この美人才女による本書は、脳科学の視点から論理的に、いじめの構造を説明してくれていて、これは一気に読んでしまいました。
なるほど、やはりそうであったか。
本書を読みながら、膝を叩くことも度々。
「”いじめ”という行為は、人間の種を保存するための本能に組み込まれている。」
とまあ、そういうわけです。
まずは、そもそも人間がなんで、地球の生き物の頂点に立つことができたかというお話。
それは、一人一人の個体としては決して屈強ではない人間が、生きるために集団を作り、チームプレイで他の生物と戦ってきたから。
そして、それはやがて、社会というより高度な協力体制になっていくわけです。
これは、人間が、弱肉強食の生物界で、他の生物に淘汰されないように選択してきた生きるための手段。
集団の中のそれぞれ個人が、なんらかの役割を担うことで、チームが勝ち取った利益を、集団全体で分け合う。
これが人間流。これで、人類はここまで大きく成長してきたわけです。
さあ、人間は集団になり、社会を作ることで進歩してきたということになると、今度はその社会を維持していくために何が必要になってくるかという話になります。
こういう集団の中では、絶対に許されない存在というのがいます。
それは、その役割を果たさずに、利益だけを傍受しようという輩。
これを「フリーライダー」というのだそうです。
文字通り「タダ乗り」です。
こういう奴らが多くなると、社会は当然成り立たなくなる。
もっての他という話です。
当然ながら、彼らは、集団維持のために、排除されるか、見せしめのために、お仕置きを受けるということになります。
これがサンクション(制裁)というもの。
これがないと、誰もが、ズルをして、楽をしたがってしまう。
それでは、社会はやがて立ち行かなくなる。
ですから、サンクションは、社会生活を営む人間には、その社会の維持のために不可欠なものです。
制裁というと、どこかネガティブなイメージがありますが、人類の進化の過程では、これはむしろ正義の行為ですね。
だから、この正義の行為には、ご褒美がでるようにしようと脳は自然に進化していきます。
そのご褒美というのが、ドーパミンという神経伝達物質。
これは、快楽物質と呼ばれるもの。
ドーパミンが分泌されると、人間は快感を感じるようになっています。
つまり、制裁行為をすると、「おっ、なんだかこりゃ気持ちいいぞ」ということになる。
制裁するのは快感。
さあ、ここまで説明されればもうピンときます。
つまり、この気持ちいい制裁行為が、集団の維持という本来の目的を離れて一人歩きしてしまったものが、「いじめ」ということです。
こうやって書いてきてふと気がつきました。
これって、セックスに似ていますよ。
セックスも、もともとは、種の保存のための行為です。
だからセックスにも快感が伴うように脳は進化してきたに違いない。
そして、セックスもまた、種の保存という本来の意味を飛び越えて、快感の部分だけが一人歩きしてエンターテイメントになってしまった。
これも、また「いじめ」に似ています。
その他、お酒しかり、タバコしかり、薬物しかり。
要するに、「楽しいもの」「気持ちいいもの」は、クセになるという話。
だから、その快感を知ってしまったヒトは、いくらモラルに呼びかけても、もうやめられないくなる。
そこで、この本のタイトルになります。
ヒトは「いじめ」をやめられない。
つまり、本能にプログラムされてしまっているものを、理性でコントロールしようというのが、所詮無理な話なんです。
だから、いじめ問題を解決するのに、良心にうったえるなんていう綺麗事は通用しない。
それを理解した上で、じゃあ、どうするか。
まあ、それは、是非この本を読んでお勉強してくださいませ。
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