントグラスに木の葉のカーテン
オンラインパソコン画面の向こう側言葉の端から見えてくるもの
一口のコーヒー体にしみわたり覚醒していく夜明け前五時
スタンドに積み上げられた灯油ポリ冬支度する街の片隅
北の町初雪届けるテレビからチャンネルひねればタモリが踊る
SFの舞台であった新世紀未気がつけばもう未来は今日に
秩父路の仕事帰りに露天風呂休みを一日得したような
山間の温泉入れば団体の老人たちのたるんだお尻
子供らがディズニーランドで跳ね回り勤労感謝に苦笑いかな
初霜がフロントガラスに降りたちて車と同じ息を吐く朝
木枯らしが山裾ぬって噴きろし峠の道は落ち葉のレビュー(山岳編)
木枯らしがビルの谷間をすり抜けて銀杏並木は落ち葉のレビュー〔都会編)
平成13年
朝三枚日中一枚夜三枚寒暖忙し秋のお召しかえ
木枯らしが澄み渡る空駆け抜けて遥か頂に雪模様見え
ホコテンに露店ビラまきコンサート人スクランブルに休日駅前
シャツを出し寝癖ヘアにズボン下げオヤジのそれはお洒落と呼ばれず
ゲーセンのマシンに並ぶ少年ら慣れた手つきで戦争バトル
若き日の来るや来ぬやの待ちぼうけ携帯文化が小鼻で笑う
立冬や十一月の声聞いて街で年末静かに始まる
宝くじ当たったつもりの皮算用これで買値の元はとったり
色づいた公園を行く老婦人腰をかがめて秋ひとつ拾い
解禁日海の向こうの果実酒がお酒の国の店先飾る
七五三おめかしさせて記念写真子がまだ親の天使の記念に
フローリング転寝をする昼下がり伸びた日差しが枕に届く
この夜空一面に降る流星群見れたつもりの夢の中かな
忘年会飲めや歌えの盛り上がり不景気のウサここではらさん
職探す友の電話に付き合って日本の政治にああだのこうだの
気がつけば「笑点」終わり「サザエさん」休日暮れてため息ひとつ
北風に踊る銀杏の並木道枯葉の絨毯さくさくと行く
投稿情報: 午後 05時24分 カテゴリー: 短歌 / 川柳 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
西暦で言えば2001年。
この年の9月には、あの衝撃の同時多発テロがありました。
日本では、小泉総理が誕生。
西では、ユニバーサル・ジャパン。東では、ディズニーランド・シーがグランドオープン。
iPod が登場したのもこの年でした。
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平成十三年九月
病院食「ゆっくり食べろ」とその昔言われた父に言っている今日
女子高生携帯メールで泣き顔にその中身などちょっと気になり
扇風機エアコン切ってサッシ開け九月の空気部屋に招きいれ
台風が去った日本は雨上がり海の向こうは飛行機が降る
回復を伝える今日の天気予報遠い異国の雲行き思う
ゲームしてバラエティ見た画面から米軍隊の出撃届く
あたりまえに過ごす僕らの日常が突然そうでなくなる怖さ
基地の町いつも見慣れた空軍の低空飛行にギョッとしており
ハリウッド映画のヒーローヒロインに全アメリカ人がなっているよう
ライオンや象虎猿が手を組んで鼠一匹退治しにゆく
十二年前の九月を振り返る、マイ短歌グラフィティ。
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九月
残暑でも茜に染まる夕焼けに次第にかかる秋のフィルター
夏休み明けて会社のオフィスには土産の菓子折り北から南
学校に子供らの声帰ってきてジャングルジムの深呼吸かな
ひと夏の遊び自慢で放課後は日焼けしてる子に軍配上がり
いまさらと思えど慣れぬ指先で次長のパソコン五十の手習い
半袖の二の腕摩る霧雨や車のエアコンオフにした朝
たっぷりと陽射しを浴びた街路樹が色づくまでの秋支度かな
灰の島4000人が後にして大地の機嫌伺うしかなし
大雨の後始末なお続く午後けろりと晴れてる憎らしさかな
山肌に雲沸き立ちて秩父峯はその懐に手届かんとす
街の灯がフロントガラスの雨模様君の寝顔にそっと映して
長月や一雨ごとに秋めいて夏の名残を思い出にして
変わりゆく秋の空など眺めつつ女心の行方を思う
今世紀最後のお祭りシドニーでさあさあみんな楽しんどいで
バス待ちでラジオ聞いてたオジサンがイヤホンはずして「メダル取ったぞ」
国背負いメダルに挑む若者に良くも悪くも悲壮感消え
最終回筋書き通りのドラマより筋書きなしのオリンピック
コスモスの花秋風にゆらゆらり日向ぼっこの子猫が欠伸
