新宿ピカデリーまで、映画を見に行ってきました。
ドキュメンタリー映画です。
監督は、森達也。
オウム真理教のドキュメントや、佐村河内守のゴーストライター問題を扱ったドキュメントを撮ってきた監督です。
今回は、新聞記者のドキュメント。
カメラが追った新聞記者は、東京新聞社会部の望月衣塑子記者。
内閣官房長官記者会見で、菅官房長間に対して、忖度しない質問で食い下がったことで名を挙げた女性記者です。
彼女を追うことで、政府からの同調圧力に与する、今の日本のマスコミの忖度体質に一石を投じるドキュメンタリー。
政治にとりわけ関心があるというわけでもありませんが、「関心がない」とも、言っていられない年齢になってきましたので、基礎知識だけはと、元経産省官僚の古賀茂明氏のメルマガや、元文部科学省次官の前川喜平氏の講演などは、YouTube で以前から追っかけていました。
その両方のソースで、彼女の名前は、度々出てきましたので、その活躍ぶりは、承知していました。
彼女が原作を描いた映画「新聞記者」も、先日見たばかり。
政治を扱った社会はサスペンスとしては、なかなか見応えのある映画でした。
その「新聞記者」のプロデュースをした河村光康氏が、本作もプロデュース。
政府に対しては、腰が引けっぱなしのマスコミに代わって、映画というメディアを使って「物申す」肝の座った人のようです。
そもそも、なんでドキュメント映画を見に行く気になったのかという話です。
答えは明快。
テレビのニュース報道が、あまりに信用できないから。
とにかく、現政権に忖度しまくりで、政権の不利益になる報道はしないという体質です。
それがわかってからは、テレビのニュースは一切見なくなりました。
ニュースソースは、もっぱらYouTube。
そこに真実のすべてがあるなどとは思いませんが、少なくとも多様性はあります。
玉石混合ではありますが、判断の材料は提供してくれます。
ニュースは、それでいいんだと思います。
NHKが声高々に言う、「公平中立な立場」なんてものは、そもそも有り得ない。
そんなことを偉そうに言って、政権にすり寄っているから腹が立つわけです。
「我々は、常に政権を応援する立場です。」
NHKも、いっそ、そう言って報道してくれているほうが、はるかにい潔い。
そうすれば、現政権を応援する人は見るだろうし、そうでない人は見ないだけのことです。
事実を伝えるドキュメント映画も、中立でなければいけない。
これも違いますよ。
ドキュメント映画とは、素材として、「記録映像」を使うだけで、それを編集して、作品にする過程では、絶対に作り手の意思が入ってきます。
それが脱線して、「やらせ」までエスカレートすると、ドキュメンタリーとしては、失格ですが、少なくともドキュメント映画は、ニュース映画とは違います。
作り手の主張はあっていい。
じゃあ、この映画を撮った森監督のメッセージは何か。
それは、この映画を見た人がそれぞれ考えましょうという話。
正解はありません。
僕が語るのも野暮です。
誰が何を感じようと、それは自由です。
それが映画というものです。
その人がそう思うなら、それがその人にとっての正解。
誰かの意見を聞いて、自分の感想が怪しくなったら、もう一度見てみればいい。
もちろん、本日鑑賞してきた、僕なりのホヤホヤの感想はありますよ。
でもそれはそれ。
それをどうだというつもりも、ありません。
つまり、この映画を鑑賞した人が、それをきっかけに何かしら考えるところまでいってくれれば、監督の目的は、それである程度達成していると思われます。
いい映画とは、総じてそういうものです。
声高に、作り手が、自らの主張をアピールする映画は、作品としては二流。
一流の映画というのは、観客に、考えさせる材料を、巧みに織り込んでいる映画です。
そして、結論は観客に委ねます。考えさせます。唸らせます。
それが余韻というものでしょう。
公開したばかりの映画ですから、ネタバレは控えますが、森監督は、映画のラストで、象徴的に第二次世界大戦中の一枚の写真を提示します。
しいて、森監督のメッセージがなにかといえば、それでしょうか。
そして、あともうひとつ。
監督は、ドキュメンタリーにもかかわらず、映画の中で突如唐突にアニメを使ってきました。
あのあたりにも、監督の主張は、垣間見えます。
そして、映画のタイトルを「衣塑子が来た!」ではなく、「i」にした意味とは・・
平日の午前中の上映でしたので、観客の平均年齢はかなり高かったのですが、やはりこの映画は、是非若者に観に行ってもらいたいところ。
爺の使命は、それを伝えておくことくらいでしょうか。
若者諸君。
筋金入りのKYだけど、衣塑子お姉さんは、頑張っていたよ。
みんなで観に行ってあげましょう。
ドキュメンタリー映画ではありませんが、新聞記者を主人公にした映画で、思い出すのがアラン・J ・パクラ監督の傑作「大統領の陰謀」。
ワシントンポストの新聞記者が、ニクソン大統領の犯罪に、地道な取材で肉薄していくドラマでした。
映画では、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンが記者を熱演していましたが、この映画での、俳優ではない彼女が「本気の質問」をしている姿は、ちょっとあの映画の二人と被ります。
あの映画の原題は、“All the President's Men”
いまの日本のマスコミは、さしずめ「すべて安倍政権のポチ」
あら。自分の感想は述べないなんていっておいて、ポロリと出ちゃいましたね。
これは失敬。
ところで、彼女、中学の時によく注意された風紀委員の女子に似てるんだよなあ・・
コメント