1976年の東映映画。
Amazon プライムのラインナップから鑑賞。
これは、映画館で見た記憶はありません。
映画を見たら、イラストを一枚描いていこうと思っているのですが、これは主役クラスの三人が、同じ画面に登場するシーンがない構成の映画ですので、3枚作成。
まず犯人役は、高倉健。
この役は、最初、菅原文太にオファーされたそうです。
しかし、脚本を読んだ彼が、この映画の主役は新幹線じゃねえのといって、断ります。
そして、次に話がいったのが東映のドル箱スター高倉健。
それまでの任侠映画路線に限界を感じていた高倉健は、この脚本を見て是非やりたいといったそうです。
犯人役は、人生負け組の倒産した町工場の経営者。
それまでの健さんなら、ちょっと考えられない役どころ。
しかし、健さんは、この役を演じ切り、以降、任侠映画スターから卒業して、幅広い役をこなす俳優へとシフトチェンジしていきます。
あの「幸福の黄色いハンカチ」も、この映画があったればこそ。
宇津井健は、新幹線の運転室室長。
そして、爆破予告された新幹線の運転士には、千葉真一。
あのアクションスターが、終始運転席に座りっきりというのも面白いところ。
当時の東映の岡田茂社長は、「当たる映画は、ハリウッド映画を手本にしろ」という方針の人。
「ゴッドファザー」の大ヒットを受けて東映で作られた映画が「仁義なき戦い」シリーズ。
ブルース・リーが当たれば、早速東映でもカンフーシリーズ。
そして、この「新幹線大爆破」は、「ポセイドン・アドベンチャー」「タワーリング・インフェルノ」で火がついた、パニック映画にあやかった企画。
日本にしかできないパニック映画ということで、新幹線に白羽の矢が立てられたようです。
特筆すべきは、この映画には特に原作はなく、映画のオリジナル・ストーリーだということ。
危険を察知したら直ちに停車するという新幹線の安全性を逆手に取って、新幹線がスピードを落としたら爆発するというアイデアからスタート。
ここから膨らませて、この脚本が執筆されました。
このアイデアは秀逸で、日本よりも海外で高い評価を得ることになります。
そして、この設定をそのまま拝借している映画が、ハリウッドで続々と登場ということになってくるのですが、実は元々のオリジナル・アイデアは、あの黒澤明。
彼の映画化にならなかったシナリオ「暴走機関車」に、このプロットがあるそうです。
これは、是非、黒澤明のメガホンで見たかったところ。
「新幹線大爆破」は、東映の命運を担う作品ということで、けっこう贅沢なキャスティングになっています。
志村喬や丹波哲郎といった大御所。
多岐川裕美、志保美悦子、岩城滉一といった面々もねチョイ役で出演。
ウルトラマンでハヤタ隊員を演じた黒部進。
キャプテン・ウルトラの中田博久。その相棒で、キケロ星人のジョーを演じた小林稔侍などの顔も確認できました。
あの頃の特撮ドラマに夢中になった世代には、これもニヤリ。
並走する新幹線の運転手には千葉治郎。
彼は千葉真一の実弟で、ここで兄弟共演ですね。
わかった人は、思わずニヤリでしょう。
東映としては、鳴り物入りで作った作品でしたが、残念ながら興行的には不振。
けれど後年、ビデオの時代になって、改めて再評価されたという作品。
新幹線の車内セットは、実際にそれを作った業者に依頼して、本物通りに作ったもの。
だいぶお金をかけたそうですが、映画がこけてしまったので支払いができず、これをテレビドラマに流用してペイしたそうです。
西郷輝彦主演の「新幹線公安官」がそれ。
タイトルが刺激的すぎて、国鉄の協力は得られなかったそうですが、鉄道シーンは、西武鉄道が全面協力。
そういえば、東映の撮影所があるのは、「大泉学園」でした。
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