雄呂血
我が家のDVDコレクションでは、邦画の一番古い映画は1931年の「マダムと女房」。
これより古い映画となると、ちょっと見た記憶はありませんので、日本映画としては、最も古い映画鑑賞の記録更新ということになります。
Amazon プライムで見つけましたが、クラシック映画ファンとしては、嬉しくなってしまいます。
本作の主演は、阪東妻三郎。
田村高廣の親父さんというよりも、田村正和の親父さんと言った方がピンとくる人が多いと思います。
しかし、田村正和よりも、やはり田村高廣の方に、阪妻の顔形の遺伝子はしっかりと受け継がれているんだよなあ。
いやあ、とにかく、この親子はそっくりです。
この映画は、1925年の映画です。
大正14年というわけですから、これは、今はなき我が母親の生まれた年です。
坂東妻三郎のプロダクション第一回作品ということですから、まあ気合は入っていますよね。
ただ驚くのは、この時の阪妻が23歳。
なんとお若いこと。
まだサイレント映画の時代ですが、阪妻はメリハリのあるわかりやすい演技で、グイグイと物語に引き込んでくれました。
今ならオーバーアクトなんて言われてしまいそうですが、サイレント映画なら、これくらいでないと観客には伝わりません。
映画は、サイレント時代の映画のほとんどがそうであるように、活弁師が物語を進めます。
本作は、女性の講談師が新たに録音し直したバージョン。
なかなか楽しめました。
映画を見て正直に思ったことは、申し訳ないが女優がみんな美人ではないこと。
阪妻の相手役を演じるのは、環歌子と森静子。
当時の映画界では、そこそこのスターだったようですが、少なくとも今の僕の物差しで申せば、到底美人女優のカテゴリーには入りません。
後の大スターでも、例えば高峰秀子くらいになると、文句なく美人女優ですが、田中絹代となると、僕の物差しでは美人女優に入りません。
まあ、それでも当時の観客達は、少なくとも、この環詩子が、少なくとも自分の女房よりは、美人であると認識して、映画館に通ったのでしょうから、美人の物差しは、時代とともに変わっていくということでしょう。
ここで僕の個人的好みを言っても、はじまりませんね。
本作は、初の本格的剣戟作品として位置づけられているエポックメイキングな作品です。
若き阪妻の怒涛の殺陣が、本作を日本映画史に燦然と輝く傑作としてその名を残す作品にしています。
言ってみれば、この映画のチャンバラが、後の「スター・ウォーズ」の、ライトセーバー対決に、綿々と引き継がれていると言って良いでしょう。
阪東妻三郎の演技は、今の物差しで申せば、かなり大仰で、言ってみれば「大根」の部類はいるのかもしれません。
しかし、それゆえに、阪東妻三郎の存在感は、本作では際立ちます。
「大根役者」で上等。
これが本当の大根「雄呂血」。
失敬。
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