ハリー・ポッターと秘密の部屋
さて、ハリー・ポッター・シリーズの第二作目。
「賢者の石」の翌年公開ですが、主役の三人は、ちょうど背も伸び盛り。
ダニエル・ラドクリフも、たった一年のインターバルでしたが、この間で「子供」から「少年」に成長している感じでした。
人間界に帰れば、魔法を使うことは禁じられているホグワーズの生徒たち。
意地悪な叔父一家の仕打ちに耐えながら、再びホグワーズに戻る日を心待ちにしているポッターの前に現れたのは、「屋敷しもべ」のドビー。
今ハリーが学校に戻れば、大変なことが起こるからと、ハリーのホグワーズ行きを邪魔しにきます。
ドビーの悪戯を勘違いされた叔父たちに、部屋に閉じ込められてしまったハリーですが、「空飛ぶ車」で救出にやってきたロン兄弟と共に、避難したのは、ウィズリー家。
新学期の教科書を購入しに、ウィーズリー家の暖炉から、ダイアゴン横丁へワープするハリーたち。
そこで、ハーマイオニーやハグリッドと再会し、ホグワーズの新顔教師ロックハートにも会います。
この人気者でハンサムな魔法使いを演じるのは、ケネス・ブラナー。
イギリスでは、シェイクスピア俳優としては有名で、監督やプロデューサーもこなす才人です。(「テネット」にも、出ていますね)
また、ハリー・ポッターたちの敵役マルフォイと一緒に現れたのは、ホグワーズ魔法魔術学校の理事を務める父親ルシフル。不穏な空気を漂わせます。
そして、このシーンで要チェックなのは、ロンの妹ジニーの教科書の中に、ルシフルが、そっと本を一冊紛れ込ませたこと。
これは後半への重要な伏線になります。
さて、前作同様、キングス・クロス駅の9 3/4ホームからホグワーズ行きの列車に乗ろうとしますが、魔法使いならすり抜けられるはずのホームの柱に、なぜかハリーとロンだけはクラッシュ。
わけがわからず、またまた「空飛ぶ車」で、汽車を追いかける二人。
実は、これも二人をホグワーズに向かわせたくないドビーの仕業でした。
一体、ハリーに何が待ち受けているのか。
学校の「暴れ柳」に激突して、ボコボコにされながらも、なんとか学校にたどり着いた二人。
こうして、ハリーたちのホグワーズ魔法魔術学校の2年目が始まります。
さて、ここで、この後の展開に重要なポイントになる予備知識。
魔法使いたちには、3つの異なったタイプがあります。
一つは、純粋な魔法使いだけの家系による「純血」タイプ、二つ目は、魔法使いとマグル(人間)の血が混ざった「半純血」タイプ、そして、三つ目は、魔法を使う能力を持った「マグル」。
ルシフルは、純血家系の魔法使いこそ、最も優れていて、魔法界を支配するのにふさわしいという純血至上主義思想の持ち主。
マグルの血統を「穢れた血」として蔑んでいます。
ホグワーズ魔法魔術学校の創立者の一人であるスリザリンが、この純血主義の提唱者。
従って、スリザリン寮は、この伝統を受け継いでいます。
反対に、血による分断を嫌い、魔法使い家系もマグル家系も、すべて平等だとするのが、ダンブルドア校長です。
原作者のローリングに、果たしてその意識があったかどうかはわかりませんが、やはり「純血主義」と聞いて想起されるイメージは、ヒットラー率いるナチスが推進した人種差別政策ですね。
アーリア人(ゲルマン民族)こそ、世界の支配にふさわしい民族。
その人種的純度は、高く保たれなければならないとして、実際に彼は、純血政策を実行しています。
そして、排除されなければならない人種として、ユダヤ人のホロコーストを行ったことは誰もが知るところ。
子供向けのファンタジーの中に、あえて「差別」という問題を持ち込んだ、ハリー・ポッター・シリーズ。
これを子供向けファンタジーの中で、どう料理していくのかは、お手並み拝見。
今後の展開において、純血主義と平等派の対立は、物語の展開の大きな軸になっていきそうな気配です。
さて、ホグワーツでは、管理人の飼い猫や、マグルの生徒たちが何者かに、次々と石にされてしまうという大事件が発生。
ホグワーツには、こんな伝説がありました。
「純血主義者スリザリンの継承者が、秘密の部屋を開けた時、奥に潜む蛇の怪物バジリスクがその姿を現す。そして、怪物の目を見たものは石になる。」
ならば、そのスリザリンの継承者は誰だ?