運動会知らせる空砲隣から厚焼き玉子の匂い漂い
彼岸過ぎ重い腰上げ夏服をしまう裾から珊瑚ひとつ
草むらに秋忍び寄り携帯に手がいきかけた虫達の声
投稿情報: 午後 09時52分 カテゴリー: 短歌 / 川柳 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
9月になってしまいましたが、八月編でございます。
十二年前の夏の、短歌グラフィティ 。
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平成十三年八月
盆踊り東京音頭で拍子取り本日ばあちゃん晴れのお立ち台
夏祭り商店街が着飾って大型店舗に一日対抗
出店らも引き上げ静まる境内の祭りの後に野良猫一匹
外人に道を聞かれて出る英語伝わらなくて日本語になり
田子の浦赤白煙突吐く煙たれこめた雲に飲み込まれゆく
関所越え峠の霧をわけて行く霧箱根八里のトラック野郎
夕暮れに豆腐屋のラッパ鳴り渡るここは東京下町亀有
ペルセウス夏の夜空に降り注ぐ流星たちを目を細め見る
故郷向かう高速渋滞風はなしお盆民族大移動かな
父帰る三人がかりの下の世話病院に送り深々一礼
高原の風が野を越え山を越え我がベランダにやって来た朝
海帰り外国帰り山帰り土産話が飛び交う三時
顔半分日傘の影に隠れてる着物の婦人のうなじ艶めく
夏休み最後の日曜家族連れ想い出作りのワゴンは北へ
夏休み最後の一日宿題を終えてない子は外に出られず
夏空に秋の空気が押し入って取っ組み合いの雨を降らせる
海の家人影まばらな午後三時麦藁帽子と花火の骸
投稿情報: 午後 09時19分 カテゴリー: 短歌 / 川柳 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
正面の自転車の女性裾直し我が視線のスケベさを知る
真夏日の夕暮れどきに一陣の涼風受けてふと立ち止まる
陽射し浴びレタス畑の昼下がりスプリンクラーの水飛沫かな
日曜日洗濯物干しティーブレイクさあいいぞ今日もまた暑くなれ
一周忌準備に追われて空見上げあなたに聞きたいことばかりあり
太陽を背に受け育つ入道雲命宿した胎児の如く
炎天下陽炎揺れるアスファルト安いズックの底が貼りつき
よく冷えた西瓜が切って出されれば大の大人が子供の顔かな
うなじから鎖骨伝って谷間まで一筋汗の悩ましきかな
蜩が暑き一日しめくくり打ち水まいて夕涼みかな
おばあちゃん年に一度のおめかしは櫓に上がる盆踊りの日
「すいません」と女性の声で振り返りよく見てみれば相手は携帯
熱帯夜クーラー壊れて風はなし万事休すでビール一杯 (友人宅真夏の悲劇)
早朝の新宿二丁目裏通り色者たちの夢の跡かな
一周忌無事終え打ち上げ兄弟で夜空に届けロックンロール
老人と茶髪ピアスのあんちゃんがはっぴで車座御輿の準備
町内会自慢の山車が蔵を出てお囃子太鼓で練り歩く街
夕立が稲妻雷従えて火照った町に襲いかかる
知合いの車に手を上げ間違えて上げたその手の持っていき場所
茶畑の坂を登れば丘越える田舎のバスの背には夏雲
里帰り改札出れば出迎えの寡黙な父の不器用な笑顔
盆休み平日昼に満室のホテルの前で口笛ひとふき
亡き母の最初の命日父のいる病院の庭で並んで一服
ガラガラの街を仕事で走りつつ帰省の渋滞情報を聞く
仕事終えТシャツ短パンサンダルに着替えて家路はレジャーモード
雨の午後改札あたりは携帯の誰かと誰かの電波が飛び交う
そうやって駄々をこねてももう終わり楽しい祭りはさあまた来年
捕虫網息子にじっと見つめられ親父の面子にかけての蝉取り
盆過ぎて蝉もそろそろ鳴き疲れ1オクターブキー下がりおり
潮の香が漂う湘南午前四時サーファーたちがうごめく気配
二学期へカウントダウンが始まって友の宿題気になりだす頃
夕飯のおかずを届けてくれた人黙って見送る分別盛り
かき氷アイスコーヒーコカコーラ幸か不幸か止める人なし
ベランダで晩夏の夕陽浴びながら干したТシャツそよそよ泳ぎ
まだまだと夏がしぶとく頑張れどそろそろ秋の気配がどこかに
8月は32日までにしてと思ってしまう31日
歩きながら口紅ひいてるお嬢さんあなたの顔はどこから本番
雲眺めふと気がつけば今世紀最後の夏がおごそかに逝き
投稿情報: 午後 09時17分 カテゴリー: 短歌 / 川柳 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)