さて、この時期の畑のメイン作業は、なんといっても定植。
概ねやり終えましたので、ラインアップをご紹介。
今回は、苗探しは粘りました。
これまでのシーズンは、サラリーマンをしながらの百姓業でしたので、回れる園芸店は限られていました。
今回は、近隣の農産物直営所を、片っ端からはしご。
去年は見つけられなかった苗もゲット。
ほぼ当初の予定どおりの定植ができました。
今シーズンのテーマは、「一人でどこまでできるか」。
ということで、例年は畑の全エリアを使う事はなかったのですが、今年はフルサイズ使用。
当然今までの資材だけでは足りなくなりましたので、これも増やしました。
巷では、新型コロナウィルスの感染騒動で、少々パニック気味。
しかし幸いかな、この騒動の中でも、百姓は毎日畑で「一人で」作業ができますので、感染のリスクがあるのは、買い物だけ。
ここだけは早く済ませておきたいという思いがありましたので、天気の悪い平日などを狙って、足繁く通っておりました。
勉強させてもらった、有機農家がおっしゃってました。
「苗を買ってくると、もうその時点で農薬が使われてしまっているので、有機栽培とは言えない。」
おっしゃる通り。
しかし、百姓新入生には、まだまだ残念ながら、育苗できるスキルがありません。
もちろん、そのために必要なハウスもなし。
やむなく、今年も苗を購入してきますが、目指すは、種をとり、育苗して、その苗を育てるサイクルを、畑の中で確立する事。
これを30種類以上の野菜で回したいわけですから、農業のビジネスの観点からみればかなり脱線しています。
単品種大量ロット出荷が、一番効率よく儲けにはなるからです。
しかし、妥協は見込みつつも、出来る限り、多品種小ロットの野菜づくりをするのが理想。
最終的に、自分のスタイルが出来上がるまでには、まだ何シーズンもかかるでしょうが、もともと、定収入のあるサラリーマンを辞めて、就農をするのですから、あまり「儲け」にこだわるのではつまらない。
幸い、養う妻も子もいない身なので、ここはおもいきり自由にやる事で、新規就農することの元を取ろうと思っています。
何度も言いますが、貧乏上等。
失礼。
話を元に戻します。
定植でした。
今回はこれ。
キュウリです。
キュウリは、蔓が伸びていく野菜。
このトンネルアーチに定植しました。
キュウリは、商品としても定番中の定番。
出来るだけ長く収穫したいので、定植時期を2回に分けました。
今回は、アーチの手前に、18株。
残りは、約2週間インターバルを置いて、ゴールデンウィーク後に定植予定。
品種は「夏すずみ」
さて、苗をよくみてください。
一枚だけ明らかに、違う葉があります。
これは、実はカボチャの葉です。
「接木」という技術を使っています。
園芸センターに行っても、キュウリの苗は、接木がメイン。
では、接木とはなにか。
普通のキュウリには、通常栽培をしていると、自然にブルームという白い粉のようなものが、表面に噴いてきます。
これは、キュウリの自己防衛策で、これにより、彼らは寒さやバイ菌から身を守っているわけです。
しかし、これを見た都会の生活者たちはこうおっしゃる。
「なにこれ? なんだかカビみたいで、いやだわね。」
そんな声を聞いて、生産農家は、最初はセッセと一本一本綺麗にブルームを拭き取っていたわけです。
しかし、なにせ売れ線の野菜であるキュウリ。
この手間は、半端じゃありません。
そこで、初めからブルームを出さないキュウリが作れないものか。
生産農家はこう考えます。
そこで、編み出されたのが、この「接木」という技術。
なんと、カボチャの苗にキュウリの苗を接木すると、このブルームが発生しなくなったというわけです。
この成果で、あれよあれよという間に、接木は一大ブーム。
さあ、これで、めでたしめでたし。
いや、残念ながらそうはなりませんでした。
キュウリだって、ちゃんとした生物です。
人間に、身を守るコートを剥ぎ取られてしまった後で、彼らは考えます。
「ブルームが出せないのだったら、皮を硬くするしかない。」
そうなんですね。
接木の技術で作られるようになったキュウリの皮は、次第に硬くなり始めます。
すると、都会の生活者たちはまた、ぼやき始めます。
「なんだか、最近のキュウリは、皮が硬いわね。昔のキュウリは、もっと柔らかかったわよ。」
その声を聞いた、生産者は、また品種改良をして・・
というわけで、生活者に売るための、品種改良は、野菜の世界では、日夜繰り広げられているわけです。
もともと、ブルームなんて、なんでもないものです。
生活者は、そんなものがついていようといまいと、料理の際には洗うわけですから、問題にするべきことではなかったというのが正解。
むしろ、ブルームというのがどういうもなのか、きちんと説明さえしていれば、生まれなかった技術が「接木」です。
野菜ソムリエの講座で、担当講師が言ってました。
よくよく考えてみると、ブルームを排除したことによって、得した人は誰もいない。
生産者も。
生活者も。
キュウリ自身も。
正しい知識があればよかっただけのこと。
まあこの手の話は、野菜全般にあることです。
なにもキュウリに限ったことではない。
スーパーに並んでいるのは、みんな綺麗な野菜ばかりです。
もちろん大きさも揃っていて、きちんと整列しています。
もちろん、そういう野菜が売れるから、そうなってきています。
けれど、野菜を自分で作るようになってくると、これがだんだんと「不自然」だということがわかってきます。
もちろん、百姓も歴とした商売ですから、それをいちいち否定するつもりはありません。
生活者に売れる野菜を作るというのが、農家の仕事といえば仕事。
売れない野菜を作って、売れる野菜の文句を言っても始まりません。
ただ、そういう綺麗な野菜の隣に、思い切りブルームだらけで、形もバラバラな、F1種ではない、固定種のキュウリを並べてみたい衝動には駆られますね。
まあ、せめてその際には、堂々と「自然な野菜はこれです!」と掲げたいところ。
しかし、実際のところは、そんなことを考えつつも、今シーズンも、「接木」のキュウリを定植させてもらいました。
というわけで、残りの苗については次回。