さて、2日目。
お母さんの朝食は、チャーハン(フライドライス)と卵焼き。
そして、ここでも出てきた松茸。
ガイドのキンレイさんは、今朝も手づかみ。
2日目のメインは、なんといっても、ブータンのアイコンとも言われるタクツァン僧院までの山登り。
往復5時間から6時間。
ブータンに観光に始めて来た人なら、ほとんどの人がコースに組み込むブータンの名所中の名所です。
民泊した家からは、およそ車で20分。
聞いてみたら、キンレイさんは、今シーズンすでに20回は、タクツァン僧院に登っているとのこと。
彼は大きなお腹をしているのですが、それは感じさせない歩きっぷりでした。
ブータンのガイドは、その体力はないと、務まらないようです。
さて、タクツァン僧院。
この僧院は8世紀に、ブータンに仏教を広めた聖者グル・リンポチェ(パドマ・サムバヴァ)が虎にまたがりこの地に舞い降りたという伝説から来ています。
「タクツァン」とは、「虎のねぐら」という意味。
断崖絶壁に建てられた、なんとも絵になる佇まい。
キンレイさんの話によれば、1998年に火災が起き、タクツァン僧院は一度消失してしまったそうです。
しかし、この僧院は、国民の熱いリクエストにより、ブータン政府の全面的援助で、その後再建築されています。
タクツァン僧院以外にも、このあたりには山岳僧院が13ほど点在しています。
駐車場から山道の入り口をはいって、少し歩くとすぐに、馬たちに出会います。
みんな、日本で見る競走馬から比べれば小さめ。
頼めば、ゲストを乗せて、途中までは上がってくれます。
しかし、こちらは、野菜畑と山歩きで鍛えた健脚。
今年還暦とはいえ、そこそこ自信はありましたので、マイペースで歩かせてもらいました。
雨上がりだったので、道は多少ぬかるんでいましたが、ゆっくりゆっくり、確実に、一歩一歩登ります。
そうそう、言い忘れましたが、ガイドのキンレイさんは、仕事中はずっと、ブータンの男性用民族衣装であるゴを着用。
ドライバーのデチェンさんも、同じです。
これは国から義務付けられているそうです。
もちろんこの山登りにも、彼はそのゴを着用。
この登山で、いろいろなグループをエスコートしているガイドさんと会いましたが、すべてのガイドさんは、同じようにゴを着用していました。
標高は2900mくらいのところで、かなり高いのですが、高山病の心配はあまりなさそう。
彼は、しきりに「水飲んで。」と言ってくれます。
日本ではこれくらいの高さになると、森林限界を超えて、一気に高い樹木はなくなって、高山植物の天下になるのですが、ここブータンでは、ご覧の通り青々。
北には、ヒマラヤの7000m級の高峰も控えるブータンでは、これくらいの高さは、高いうちに入らないよということなのでしょうか。
その青々とした樹木や花を指差しては、いろいろとその名前を教えてくれるキンレイさん。
さすがに、ガイドです。
山道の周辺の樹木や花は、もちろん日本語で教えてくれます。
カラマツ。
杉。
柳。
樫。
シャクナゲ。
馬酔木。
あとで見せてもらったのですが、彼のメモ帳には、ゾンガ語、英語、日本語で同じ花を列記したメモがビッシリ。
とても勉強家のようです。
下の写真は、ツァツァと呼ばれるもの。
高さが5-10センチほどの円錐状のもので一見したところ素焼きの塔のよう。
キンレイさんの説明によれば、これの正体は、遺骨を粉々に砕いて粘土と混ぜ合わせたもの。
ブータンには、お墓も位牌もありません。
このツァツァは、その死者の霊を弔うもののようです。
さて、濃い霧の中から、次第に僧院が見えてきました。
山を登りきると、僧院までは、およそ800段の石の階段。
切り立った崖沿いに作られているので、けっこうスリリングです。
しかし、世界中から来ている観光者たちは、記念写真撮影に余念なし。
あちらこちらで、パチパチとやってるので、その先を抜けて先に進みます。
もちろん、僕も一枚。
この滝が見えてくると、タクツァン僧院までは、最後の登り。
僧院の中は、撮影禁止なので、まずはブータンの顔とも言える、タクツァン僧院の外観をたっぷりとお届けします。
