2012年にTBSで制作されたドラマ。
主演は向井理。
山岳医療を扱ったドラマで、医療の原点を問う内容。
登山愛好者は、特に中高年の間で静かなブームのようです。
山を訪れる人も増加している中、山での遭難者は年間3043人。
死者や行方不明者が335人。負傷者数は110人増の1151人と過去最多(警視庁調べ)を記録をしているそうです。
このような非日常である山の事故や病気の緊急対応をしているのが山岳医療。
都市部とかけ離れた医療現場で働く医師やスタッフたちに求められるのはボランティア精神。
ある程度の危険を承知で山に登ってくる以上、登山者たちにおいて、山での事故や病気は自己責任だろうという側面も確かにあります。
しかし、だからといって、山には登るなという話にはならない。
当然ながら、医療機器もまともにそろえることのできない山の診療所に置いての治療は、症状の軽い思いにかかわらず、人対人ということになります。
ゆえにそこには、医療の原点がある。
ドラマの中で、時任三郎演じる医師が主人公に向かっていうセリフ。
「患者たちは、医療器具にあいに来るんじゃない。医者に会いに来るんだ。」
主演の向井理もそれなりに頑張っていましたが、ドラマのポイントになる場面では、ほとんどこの時任三郎の熱演が見せ場をさらっていったかんじ。
こなんなセリフもありました。
「山の命も、都会の命も、同じ一つの命だ。」
山の診療所は、大学病院の出先機関の設定。
日本全国に及ぶ深刻な医師不足、看護師不足を踏まえた医療効率から考えれば、経営を預かる院長を演じる松重豊の診療所閉鎖の理屈はごもっとも。
なので、ここでは一方的に悪者にされてしまう松重はかわいそうな気もします。
高齢化社会を迎え、日本の病院はてんてこまい。
都会の病院の、患者たちの中には、自分たちは病気を診てもらって当然とばかりに、横柄な態度をする輩も多い。
病院とて商売ですから、そんな患者にも腰を低くして対応せざるを得ないわけです。
しかし山では、そこに診療所がなくても当然の場所に診療所を立て、ボランティアの医師がいる。
そして、治療を受ける側も、通常なら治療を受けられるわけもない場所で、幸いにも治療をしてもらえる。
双方の立場から考えれば、そこには「商売」としての医療は存在しません。
したがってそこにあるのは、献身と感謝。そして、双方の山への愛情。
自然に向き合う気持ち、医療に向き合う気持ち。
それらに対して、いかに質の高い「ありがとう」を盛り込めるかがこのドラマの肝になってくるわけです。
3ヶ月間の夏の山で、あれだけの患者がはたして来るかなんていう野暮なことをいうのはよしましょう。
医学生の中に能年玲奈がいました。
あまりセリフも多くなくて、あれと思いましたが、NHKのドラマ「あまちゃん」で彼女が大ブレイクしたのは、このドラマオンエアの翌年。
同じく医学生役の菅田将暉も、このドラマの後で一気に若手のエースになってきました。
個人的には、今年は仕事で振り回されて、大好きな山歩きも全くできなかった一年。
来年は、せいぜいお医者さんに迷惑をかけないように気を付けながら、出かけようと思います。