1954年12月24日のクリスマスイブに、5人のジャズメンが集まった。
このセッションの、実質的リーダーは、売り出し中の、血気盛んなトランペッター。
このセッションで、極めて「個性的」なプレイを展開する、彼の大先輩にあたるピアニストに向かい、彼はこう注文する。
「俺のソロのバックで、そのピアノは弾かないでくれ」
これに腹を立てた、ピアニストは、男のソロのパートが終わっても、ピアノのソロの演奏を拒否。なかなか演奏しようとしない。
リズムセクションのメンバーは焦りだす。
スタジオには、一発触発の緊張がみなぎる。
彼は、演奏中のトランペットで、ピアニストに、演奏を促す。
「なにやってんだ。あんたのパートだ。早く弾いてくれ。」
しかし、この緊迫した空気が、結果的に、ジャズ史上「最高」といわれる名演奏を生み出す。
このセッションが収録されたアルバムが、「バグス・グルーブ - Bug's Groove」。
トランペッターの名は、マイルス・デイビス。
ピアニストはセロニアス・モンク。
これが、世に言う「喧嘩セッション」ですね。
ジャズの歴史の中で、今も伝説として語られている名演奏です。
誰かが、こんなことをいっておりましたな。
「ジャズに名曲はなし。名演奏があるだけ」
というわけで、今宵は、マイルス・デイビスのこの名盤を聞いております。
よもやの乗務員の怪我で、ゆっくり休もうと思ったゴールデンウィークですが、会社として仕事に穴を開けるわけにもいかず、働き者の課長は、本日もハンドルを握ってまいりました。
事務所仕事で、なまった体には、いいリハビリでしたね。
程よい体のほてりをいやすBGMとして、1950年代のジャズが、いい感じで毛穴から染み込んでくる感じできています。
さて、マイルス・デイビスのナンバーからは、「あなたに聞かせたい1000曲」リストに、3曲がエントリー。
もっとも、彼の1940年代からはじまる長いキャリアの全演奏を聴いたわけではありませんから、とりあえず現状での3曲ということです。
まだ、あるな、彼の名演奏は。
さて、マイルスの1曲目エントリーは、ただいまご紹介しました「喧嘩セッション」の録音の中から、「私の彼氏」。(この曲は、実は、アルバム「バグス・グルーブ」には収録されていないのですが)
マイルスの歴史の中では、ハード・バップ初期にあたる頃の名演奏ですね。
2曲目は、ルイ・マルの監督したフランス映画「死刑台のエレベーター」のサウンドトラックから、そのテーマ。
これは、出来上がってきたフィルムのラッシュを見ながら、マイルスのトリオが、その場で、画面にあわせて即興演奏したものを収録したもの。
これぞ、まさしく「サウンドトラック」ということですね。
そして、もう一曲。
僕にとって、マイルス・デイビスの極めつけの一曲といったらこの曲。
1956年のアルバム「ワーキン - Workin'」に収録されていた「 イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」
僕の知る限り、インストゥルメンタルとしては、最も「美しい」バラードです。
必聴。