俳優の森繁久弥さんが10日朝、亡くなりました。享年96歳。
我が父は、今はもう他界しておりますが、下手の横好きで、カラオケを趣味にしておりました。
当時まだ、8トラックだったカラオケの機材をどこからか仕入れてきて、夜な夜なうなっておりましたね。
まだ、カラオケ黎明期の頃でしたから、裕次郎やらフランク永井あたりが、当時の父のレパートリーでしたが、とてもとても「上手い」というシロモノではありませんでした。
しゃきしゃきの江戸っ子訛りがありましたから、何を歌っても垢抜けないというのが父のカラオケ。
その父がある日、僕にこういってきました。
「みんなが、歌うようなやつだと面白くない。
なんか、誰も知らないような曲で、ウケそうな曲はないかね。」
もともとが歌唱力がないのですから、ウケるもへったくれもないもんですが、彼の依頼を受けて、まず歌わせたのが、ビートルズの「ミッシェル」。
これは、当時のカラオケにもかろうじてありました。
英語とフランス語の歌詞を、カタカナにして、渡したりもしたのですが、まあ、情けない「ミッシェル」で、すぐに取下げ。
ポールに怒られそうでしたね。
まあ、そんなこんなをしているうちに、ある日ふとラジオで聞いたのが、森繁久弥さんの「青春が花ならば」。
この曲を聴いて、僕は思わずこれだと膝をたたきました。
森繁久弥さんの歌は、歌唱力というよりは、100パーセント「味」で聞かせる歌謡曲。
これなら、我が父でもイケるだろうとふみました。
この歌にほれ込んでしまった僕ですが、残念ながら、どこを探しても、この曲のカラオケが見つかりません。
しかし、これはどうしても父に歌わせたいと腹に決めた僕は、生ギターを引っ張り出してきます。
そして、この曲のテープを聴きながら、コードを拾い、その伴奏をテープに録音。
書き取った歌詞と一緒に父に渡しましたね。
その後、そのテープを聴きながら、練習をしている父の姿は目撃しましたが、仲間たちとの「本番」でウケたかどうかは定かでありません。
しばらくして、父からボソリといわれたこと。
「あのテープ、歌い出すところで、ハイっていってくれたら、よかったな・・・」
♪
「青春が花ならば」
青春が花ならば いつの日か散ってゆく
頬紅き若者よ 熱き血潮のたぎるまま
恋に命をかけてみろ
名曲です。
森繁久弥さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
合掌。
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