Amazon プライムの映画のサムネイルを見て、ちょっと気になったホラー映画があったので鑑賞しました。
やはり、猛暑の夜はホラー映画を見て、涼しい気分になりたいもの。
スタッフ・ロールを見たら、またしてもこの人の名前がありました。
プロデューサーを務めたのがジェームズ・ワン。
このジャンルの映画においては、この人は一時期のスティーブン・スピルバーグ髣髴させるがごとく、精力的にプロデュース業に勤しんでいるようです。
「ミーガン」(原題:M3GAN)は、コロナ騒動真っ只中の2022年に公開。
AI技術を駆使した人形が引き起こす恐怖を描いています。
この映画を語るにおいて、外せないのはまさに、この年にOpenAIによるChatGPTで世界的に大ブームとなった対話型AIの登場でしょう。
まさに、このムーヴメントの洗礼は、恥ずかしながらこの老人もしっかりと甘受しています。
様々な問題があるにせよ、一気に身近になったこのAI技術のブレイクスルーは、今後様々な分野に影響を与えるであろうことは、この素人にも想像がついています。
「2001年宇宙の旅」で、木星に向かう宇宙空間で人間に牙を剥いた人工知能を持つコンピューターHALが、いまや可愛い人形になって、子供部屋に並べられたわけです。
人形をテーマにしたホラー映画は、それなりに長い歴史を持っています。
代表的な作品としては、1988年の「チャイルド・プレイ」シリーズが挙げられます。
この映画では、殺人鬼の魂が宿った人形チャッキーが登場し、多くの観客を恐怖に陥れました。
「怖い」と「可愛い」は、実は、ホラー表現においては、紙一重だということを知らしめた映画ですね。
古い話をして恐縮ですが、「人形怖い」の洗礼は、個人的には小学生の時に経験しています。
それは、忘れもしないテレビドラマ「悪魔くん」の第3話「首人形」の回でした。
人形工場に並んでいるマネキン人形が、夜な夜な一つ目の口裂け女になって、人々を襲うという話です。
いやあ、とにかく、子供心にも、この人形が怖かったのなんの。
とにかく、このテレビ番組を見て以来、デパートのマネキン人形が怖くて、彼女たちとしばらくは目を合わせられませんでした。
それは、気が付けば大学時代まで続いていました。
デパートの夜警のアルバイトで、夜中の婦人服売り場のマネキンを懐中電灯で照らしたとき、声を上げてチビリそうになった記憶があります。
「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」などのスーパー・マリオネーション番組も好きで見ていましたが、その表情がリアルであればあるほど、どこかで「不気味」さを感じることには気が付いていました。
これはずっと後に、リアルな人形などを見ると、人間の感覚には「不気味の谷」という現象が起こることがあると知るわけです。
「不気味の谷」現象は、人間に非常に似ているが、完全には人間ではない存在に対して、人々が強い不快感や恐怖感を抱くという現象。
人間の脳は、視覚的に「人間」として認識されるが、動きや表情が微妙に不自然な場合に、違和感を感じるように出来ているようです。
これを不気味と感じるメカニズムがあるわけですね。
この違和感を脳内で処理しきれずに、人間は、リアルな人形に不快感を感じることになるわけです。
人類の進化の過程で、理解しがたい異常な存在には警戒心を抱くことが生存に直結する重要な能力でした。
このため、不自然な存在に対して強い不快感や恐怖感を覚えることが、遺伝子に組み込まれた防衛メカニズムである可能性があるというわけです。
このように、「不気味の谷」現象は、視覚的な認知と進化的な防衛メカニズムが複雑に絡み合って発生するものです。
これを理解すると、僕が子供の頃に感じたマネキン人形に対する恐怖もストンと腑に落ちます。
そして、この人間の本能に根差した「不気味の谷」の存在を逆手に取れば、人形を駆使した怖いホラー映画も出来るということになるわけです。
AI に対して得体のしれない恐怖を感じる人はまだ少なくありません。
これも、よくよく考えてみれば、テクノロジーに疎い普通の人には、AI が手にした驚異の対話能力が、なにか「得体のしれない不気味さ」に感じられてしまうからに他ならないでしょう。
ジェームズ・ワンが手掛けたホラーに、「アナベル」という人形が登場するシリーズがあります。
このシリーズも有名で、呪われた人形が家族に災いをもたらすストーリーが展開されます。
但し、「ミーガン」は、これらの伝統的な人形ホラー映画の要素を取り入れつつも、AI技術を駆使した新しいアプローチを採用しています。
そこに、「悪魔」や「悪霊」の存在はありません。
ミーガンは、人間が科学で作り出し、子供の友達として設計されたAI人形であり、その高度な学習能力と自律性が恐怖の源となっていきます。
「ミーガン」には、ジャパニーズ・ホラー映画の影響も見られます。
特に「呪怨」や「リング」といった作品は、確実にこの作品にも影響を与えていますね。
特に顕著なのは、ミーガンの動きです。
あのかくかくとした不自然な動きは、貞子や加耶子に通じるものがあります。
どうやら、人間の恐怖を感じる本能は、「不自然であり得ない」動きに敏感に反応するようです。
これをよくよく理解できている監督は、ホラー映画の監督としてのセンスに長けているといえるでしょう。
日本のホラー映画監督のトップランナー清水崇や中田秀夫、「死霊のはらわた」のサム・ライミも、一流どころは皆これを心得ています。
「ミーガン」は、伝統的な人形ホラー映画の要素を取り入れつつ、AI技術や現代社会の問題を反映した新しいアプローチを採用しています。
ジェームズ・ワンの巧みな映画製作スタイルや、ジャパニーズ・ホラー映画の影響も感じられるこの本作は、観客に新たな恐怖体験を提供します。
AI技術の進化とともに、ホラー映画も新たな次元へと進化していることを示す一例と言えるでしょう。
さて、このAIという新しい技術と、人間は上手に付き合っていけるのか。
それがPC、スマホ、車、人形など、たとえどんな姿になろうとも、間違いのないことがふたつ。
敵は、これからも、日々学習して進化し続けるということ。
そして、彼らが学習していくことは、つまりは、清濁含めて我々がネット上に日々吐き出している情報そのものだということ。
果たして、これからのAI 技術を牛耳るのは、悪魔か天使か・・・
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