さて、T牧場午後の部です。
たっぷりの休憩時間をとって、作業は午後2時30分から。
ちなみに、本日指導をいただいている両名は、どちらも酪農ヘルパーの方です。
つまり、本日は牧場経営者は、家族水入らずのお休みをとっているということになります。
雌牛たちの乳は、雪が降ろうが、雨が降ろうが、1日2回朝晩の搾乳をしないとパンパンになってしまいます。
つまり、この酪農ヘルパーの方達がいるおかげで、経営者の皆さんはお休みが取れるという状況。
その酪農ヘルパーは、北海道の多くの地域で人手不足に悩んでいますが、もちろんこの地区でも足りていません。
今回お世話になっている会社は、その酪農ヘルパーを牧場主たちに斡旋するのが業務です。
酪農ヘルパーという仕組みができたのがおよそ20年前。
この会社も、まだ起業して3年目です。
では、そのヘルパーさんの日給って、いったいどれくらいか。
例えば、このT牧場の作業の場合、実作業が早朝4時30分から、午前8時まで。
そして、午後の部が2時30分から5時30分まで。
実働およそ6時間30分。
これで1日あたりの会社からヘルパーへの支払いは、都会の介護ヘルパーなどと比べれば雲泥の差です。
ちょっとビックリするくらい。
ちなみに、セブンイレブンの時給は980円。
時給換算してみても破格の高賃金でした。
しかし、それだけの日当を払ってでも、もっとヘルパーを増員してほしいという牧場からの要請は、日増しに大きくなっているそうです。
その牧場主たちの期待を一身に背負って、この会社の営農部長さんは、東京での「新農業人フェア」にはるばるやってきてエントリー。
僕のような、未経験高齢者にまで、研修のチャンスを与えてくれたというわけです。
とにかく、ニーズは圧倒的に足りていないわけですから、一定のスキルさえ身につければ、仕事は必ずあるということ。
これは大きいですね。
野菜作りは出来ても、営農未経験百姓としては、売れるかどうかという不安はあります。
ですから、北海道という最果ての地でも、とりあえず、収入のベースとなる仕事があるということは大きい。
就農仲間に声をかけてもらう以前は、酪農という選択肢は、僕には正直ありませんでしたが、これは真剣に考える余地ありと思い始めています。
まだ、研修は初日ですが、今回はせっかくいただいた機会ですので、大いに学習して戻りたいと思います。
さて、午後の部も、基本的に作業のルーティンは、早朝の部と一緒。
ここでは、早朝の部になかった作業だけ紹介させてもらいます。
因みに、親の雌牛たちが繋がれている牛舎が搾乳のメインになりますが、そこで彼女たちは、子供を生みます。
では、その生まれた子牛たちは、どこにいくのか。
この子たちは、生まれると、最初だけは、母親の乳を飲ませてもらえますが、基本的にこれは、人間に提供される売り物。
すぐに、母親から引き離され、別の牛舎に移されて、哺乳という調合されたミルクで育てられます。
生まれて一ヶ月くらいは、こんな個別の部屋です。
そして、水を飲み、干し草を食べれるようになると、隣の囲いに移動。
その後年齢を重ねていくごとに、囲いを移動するというような流れです。
餌の食い負けが起こらないように、常に同じ大きさの子牛同士を一緒にさせます。
ここの子牛たちの大好物は、配合飼料。
ちなみに、乳牛に育つのは当然のことながら雌牛。
お産で、雄牛が生まれると、すぐに売られてしまうそうです。
または、雌牛でも、子牛の間は、自分の牧場で世話をすることはせず、専用の外部施設へ預けてしまう農家もあるようです。
それから、また隣の牛舎へ移動すると、今度は人工授精で妊娠させる前の、若牛たちが集められています。
ここでも彼らの大好物は、配合飼料。
若牛たちの配合飼料は、子牛たちに比べやや濃厚。
柵の前に撒くと、勢いよくに食べ始めます。
そして、ここで人口授精を行い、妊娠して乳を出す雌牛に成長すると、搾乳牛舎に移動するということになります。
そして、メインの牛舎に戻ると、再び朝の作業手順となります。
ちなみに、この牛舎には、同じ毛並みの猫が五匹。
彼らがいるおかげで、ネズミが悪さをしないとのこと。
牛たちと、ちゃんと共生していました。
ちなみに、本日学んだこと。
牛は、非常に習慣性が高い動物なのだそうです。
例えば、隣の牛舎から搾乳のために連れてきた牛は、特にヘルパーさんが誘導しなくても、きちんと朝搾乳した番号と同じベッドに自分から入っていきます。
一度学習したことは、何度でも繰り返す性質。
これが習慣性です。
搾乳するときもそう。
常に、ミルカーをセットする側から、乳首のクリーンアップも、搾乳チェックも行わないと、牛たちはとても機嫌が悪い。
それは、手を入れる方向、指使い、こちらの歩き方に至るまで、いつもと同じであればあるほど、彼らにとってはストレスがないという訳です。
つまり、なにが牛にとって心地よいか。
あるいは、ストレスフルではないか。
それは、決められたことを、決められた時間に、決められたように繰り返すことが、牛にとっては心地よいというわけです。
それを、僕のような不審人物が突然入ってきて、決められたリズムを乱せば乱すほど、彼女らは不機嫌になるというわけです。
なかなか奥が深い。
そんなわけで、酪農研修初日は無事終了。
明日の早朝は、また同じT牧場で最終研修。
午後からは、この高橋牧場とは違うスタイルの、斉藤牧場へお伺いすることになります。
ちなみに、作業終了後の本日1日の歩数を確認。
16458歩。距離換算にして、およそ12㎞。
現役以来、久しぶりにこれだけ歩きましたよ。
野菜作りでは、ここまでの歩数は到底稼げません。
今夜はきっちりと夕食をいただけそうです。
シャッターを閉めて外に出れば、北海道の綺麗な夕焼け。
本日は、お疲れ様でした。
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