ちなみに、デジタル・カメラは、キンレイさんに預けてしまいましたので、写真はすべて彼の撮影によるもの。
山岳の自然をそのまま上手に取り込んだ僧院の建築様式は、自然を重んじるブータンらしさが溢れていました。
石段途中の、撮影スポットから、日本語が聞こえてきました。
元気なおばさんたちです。
「どちらから来られました?」と声かけると、一人が元気よく「ジャパン!」
いやいや、それはわかってるから声をかけているんですが。
「僕は、埼玉ですが。」
そこで、はじめて元気なおばさんの目がシロクロ。
「私、熊本よ。あなた日本の人なんだ。」
どうやら、この純粋な日本人の僕が、ブータンの人に見えたようです。
上等。
さて、同じ石段のジェットコースターを登って下って途中のカフェテリアまで戻ると、そこでランチ。
往路はここで、クッキーと紅茶をいただきました。
復路のランチはビュッフェスタイル。
朝ごはんを、あれだけガッツリ頂いたのに、やはり、ここでもお腹いっぱい食べてしまいました。
普段は、朝昼の1日2食でも、何にもしなければ太っていくのに、このツアーでは、完全1日3食。
よほど歩かなければ、これは絶対に太る。
しかし、旅に出ると、なぜかそのセーブが効かなくなります。
とにかく、野菜が豊富で、素材の新鮮さを前面に押し出したブータン料理は、今の僕の好みにドンピシャリ。
わかっちゃいるけど、やはり食は進みます。
上等。
とりあえず、ダイエットは、旅行中は頭から外します。
帰ってから考えましょう。
こちらには、ヘルスメーターがなくて幸いです。
カフェテリアの中でも、どこかで日本人らしい男性グループの声。
聞けば、今回の秋篠宮様ご一家の訪問のスタッフとして、ブータンに来ているクルーのメンバー。
明後日には、ご一家よりも、一足早く帰国なので、最後にこのタクツァン僧院に登りに来たとのこと。
カフェテリアで、ビュッフェからチョイスしたランチのメニューはこちら。
さて、こいつらの話もしておかないといけません。
犬です。
とにかく、ブータンには、いたるところに犬がいます。
もちろん首輪のある犬など皆無。
ほとんどが飼い主不明の地元密着の犬たち。
その犬たちが、とにかくやたらとのんびりしています。
そして、ほぼ大多数の犬は、好きなところに寝そべって、ゴロゴロしているわけです。
人間に危害を加えられるなんてことは、コレッポッチも考えていないその無防備さ。
とにかく、観光客に対しても、ほとんど警戒せず、腹を向けてスヤスヤ眠っているわけです。
日本のように、首輪をつけられて、おめかしして、飼い主が散歩させている犬など一匹もいません。
いってみれば、犬も自然そのまま。
飼い主は、地元の人全員。
そんな感じです。
この世に生を受けているすべてのものを慈しむ仏教思想が根底にあるのでしょう。
ブータンの人たちの、優しさがこの犬たち一匹一匹に染み込んでいるのがわかります。
さて、タクツァン僧院を降りてくると、入り口近くには、沢山のお土産やさんたちが、店を広げていましたが、これは最終日と決めていましたのでスルー。
駐車場で待っていたデジェンさんの車に乗り込みます。
「タクツァン僧院ハ、ドウデシタカ?」
彼もそこそこの日本語を喋ってくれます。
そこで試しに言ってみました。
「タクツァンには、観光客が、タクツァン。」
デジェンさんも、キンレイさんも「・・・」
失礼いたしました。
残念ながら、お二人に日本のダジャレは通じなかったようです。
さて、この後は、車で2時間ほど揺られて、パロ県の、隣にあるハ県に向かいます。
歩きながら、キンレイさんに教えてもらったゾンガ語。
「デジェン、ハル・ジョゲ !」(デジェン、ハ県へ行こう!」
パロから、隣のハに行くには、途中シャレラ峠を越えていきます。
道路は、途中から舗装も怪しくなり、完全な山道。
前日あまり寝ていませんでしたので、寝ていけばいいと思っていましたが、そうは問屋がおろさない。
いやいや、スリリングな道でした。
とにかく、日本ならばどんな山奥でも絶対にあるカーブミラーが皆無。
対向車が来るか来ないか、どうしてわかるの?