それはマルフォイに違いないと踏んだ、ハリーとロンとハーマイオニーの三人。
ハーマイオニーが調合した変身薬で、マルフォイの仲間に変身して探りを入れたハリーとロンでしたが、マルフォイでないことが判明。
そして今度は、ロックハートの提案した「決闘クラブ」の授業で、蛇語が話せる(「賢者の石」の冒頭で水族館の蛇と話すシーンがありました)ことが学校中に知れ渡ってしまったハリー・ポッター。
彼こそが、スリザリンの継承者ではないかと城内で噂されてしまいます。
そんなある日、女子トイレで、ハリーは怪しげな古い日記を発見。
この日記は、T.M.リドルという学生が書いたもので、彼こそが、50年前に、スリザリンの継承者として秘密の部屋を開け、女子学生一名をバジリスクに殺させた人物でした。
この日記と筆談交信することで、事件の概要を知ったハリーでしたが、その日記は何者かに盗まれてしまいます。
そしてこの後、城内に次々と起こる大騒動。
なんと、マグルの出身であるハーマイオニーが、石にされてしまいます。
ダンブルドア校長は、ルシールらの陰謀により停職させられてしまう事態に。
そして、50年前の事件に関わっていたことが発覚したハグリッドが、アズガバン刑務所に連行されてしまいます。
ハグリッドの残した言葉から、「禁じられた森」で、彼が育てていた大蜘蛛アラゴグの住む洞窟へ分け入る二人。
そこで、アラゴグから、50年前の事件の犠牲となった女子生徒が、女子トイレに出る幽霊「嘆きのマートル」であることを聞き出した二人は、それを確かめに行こうとしますが、副校長のミネルバ・マクゴナガル(演じるのは、マギー・スミス)に見つかり失敗。
しかし、石にされたハーマイオニーの握っていたメモから、ついに秘密の部屋の入り口を発見します。
ロックハートと共に、二人はバジリスクと対決すべく、部屋の中に入っていきますが、ロンの妹ジニーが拉致されたことを知ります。
部屋の中にいたのは、「50年前」のT.M.リドル。
実はジニーは、ダイアゴン横丁で、ルシールに仕込まれた日記により、リドルの思うように操られていました。
そして、ドビーは、実はマルフォイ家の「屋敷しもべ」であり、ハリーに秘密の部屋を開けさせようというルシールのこの計画を知って、ハリーをホグワーツに来させないように画策していたことがわかります。
ロックハートが、実はとんでもない、食わせ者とわかり、ハリーはロンと分かれて、単身T.M.リドルとの魔法対決へと向かいます。
さあ、T.M.リドルの正体とは・・・
人気シリーズとしては、去年「スター・ウォーズ」を全作鑑賞したばかりですが、キャストには、白人以外の様々な人種の俳優をキャスティングしており、明らかに意識して世界興行にも配慮していましたが、本シリーズにおいては、主要キャストは、主役の三人を含めほとんどは白人。
しかし、これは、本作がイギリスの映画であることを考えると、それほど違和感はありません。
イギリスは、アメリカと違い、国民の9割が白人という国です。
それ以外の人種の占める割合は、アメリカと比べれば超マイナー。
ホグワーツの生徒の中に、白人以外の生徒が多ければ多いほど、かえって不自然かもしれません。
しかし、主役の三人の出自は、映画的には、ハリー・ポッターは「半純血」、ロンは、「純潔」、そしてハーマイオニーは「マグル」と、きちんと明確に分けられています。
この、出自が違う三人が協力して、ホグワーツの難事件の解決に、スクラムを組んで立ち向かっていく姿にこそ、原作者J.K.ローリングが訴えたかったこのシリーズのテーマがあるのかもしれません。
さて、3作目は、「ハリー・ポッターとアズガバンの囚人」です!