1957年の東映時代劇。
監督は、内田吐夢。
主演は、片岡千恵蔵。
大河内伝次郎や、若かりし頃の萬屋錦之助も出演。
原作は、中里介山の大長編時代小説。
こちらは、作者の死により未完となっているのですが、30年もの長きにわたって、連載され続けた大衆娯楽小説の金字塔。
谷崎潤一郎や芥川龍之介も大絶賛。
Wiki でリサーチする限りは、原作の「大菩薩峠」は、傑作なのです。
そして、その小説を原作にしたこの映画。
東映時代劇の脂の乗り切った頃の作品でありますし、出演者も豪華。
一部、二部、完結編と製作されていきますので、観客も入ったということでしょう。
それから、「大菩薩峠」の映画化は、この内田吐夢版だけではない。
大映、東宝、日活。
そして、東映ではこの作品を含めて2回。
時代劇の定番中の定番として、取り上げられています。
なのですが、しかし。
しかしですよ。
残念ながら、僕の評価はいまいちでした。
残念ながら、この映画には、最後まで首をひねりっぱなし。
まず、冒頭、旅の老巡礼を、主人公・机竜之介がなんの理由もなく、刀で斬り殺すシーン。
これがいけません。
おい待て待て。これが、時代劇の主人公のすることか。
僕には、これが、映画的にまるで理解できませんでした。
いや、これにはなにかわけがある。そうせさせるを得なかった理由がやがて明らかになる。
そう思って見ていましたが、結局最後までその説明は一切なし。
「虚無にとりつかれた剣士」という説明は、Wiki にありましたが、それだって、このシークエンスの説明には、なんにもなっていない。
いったいなんなのこの主人公。
おい、片岡千恵蔵!!
そんなわけで、僕としては、のっけから、この主人公には一切の感情移入ができず、そのモヤモヤぱ消えないままで、結局ラストシーンまで引っ張られてしまいました。
虚無感とクールを気取っているけれど、机竜之介には、あの眠狂四郎のような孤高の色気はない。
それでは、アンチヒーローの線かと思えば、ダーティにも成りきれていない。
女も、人の女に手を出して、女房にしてしまう始末。
萬屋錦之介には、兄の仇と命を狙われるが、危機感もなくピリッとしない。
達観した世捨て人かと思えば、色と欲は人並みにある。
ヒーローに不可欠な、必殺技「音無しの構え」もあるのですが、映像的には、「なんなの?」というあっさりとした演出。
どうにも、つかみどころのない、ヒーロー然としない主人公で、僕は正直最後までイライラしてしまいました。
この後の展開では、失明して、夜毎、辻斬りに精を出すと、Wiki で読んでしまいましたが、ますます混迷していくようです。
この続きを見るべきか、ここで見切るべきか。ちょっと悩むところ。
なにか、僕が完全に見落としている、時代劇としての魅力がこの映画にはあるのか。
あるなら、誰か教えて。