ご存じ「ターミネーター」シリーズの第6作目。
シリーズ4作目までは見ており、5作目に「新起動ジェネシス」もあったのですが、ジェームズ・キャメロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトンが再び集結という宣伝文句を見てしまって、思わずコチラを先に鑑賞してしまいました。
シリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロンは、ストーリー原案という名目でクレジット。
本作においては、俳優のビリングは、シュワちゃんではなく、リンダ・ハミルトンがトップになっていましたね。
監督はティム・ミラー。
本作は、『ターミネーター2』(T2)の直接の続編として位置づけられ、3作目以降(『ターミネーター3』『サルベーション』『ジェニシス』)の出来事を完全に無かったことにしています。
これにより、複雑になり過ぎたシリーズの時間軸をリセットし、T2のラストから25年後の物語として新たな展開を描いています。
過去作では「ジョン・コナーが人類抵抗軍のリーダーとなる未来を守る」ことが主軸でしたが、ニューフェイトでは冒頭でジョン・コナーが殺害され、以降は彼の存在が物語から外されてしまいます。
ちなみにこのシーン、殺されるジョン・コナーは、T2出演当時のエドワード・ファーロングだったのでちょっとビックリ。
製作当時63歳だったはずのリンダ・ハミルトンも、異常に若かったので、この展開を想定して、監督のジェームズ・キャメロンが、T2撮影当時にこのシーンを秘かに撮影していたのだと思ってしまいました。
しかし、これは監督の弁によれば、CG技術を駆使したボディダブル撮影とのこと。
オリジナル俳優(エドワード・ファーロング)の若い頃の映像や写真をもとに、顔の3Dモデルや表情パターンをデジタルで作成。
吹き替え俳優の顔や体の動き、表情をモーションキャプチャーやトラッキング技術で記録し、これをCGで合成したのだそうです。
もちろん、リンダ・ハミルトンもこの技術で当然若返るわけです。
この技術があれば、俳優たちは、映画の中では、永遠に年を取らずに美しいままということも可能なんですね。
昔の顔を貸した俳優にギャラは生じるのかなんてことも、気になってしまいした。
今回の「リブート」により、シリーズの複雑化したタイムラインは整理され、物語は新たに動き出します。
物語は『ターミネーター2』の25年後、2020年が舞台です。
未来の機械軍(AI「リージョン」)は、メキシコ在住の若い女性ダニー・ラモス(ナタリア・レイエス)を抹殺するため、最新型ターミネーター「Rev-9」(ガブリエル・ルナ)を現代に送り込みます。
これに対抗して人類抵抗軍は、機械ではない強化兵士グレース(マッケンジー・デイヴィス)を送り込み、ダニーを守ろうとします。
さらに、サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)とT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)も再び登場し、ダニーを守るために協力します。
旧作からのファンたちは、待ってましたの展開。
シュワちゃんはこの時すでに72歳。リンダ・ハミルトンも還暦越えですから、これはあっぱれ。
ジェームズ・キャメロンは、今回自らの手でリブートをすると決める際には、二人の出演にはこだわったようです。
しかも、リンダ・ハミルトンは、キャメロンの元嫁です。シュワちゃんと共に、三顧の礼で迎えたのかもしれません。
T3以降はやや迷走した感のあるターミネーター・シリーズを、原点に戻そうという狙いはあったようです。
本作の新キャラは3人。
身長178cmのマッケンジー・デイビスが演じたのがグレイスです。
彼女は未来から送り込まれた「強化人間」。つまり、彼女は従来のターミネーターではなく、人体の一部を機械化することで超人的な能力を得た戦士です。
ダニ・ラモスを守るために未来からやってきており、短時間であればターミネーターに匹敵するパワーを発揮しますが、体力を消耗すると薬品を投与しないと動けなくなるという「人間的な」弱点も併せ持っています。
ダニ・ラモスは、メキシコ系の女優ナタリー・レヴェスが演じました。
彼女は身長148cmで、マッケンジーとの身長差は30cm。
今作の重要なキーパーソンとなる人物です。
メキシコシティで家族と暮らしていた普通の女性ですが、未来からの新型ターミネーター「REV-9」に命を狙われることになります。物語を通じて、彼女は徐々に未来のリーターとして覚醒。彼女の存在が人類の未来にとって極めて重要になることが次第にわかってきます。
そしてその、殺人マシーン「REV-9」を演じたのが、ガブリエル・ルナ。女性みたいな名前ですが、れっきとした男性です。どこかオバマ元大統領に似た風貌の彼も、やはりメキシコ系のアメリカ人です。
新キャラのうち二人を、メキシコ系俳優に指名したあたりは、ハリウッドのポリコレ・ルールを意識したのでしょう。
ジェームズ・キャメロンは、本作において、過去作で分散した物語を整理し、シリーズの本来の魅力を再提示することを目指しました。
かつての成功作を自らの手で再び形にしたいという強い思いがあったとことは確実。
しかし、製作費1億8,500万ドルに対し、全世界興行収入は2億6,111万ドル。投資回収の目安である「製作費の3倍」には届かず、約1億2,000万ドルの損失が出たとされています。
キャメロンは後に「全てが誤算だった」と強い反省を語っています。
往年のファンに向けた作りに偏り、若い世代や新規ファンを意識した演出が足りなかったことが失敗の要因だったというのが彼の敗戦の弁。
アーノルド・シュワルツェネッガーやリンダ・ハミルトンの復帰に強くこだわったことで、結果的に「昔ながらのターミネーター」になってしまい、時代とのズレが生じたことは潔く認めています。
「私たちは正当な続編を作ることができたが、新しい観客のための要素が何一つなかった。」
監督のティム・ミラーも「自分が観たい映画を作ればうまくいくはず、という凝り固まったオタク的思考で挑んだが間違いだった」と認めており、シリーズとして“やり尽くされた”感が否めなかったことも影響しています。
確かにこういったブロックバスター映画では、興業収入がすべてで、これが芳しくないとすべてが否定されてしまいがちですが、やはりお金をかけるだけかけているだけあって、サラ・コナーズが登場するまでの前半30分と、千両役者シュワちゃんが合流してからの畳みかけるようなクライマックスは圧巻。
僕ら世代が血湧き肉踊らせた、ターミネーター最初の2作の世界を、現代のSFX技術で思い切りスケールアップさせた攻防シーンには、思わず手に汗握ってしまいました。
最初の2作品は、追いかけられる恐怖にをとことん突き詰めた内容でしたが、キャメロンはその原点プラス、5人の主人公たちの間の時空を超えた人間ドラマも綿密に描く原案を提供。
シュワちゃんとリンダ・ハミルトンの高齢化以外は、なかなかよく作りこまれた作品であると個人的には評価する次第。
しかし、やっつけてもやっつけても不気味に再生してくるターミネーター REV-9の恐怖は圧倒的でした。
やはりこのシリーズの魅力の原点は、なんだかんだといっても、これなんだなあと改めて再確認した次第。
製作費をかけると、やはり作る側はいろいろと欲が出てしまい、エモーショナルなドラマ性も付加して盛り上げたくなるのはわかります。
しかし、シリーズの最高傑作は、いまだに1984年の一作目だと信じて疑わない身としては、余計な感動ドラマは排除してでも、その製作費を全部つぎ込んで、ホラー映画として製作したら、どんなに怖い作品が出来るのかとは、ちょっと想像はしてしまいます。
もっとも、いまから10年後に、シュワちゃんとリンダ・ハミルトンを三度招集してこのシリーズの続編を作ることになるとしたら、その作品は黙っていてもホラー映画になるかも・・
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