“大人計画”の松尾スズキ氏が、芥川賞候補になった自身の同名小説を映画化した精神病院を舞台にしたシチュエーションドラマ。
この映画の見所は、ズバリ、「フツーの人」と「病んだ人」の境界線のいじくり方。
これを、ユーモアのエッセンスを散りばめて、ともすれば、生理的嫌悪感すら起こしそうなヘビーな素材を、消化しやすいように上手に料理しましたね。
主演は、内田有紀ですが、キャストも豪華。
宮藤官九郎、蒼井優、大竹しのぶ、りょう、などなど。
さて、この作品を見ながら、同一線上のいくつかの作品が頭をよぎりました。
ある日、目が覚めたら、見知らぬ部屋で、五点拘束・・・という設定でまず、アメリカの人気ホラーシリーズ「SAW」。
縛られたヒロインを、ドアの物陰からじっと見つめて、「クワイエットルームにようこそ」とつぶやいていたのは、謎の猟奇殺人鬼「ジグソウ」ではなくて、拒食症患者を演じた蒼井優でした。
精神病院が舞台ということで、患者たちの個性的で病的なキャラがテンポよく紹介されていきますが、「心を病んだ人たち」の群像劇というところでは、あのアカデミー賞に輝く名作「カッコーの巣の上で」を思い出しました。
さすがに、主演のジャック・ニコルソンと内田はかぶりませんでしたが、冷徹な看護士を演じたりょうは、この「カッコーの巣の上で」で、アカデミー賞の主演女優賞を獲得した、憎憎しい婦長役のルイーズ・フレッチャーとおおいにかぶりましたね。
そして、それから「精神病患者」で、もう一本。
昔々の渋いフランス映画を思い出しましたよ。
フィリップ・ド・ブロカ監督の作品で、「まぼろしの市街戦」という作品。
この映画。あきらかなコメディではありませんが、ファンタジー映画でもあり、反戦映画でもあるという不思議な味わいの映画。
派手さはないのですが、周到に練られた脚本が見事でした。
この映画に出て来る、フランスの片田舎の、精神病院の患者たちが、やはり皆個性的で魅力的。
知る人ぞ知るカルト映画です。
とくに、踊り子を演じたジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの可憐さに中に秘められた狂気のインパクトは印象的。
映画は、第一次世界大戦末期、解放を待つ北フランスの寒村でのできごと。
人々が逃亡し、ドイツ兵が撤退して、もぬけのからになった町。
患者たちは、敵軍の本隊が町にはいろうとするところで、自ら病院に戻っていきます。
「クワイエットルームへようこそ」もまたそうであるように、精神病院を舞台にした映画のラストでは、いつでも、精神病院の中と外のアイロニックな対比を突きつけてくるというのが、正攻法なのでしょう。
精神病院の中と外、はたしていったい、狂気やウソに支配されているのはどちらなのか。
映画のラストで、退院してゆく内田有紀が、患者たちからもらった色紙や似顔絵を、ゴミ箱に捨てるシーンの表情は、しっかりと女優しておりました。
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