そう聞いてみたら、彼の答え。
「イマジネーション!」
おいおい。マジか。
冷や汗の流れる思いで走りながら、シャレラ峠の頂上に到着。
ここは、標高およそ3900m。
キンレイさんのスマホに、高度を計測するアプリがあるので、彼が教えてくれました。
日本の富士山よりも高いということになりますが、景色はまるで違います。
富士山頂に、こんな旗はなびいていません。
この五色の旗。
よく見ると一枚一枚に曼荼羅が印刷?されています。
キンレイさんの説明。
「この五色は、フィフス・エレメンツを表しています。」
それはつまり、自然界の五大要素。
青は水。
白は風。
赤は火。
緑は樹木。
そして、黄色は大地。
この旗は、もちろんここだけでなく、ブータンいたるところで見られます。
この白い旗も、ブータンのいたるところで見られます。
これは、死者の霊を慰めるために立てられるもの。
ブータンでは、死者は火葬されますが、墓石にはなりません。
そのかわりに、この旗が、いろいろなところで風になびいています。
到着した時には、山から見下ろす景色は、雲で覆われていましたが、キンレイさんと二人であたりを散歩しているうちに、みるみると晴れてきました。
預けたデジカメで、一生懸命撮影してくれています。
すると、雨上がりのシェレラ峠に、見事な虹。
圧巻でした。
チェレラ峠から先は、ハ県になります。
峠から町に降りてきて、また少し丘を登ったところにあるリスム・リゾートが本日の宿泊場所。
僕の泊まったコテージがこちら。
ディナーは、7時からでしたが、その前に雨が降り出しました。
すると、その10分ほど前にノックの音。
開けると、ホテルの女性スタッフが、傘を届けてくれました。
夕食のレセプション・ルームまでは、庭を通って歩いていくので濡れないようにとの心遣い。
ホテルの夕食は、こんなメニュー。
このホテルでは、Wi-fiが繋がったので、本日一日分の写真をiPad に仕込んで、三人で鑑賞しながらの夕食。
食事終了後、ここまで二日間のお二人の見事なコンビネーションワークと、ブータン流おもてなしに感謝の意を表してささやかなプレゼントをいたしました。
それがこちら。
ガイドのキンレイさんと、運転手のデチェンさんの背後に見えるのは、さきほどのチェレラ峠にかかった虹です。
イラストは、お二人にメールで送りました。
キンレイさんは、このイラストを、さっそく、LINE のプロフィールの写真に使ってくれたようです。
日本からやってきた、すけべ親父の一人旅をサポートしていただき、ありがとうございます。
あと、二日間よろしくお願いいたします。
ちなみに、このお二人、ホテルでの夕食は、昨日のような、手づかみではなく、きちんとナイフとフォークを使っていました。
食べ方は、TPOに応じて、対応できるようです。
最後は、また教えてもらったゾンガ語。
「ジム・チャー・デレ。」(おやすみなさい)
明日は、ハの町を散策して、ブータンの首都ティンプーへ移動します。
良い旅をおくっていますね
うらやましい限りです
ただ山登りはきついね
投稿情報: 大五 | 2019年8 月26日 (月曜日) 午後 02時08分